春の歌●春の陽 [noisy life]
♪遠い夢 すてきれずに 故郷をすてた
穏やかな 春の陽射しが ゆれる 小さな駅舎
別離より 悲しみより 憧憬はつよく
淋しさと 背中あわせの ひとりきりの 旅立ち
動き始めた 汽車の窓辺を
流れてゆく 景色だけを じっと見ていた
サクラ吹雪の サライの空は
哀しいほど 青く澄んで 胸がふるえた
(「サライ」詞:谷村新司、曲:弾厚作、歌:加山雄三・谷村新司、平成4年)
春が行きすぎないうちにと焦って書いてます。
今年の春の歌の第2回は1回の「春の日」に続いて音的には同じですが「春の陽」。
春のやわらかい陽ざしですね。
春の光でもいい。「春光」なんていう俳句の季語もありますし。
冬の間に縮こまったからだと心のシワをのばしてくれるポカポカ光線。
冒頭に詞をのせた「サライ」の中では、旅立ちを祝福するようにやさしい春の陽がふりそそいでいます。
おだやかな光に桜吹雪、まさしく日本の春ではありませんか。
谷村新司の詞と加山雄三の曲がマッチした名作ですね。24時間テレビ“出身”だそうですが、みたことはありません。
旅立ちというからには、なにかを卒業して新しい世界へ歩を進めるということ。出発も大きなイベントですが、卒業もまたひとつのイベント。
そんな卒業の日にも「春の陽」はふりそそぎます。
♪緑の木々のすき間から 春の陽射しこぼれた 「卒業」菊池桃子
最近では茉奈佳奈がカヴァーしてるようです。
昔、職場に菊池桃子のフリークがいまして、年下でしたが(あたり前やろ)、あまりのヒートアップぶりにウンザリして、「ああゆう顔ってのはな、若いときは可愛いいけど、年とったらフツーのオバさんになっちゃうんだぜ」って水をさしてやりました。女神をけなされた当人むっとしていました。
最近テレビのコマーシャルかなにかで菊池桃子さん見ましたが、キレイでしたね。
……なんだかこの件(くだり)に似たこと、最近書いたような……。
デジャブでしょうか、いいえ誰でも。
卒業ではもう1曲、こんな歌も。
♪見返れば校舎も 春の陽ざしをあびているわ 「グラジュエーション」倉田まり子
以前も書きましたが、当時、倉田まり子と石川ひとみの区別がつきませんでした。いまYOU-TUBEをみると、はっきり区別がつくのに。当時はさほど関心がなかったってことなんでしょう。
気の毒だとは思いますが、倉田まり子というとどうしても「投資ジャーナル」事件を思い出してしまいます。当時身近にもその件でのヤバ男がひとりおりましたから。
そのほかこの頃(昭和50年代)では、「い・け・な・いルージュマジック」(忌野清志郎、坂本龍一)や演歌の「夫婦坂」(都はるみ)に「春の陽」が出てきます。
もう少し古いところの40年代では、
♪やさしい春の 陽ざしの中で 私はあなたの 胸で夢見てる 「若草の髪かざり」(チェリッシュ)
ハッピー・ウェディング・ソングですね。
チェリッシュでは「恋の風車」でも、
♪表通りを行く二人に 春のひかり
とうたわれています。
ついでにいうと「白いギター」では
♪花を摘む 草原に 秋の陽ざしが まぶしくて
と出てきます。
とにかく、季節に関係なく「陽ざし」の好きなチェリッシュでした。
40年代ということでは、こんなのもありました。
♪空には明るい 春の光が 「薔薇の鎖」西城秀樹
前回もいいましたが、今年はそんな春の光がなんとなく鈍く感じたり。
電車の窓から見える春の光を浴びたスカイツリーもなぜか墓標に見えたり(重症だ)。
でも、「春は陽気に」っていうほど人間は単純じゃないわけで。春だからこそ憂鬱になってしまう人だっているでしょう、今年にかぎらず。
憂鬱な春、もの想う春、そんな歌をうたい続けていたのが森田童子。
♪春のこもれ陽の中で きみのやさしさに うもれていたぼくは 弱虫だったんだヨネ
「ぼくたちの失敗」
振りかえってみても苦い、それでいて懐かしい友と過ごした春の一日。
こんなに昏い春をキレイなメロディーにのせてうたう森田童子。あらためてその特異な存在に感心してしまいます。
「陽ざし」は出てきませんが、「ぼくたちの失敗」以外にも森田童子の「昏い春」を感じさせる歌がいくつかあります。
♪春は まぼろし 二人は 暗い夢の中 「蒼き夜は」
♪春よ 春に 春は 春の 春は遠く 「春爛漫」
♪春になったら 就職するかなァ 「孤立無援の唄」
こういう歌を聴いているとよけい滅入ってきて、ますます何もする気が起きなくなる。
かたづけなくてはならない私事ははかどらないし、仕事のエンジンのかかりもすこぶる悪くて。
ならば、とことん怠惰を極めて、没落していった平家の御大将みたいになってやろうかなんて。怠惰の清盛みたいな……。
つまんないことを言っている場合ではありませんでした。
ついにレベル7に達した原発事故。
人間がこさえたモンスターの暴走をまるで止められない。怪物は延々とその“毒”を吐き続けている。そいつを大人しくさせるまでには数年を要するっていってます。
いつだったか、テレビで「放射能が大気中や海中に漏れても薄まるから大丈夫」みたいなことをいってた関係者の顔が思い浮かびます。怒るどころかそのポジティヴさに笑えてきちゃう。
昔観た映画「魚が出てきた日」などを思い出したりして、また余計に憂鬱になったり。
正直、テレビで“連呼”している「大丈夫」「がんばれ」「信じてる」というフレーズが空々しく、疎ましくさえ感じたり。いったい誰が発信してるのでしょうか。
というか戦争のシッポが残っている世代としては、「欲しがりません勝つまでは」とか「撃ちてし止まん」みたいな“挙国一致”の“スローガン”が思い浮かんで、なにか“厭な感じ”になります。
福島は東京からそんなに遠くない。200キロも離れてないんじゃないかな。
現地ではもはやゴーストタウンが出現していますが、そのうち東京もそうならないとはかぎらない。
運よく死の街になるのをまぬがれても、10年後、20年後のある年、急激に東京都民の平均寿命が下がるなんてことが……。
悲観論者は春の一日、そんなことを妄想してしまうのです。
そういえば、加藤和彦がうたった「不思議な日」に
♪花達は咲き 野原を染めた ふしぎな 春の日
というフレーズがあります。
たしかこの歌は作詞の松山猛が映画「渚にて」に触発されてつくったとか。
「渚にて」は第三次世界大戦、つまり核戦争で人類の半分が死滅してしまった直後の世界を描いた作品でした。テーマソングの「ワルチング・マチルダ」Waltzing Matildaもヒットしました。
まさにいまは、2012年の「ふしぎな 春の日」。
EPOの「うふふふ」もひかりっぽいです。
by にしにし (2011-04-24 08:18)
にしにしさん、いつもありがとうございます。
「うふふふ」音源がありましたのでさっそく聴いてみました。
ていいますか、いまはCDを探さなくても、YOU-TUBEで見れたり、聴けたりできるんでしたね。
さびに聴き覚えがありました。CMに使われていたのでしょうか。
たしかに春らしい、楽しい歌でした。
by MOMO (2011-04-28 18:37)