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冬歌①寒い夜 [noisy life]

男と女・昭和編.jpg

♪(♀)邪魔をしないと誓うから 横へ行ってもいいかしら
 (♂)縁というやつへんなやつ 興味持ったが身の不幸
 (♀)そうねそうかもしれないわ なぜかあなたが気にかかる
 (♂)ひとり飲むのもお酒なら ふたり飲むのもまたお酒
 (♀)これが固めというじゃなし 寒い夜更けがいやなだけ
    ララララ ララララ
(「男と女・昭和編」詞:阿久悠、曲:みなみらんぼう、歌:みなみらんぼう&井手せつ子、昭和53年)

いよいよ寒波がやってくるとか。
冬だものそうこなくちゃ。

今晩も寒いねえ。ってことで今日は「寒い夜」の歌を。

「寒い朝」っていうのは石坂洋次郎の青春小説で、吉永小百合主演で映画にもなりました。
歌も小百合ちゃんと、和田弘&マヒナスターズでヒットしましたね。昭和37年のことです。

で、「寒い夜」っていうのは? これがあるんです。はじめて知りました。
まずそのものズバリ、松山千春「寒い夜」が。
ほかでは郷ひろみ「寒い夜明け」trfには「寒い夜だから」なんていうのも。

寒い夜を過ごすには。
暖房つければいいじゃん、ってそれじゃ味気ってものがない。

やっぱり温まるにはナベだのモツだのをつつきながらアルコールを体内に流し込むのがいちばん。いまはちょうどそんなシーズンだしね。

先日も行ってまいりました忘年会。
最近は少し事情がありまして二次会は欠席、日にちがまたがないうちに帰宅するようにこころがけているのですが、それがいささかもの足りない。

でもまぁ、いいものですね酒の席は。とりわけ気の置けない、縦関係のない席がいちばん、楽しく酔えるし、後味もいいときている。

皆と別れて電車に揺られ、駅から家まで10数分の道のり。
奥歯ガチガチに鳥肌立てて夜道を歩いていても、からだの芯がポカポカ加減で思わず笑みがこぼれて、それを再確認するために小さく声をだして笑ったりして。

冷たい夜風をガードしてくれるこの暖かさの正体は。
そりゃたしかに鍋やアルコールのせいも少しはあるかもしれないけれど、やっぱりさっきまで顔つき合わせていた飲み仲間のせいでしょう。

抑えきれない顔のほころびは、さっきの冗句やバカ話を反芻しているわけで、その“陽性イオン”が夜の冷気を跳ね返しているってこと。

楽しい時間を過ごすには、いきつけの店で、顔見知りと飲むのがいい。
でも、たまには知らない店へ行って、はじめての面々と交流するっていうのも新鮮かも。
別に相手は異性でなくてもいい。異性ならもっといいけど。

ひとりカウンターで飲んでいると、見知らぬ女が隣に座ってもいいか、と声をかけてくる。
チラッと見上げると、決して若くはないけど、分別つきすぎってほどでもない。いまでいうコラサー、いやアラサー近辺。

「なんでオレなんかに……」
なんて、野郎は心にもない謙遜でさぐりを入れる。
「そうね、……寒い夜がいやなのよ」
〈なんでぇ、オレはストーブかよ。でもまぁ、そんなとこかもな。いいよ、気がすむだけあたっていきなよ。オレだってひとりよりかは、その方が暖ったかいんだから〉

そんな歌がみなみらんぼう井手せつ子のデュエットソング「男と女・昭和編」

この歌で注目すべきは作詞が阿久悠だということ。
見知らぬ同士が酒場という空間で出会い、束の間を過ごす。おそらく“看板”になればそれぞれ別の方向へ帰っていき、多分もう二度と逢うことはない。という感想を抱かせる阿久悠独特のクール(ほかの言い方だと気取ったともいいますが)な世界。

これは昭和53年の歌ですが、その4年後、阿久悠はふたたび酒場を舞台に男と女の刹那的な時間を描いた歌をつくります。

それが「居酒屋」
やはりデュエットソングで五木ひろし木の実ナナの歌唱。
今度は「男と女・昭和編」とは反対に男がひとりで飲んでいる女に声をかけるというのがおもしろい。

ふつう、声をかけるのは男でしょう。だから「男と女・昭和編」は稀なケース、というか男の妄想・願望で生まれたワンシーン。

それをいうなら、「居酒屋」だって。
だいたい、女がひとりで飲んでいるシーンなんてめったにお目にかかれない。

たまにそういうケースがあったとしても、声をかけようかどうか迷っていると、
「お待たせ」
なんてしっかり野郎があらわれたりして。

ま、あくまで流行歌の世界ですから、リアリティを追求するとややこしくなっちゃう。

ただ同じ阿久悠が創造した男ではありますが、「居酒屋」の男はいささか三枚目。
「名前きくほど野暮じゃない」
ってカッコつけたはいいけれど、雨が降ってきて、女は
「やむまでここで飲んでるわ」
というと、男は、
「しょうがない、じゃオレも朝まで付き合うか」
と二枚目を気取ってみせる。

ところが女は、
「別に(エリカ様風)気にすることないから、さっさと帰ってよ」
とアッサリ。

男にとっちゃ結構ダメージあるよね、こういう躱され方。でも「さっさと」ならまだいいよね、「とっとと」なんていわれた日にゃ再起不能もんだもん。

そんな男はどうするか。
「やっぱり独りで飲むのが無難だなぁ……」
なんて。

そして
♪お酒はぬるめの 燗がいい
 肴はあぶった イカでいい
 女は無口な ひとがいい
 …………

って独り酒の心境に。

これが阿久悠の「酒場三部作」(勝手に言ってる)の三作目「舟唄」(八代亜紀)につながってくる。

実際には「舟唄」は「男と女・昭和編」の翌年につくられた歌、つまり「居酒屋」より前につくられているのですが、順不同? ってことで。

しかし、さすが阿久悠ですね。「酒場三部作」で三人三様の男を描いております。
あなたはどの男にあてはまるのでしょうか。
わたしは……、んなこと聞きたくもないよね、どうでもいいよね。

そう「寒い夜」でした。
歌詞のなかに「寒い夜」が出てくる歌もいくつかあります。

「酒場」がらみでいえば南こうせつとかぐや姫「赤ちょうちん」
♪覚えてますか 寒い夜 赤ちょうちんに 誘われて
とあります。

そのほか「安奈」(甲斐バンド)、「白いブランコ」(ビリー・バンバン)、「夜と朝のあいだに」(ピーター)、「都会の天使たち」(堀内孝雄&ケイ・ウンスク)、「みちづれ」(渡哲也、牧村三枝子)などにも。
そして阿久悠にももう1曲。「ざんげの値打ちもない」(北原ミレイ)の冒頭に、
♪あれは二月の寒い夜
と出てきます。

さてさて寒い夜です、どなたさまも風邪などひきませんように。


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