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夏歌②サマー・ホリデイ [noisy life]

summer holiday.jpg

We’re all going on a summer holiday
No more working for a week or two
Fun and laughter on a summer holiday
No more worries for me or you
For a week or two

We’re going where the sun shines brightly
We’re going where the sea is blue
We’re seen it in the movies
Now let’s see if it is true
…………
([SUMMER HOLIDAY] written by WELCHE and BENNETTE, vocal by CLIFF RICHARD, 1963)

昭和38年の春、中学生になったわたしは本格的に洋楽を聴きだした。
家族や友達に洋楽好きがいたわけではなく、何のキッカケかは覚えていませんが、とにかく貯めてあった小遣いをかき集めて小型のトランジスタラジオを買い、朝といい夜といい洋楽のヒットパレードを聴きまくっていたのです。

おそらく、それまで好きだった日本のシンガーによる欧米のカヴァーポップスの影響でしょうね。「中学になったんだから、ここはひとつ本場もんを」と思ったかどうかは覚えていませんが。

ラジオの電池はいまあまり見かけない角型のヤツで、値段も中学生のわたしにはいい値段でした。時々、ラジオを消し忘れて、気がついたら電池がなくなっていたなんて泣きたくなるようなこともしばしば。

そして洋楽事始めの昭和38年、成りたてチューボウの心を震わせた(大げさ)数々のナンバー。ざっとあげてみますと、

エディ・ホッジスの「恋の売り込み」、ジョニー・シンバルの「ミスター・ベースマン」、ジャンニ・モランディの「サンライト・ツイスト」、カスケーズの「悲しき雨音」、ヴェルヴェッツの「愛しのラナ」、エルヴィスの「悲しき悪魔」、アン・マーグレットの「バイ・バイ・バーディー」などなど。

「ミスター・ベースマン」、「サンライト・ツイスト」、「愛しのラナ」はシングル・レコードを買いました。全部買いたかったけど、とても小遣いでは……。

そんななかで「スゲェ!」とインパクト大だったのが、クリフ・リチャードCliff Richard。
とにかく多くのシンガーが“一発屋”だったのに対して、クリフはベストテンの常連。

聴き始めた春にいきなり「ヤング・ワン」The Young Ones がベストワンだったことも印象的だったのですが、いかにもポップスといった軽くノリの良い曲調が日本人に合ったようで、日本での初のヒット、それも大ヒットとなりました。

そして夏、わたしに「クリフこそ夏男」と思わせるビッグヒット「サマー・ホリデイ」Summer Holiday がラジオから流れていました。その翌々年の夏には「オン・ザ・ビーチ」On The Beachが若者を夏の海へ誘うように聞えていました。

ご存じの方も多いと思いますが、クリフ・リチャードはUKのシンガー。
バックバンドがシャドウズ(当初のバンド名はドリフターズ)だったことでも知られています。
デビューは1958(昭和33)年で、イギリスでももちろんトップシンガーでしたが、日本でも上記の38年以後、数々のヒット曲を連発し、その存在感を示しました。

その後、クリフがなんとなく“忘れられた”存在になってしまったのは、どういうわけかアメリカでブレイクしなかったからでしょうか。
アメリカ人にとって「エルヴィス」は2人いらなかったのかも。またビートルズ、ローリング・ストーンズなどバンド主流の時代というタイミングにも恵まれなかったのかも。

とにかく、昭和38年の「洋楽ニューカマー」にとって、クリフ・リチャードはアイドルのひとりでした。
でも、いま考えるとなぜかノンビリとしていた洋楽シーンでした。

それでは、クリフのヒット曲のいくつかを。
日本でヒットしたものしなかったものを含め、当時わたしが好きだった曲を中心に。

「レッツ・メイク・メモリー」Let’s Make a Memory
日本ではベスト5に入るほどの大ヒット曲ですが、本家イギリスではシングル発売されてないとか。よくあるケース。

「ラッキー・リップス」Lucky Lips
これも大ヒットしました。個人的には「ヤング・ワン」と甲乙つけがたいほどのベストナンバー。元はR&Bで、そのせいかアメリカでもそこそこヒットしたとか。

「ダイナマイト」Dynamite
日本では昭和40年夏のヒット。しかしイギリスでは1959(昭和34)年発売。ナンバーワンにはならず、中ヒットといった感じ。

「コングラチュレーションズ」Congratulations
「サマー・ホリデイ」、「ヤング・ワン」と同じくイギリスでナンバーワンヒット。
日本では昭和43年といいますから、後期のヒット。

「踊ろよベイビー」Do You Wanna Dance?
ビーチ・ボーイズやママス&パパスで知られた曲で、クリフヴァージョンが日本でヒットしたという記憶はありませんが、イギリスではチャートを2位まで上げたとか。

「コンスタントリー」Constantly
日本ではそこそこ、イギリスでもそこそこヒットしたバラードの名曲。元はカンツォーネ。

「エヴァー・グリーン・トゥリー」Evergreen Tree
当時はまったく記憶にない曲。のちにベスト盤の中にあった一曲で、めずらしいモダンフォーク調。1960(昭和35)年発売というから、アメリカのモダン・フォーク・ムーヴメントに敏感に反応したことが想像できる。本国でもヒットした形跡はありませんが、めずらしいのでリストアップしときました。

「しあわせの朝」Early in The Morning。
昭和44(1969)年、日本での最後のナンバーワンヒットとなった名曲。
めずらしいマイナーチューンが日本人に大ウケ。
予想どおり、これも本国ではアルバム収録曲でシングルカットされていない。オリジナルは「夜明けのヒッチハイク」のヒットがあるヴァニティ・フェアVanity fare 。

以上、まだまだいい曲はありますが、そろそろ「あくびノオト」が聞えてきそうなので。

ところで、当時、いちばんノンビリかつゆっくりラジオを聴けたのが日曜の朝。
寝床の中で枕元に置いてあるラジオを引き寄せ、耳に近づけて今週のベストテンを聴くのです。前週とどうちがっているか、気に入りのあの曲は何位になっているのか、ほんと、ワクワクものでした。まさに「しあわせの朝」。

顧みれば、あの昭和38年が60年余りの人生の中でいちばんノンビリと居心地がよかったんじゃないかなんて思います。もちろんマイ・ミュージック・ライフも。

ところが、それから1年後には大変なことが起こるのです。
東京オリンピック開催の年で、世の中がザワザワと動き始め、落ち着かなくなっていきます。

そしてミュージック・シーンではどえらい嵐が3つもやってきて、寝床でノンビリなんか聴いていられない慌ただしい「時代」に入っていきます。

その3つの嵐とは、春先に大ヒットしたキングストン・トリオThe Kingston Trioの「花はどこへ行った」Where Have All The Flowers Gone に代表されるモダン・フォーク・ムーヴメント。

2つ目は、2月にやって来たのがポップスのニュータイプ。挨拶代わりの「プリーズ・プリーズ・ミー」Please Please Meと「抱きしめたい」I Wanna Hold Your Hand をランクインさせたビートルズ旋風。

そして3つ目が、ビートルズに遅れること数か月、「急がば回れ」Walk Don’t Run、 「ダイヤモンド・ヘッド」Diamond Head、「10番街の殺人」Slaughter On Tenth Avenue、「キャラバン」Caravanと立て続けにヒットをとばし、日本列島を空前のエレキブームに陥れたべンチャーズThe Ventures 。

いまでこそ“あとだし”でビートルズの影響がその後の日本のポップスシーンに……なんて言ってるけど、当時の印象では、影響の大きさはビートルズよりベンチャーズでした。その深さはともかく。

とにかく昭和39年という年は新幹線開通の年でもあり、日本が超近代化、国際化を宣言した画期的な年でしたが、音楽シーンでもジャンルあるいは形式が多様化していくエポックメーキングな年ではありました。

それはそれで必然であり、いいのですが、そんな大変革が起こる前、つまり「嵐の前の静かな海」がどれほど心地よかったことか。
しかし、昭和39年になっても、わたしの「ラジオ・デイズ」は続いていきました。そしてクリフも嵐3本立てのなかで、しばらくは健闘していったのです。


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レモン

暑中お見舞い申し上げます。
このところの暑さはスゴイですね。

クリフリチャードってロックンロール世代からは大人しすぎて敬遠されていたような所がありますね。
でも名前は今でも知らない人はいない位知名度がありますよね。
確かに活躍した時が悪かったのかも知れませんね。
あまりにも時代が急激に変化して先に行ってしまったのだと思います。

お体に気をつけて、ではまた。








by レモン (2011-08-12 14:27) 

MOMO

レモンさん、こんにちは。

こちらこそ暑中お見舞い申し上げます。

暑いですね。あとひと月ぐらいは続くのでしょうか。
今年は、とくにからだにきますね。
歩いていて足がもつれそうになったり。

歳のせい? そうかもしれませんね。なら仕方ないか。

しかし、なんとなくイヤな暑さです。
たぶん放射能のせいでしょう。

レモンさんは相変わらずバンド活動で頑張っていますね。
いただいた言葉をそのままなぞらせてもらいます。

お体に気をつけて、夏をのりきってください。
by MOMO (2011-08-16 23:27) 

マチャ

初めまして。
クリフ・リチャード、母の影響もあって大好きです。
今日はデビュー記念日なので、記事にしました。
「クリフ・リチャード」でタグ検索したところ、貴ブログが
ヒットしましたので、拝読致しました。
当時の様子がよく分かりました。やはり日本でも
人気だったんですね。
by マチャ (2011-08-29 09:00) 

MOMO

マチャさん、こちらこそはじめまして。

「母の影響」とおっしゃっているぐらいですから、失礼ですがお歳は30歳前後でしょうか。

なるほどですね。

流行歌の生き残り方の一面を確認させていただきました(大げさですね)。

家族の場合、だいたいは「母の影響」か「祖母の影響」なんでしょうね。
「父の影響」はあまりないのかな。

つまらないことを言ってしまいました。

なかなか更新できませんが、今後ともよろしくお願いします。


by MOMO (2011-09-10 03:16) 

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