その名は●悪太郎とジョージ [the name]
このところまた知り合い(一方的だけど)の訃報があいついでいます。
なかでも驚いたのは山内賢さん。
60代は早すぎる。
日活の青春映画はずいぶん観ました。
浜田光夫と吉永小百合がゴールデンペアならば、山内賢と和泉雅子はシルヴァーペア、なんて誰もいってなかったけど。
とにかく映画のなかで山内賢は、つねに「いい人」なんですよね。ときには3枚目になったりして。
「あゝ青春の胸の血は」、「学園広場」とか「高原のお嬢さん」、「友を送る歌」など舟木一夫のヒット曲映画によく出演していました。
いちばん印象に残っているのは今東光原作の「悪太郎」。
監督は鈴木清順でした。そんな関係かどこか「けんかえれじい」と同じにおいが。
ヒロインはもちろん和泉雅子。
ここでは「いい人」と真反対の役。
こういう役をもっとやればと思っていましたが、なぜか「いい人」ばかり。
日活のアクション路線とは一線をひいて、最後まで青春路線を貫きました。
そんななかで生まれたヒット曲がベンチャーズの「二人の銀座」。
音楽的センスのある賢ちゃんが下手くそ(でもいいんです可愛いから)の和泉雅子をよくフォローしていましたっけ。
いまでもOB、OGにはデュエットソングの定番のひとつではないでしょうか。
昭和も40年代になって日活のポルノ化、さらには消滅とともにTVのバイプレイヤーとして活躍していたようですが、ほとんど観ていません。
しかし「悪太郎」と「二人の銀座」、このふたつだけでもわたしにとっては記憶に残る役者であり歌手でした。
もうひとかた。
杉浦直樹さん。
そうか、80歳近かったのか。
あたりまえだよな、二十歳の頃映画で観てから40年あまり経っているんだから。
テレビドラマで異彩を放った俳優とのことですが、これまたあまり観ていません。
映画も印象に残っているのは1本。
その1本が強烈で、いまでも脳内スクリーンに映し出すことができます。
それが網走番外地の望郷篇。
健さんの仇役で殺し屋の人斬りジョージ。それが杉浦さんの役。
やさ男でおよそ殺し屋らしくない。
おまけに胸を病んでいるらしく、いつも小咳をしている。
そんな半病人がひとたび長ドスを抜くとめっぽう強い。
ラスト近くの健さんとの一対一の斬り合いは印象的でした。
よく時代劇の決斗シーンにあるように、ふたりの刀が一閃して右左にわかれる。
ここで時代劇なら仇役がバタッと倒れて幕。
「望郷篇」でも深手を負ったのはジョージ。しかし健さんも無傷じゃない。
倒れる前のジョージが健さんにひと言。
「……その傷……七針も縫っとけゃ、治るさ……」。
いや七針じゃなく五針だったかもしれない、まぁ死ぬ間際にそんなキザなセリフを言うのです。観ていたわたしは小さく笑ったりして。それが監督の狙いでもありました。多分。
この映画には当時“惚れて”いた桜町弘子も出ていて、忘れられない映画となっています。
ところで杉浦さん、残念ながら歌のほうは?
と思っていたら、テレビドラマの主題歌を吹きこんでいました(YOU-TUEBでみつけました。「ホテルカルフォニア」だね)。
しかし、わたしはそれよりも前に彼の歌声? を聴いています。
それはかの「望郷篇」のなかで、何度か
♪からす なぜ泣くの
と「七つの子」を口ずさむのです。殺し屋に童謡というのがまたいい。
ただ、正確にいうと口ずさむのではなくて口笛でしたが。
これもまた杉浦ジョージを脳ミソに刻み込む一因となりました。
音楽のほうは「望郷篇」の挿入歌を。
それにしても訃報があると出てくるというのもどこかイヤラシイ。
ただむかし観ていた歌手や俳優が亡くなると、語ってあげたい、いや語りたいと思うのは人情であって、許していただきたい。
それでもどこか罪悪感のようなものはあるわけで。まぁ、考えようによっちゃそれは大変な罪で、これを世間では訃報大罪なんていってます。
ウソです。不謹慎なことを言ってしまいました。
重ねがさねスミマセン。
姿勢を正しておふたりのご冥福をお祈りいたします。←説得力ないか。
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