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その名は●ボニー③ [the name]

ボニー・ピンク.jpg

♪新しい朝
 白い息と黒く濡れた瞳さまよう
 「もう行かなくちゃ」と
 精一杯前向きな笑顔で送り出そう

 側にいるだけじゃ見えないもの
 離れていてもわかり合えること
 同じ月 同じ空の下で待っているわ
 Thinking of You
  …………
([Thinking of You] written and vocal by BONNIE PINK, 2001)

日本にもボニーはいる。

ストレートに考えて思い浮かぶのはBONNIE PINK ボニー・ピンクでしょうか。

J-POPはほとんど門外漢で、彼女もデビュー後しばらくした頃、テレビで見て、その赤いヘアと印象的な名前を覚えていたくらい。
楽曲は、なぜか唯一上に詞をのせた「Thinking of You」がMDに入っていました。多分、FMかなにかをエアチェックしたものでしょう。

どうってことはないラブソング。恋人といっとき離れるのもわるくないっていう、やっぱりどうってことないとしかいいようのない歌詞。
でも、流行歌ってだいたいがそういうものですから。

改めて聴いてみるとメロディーは音階の乱高下とか、ファルセットの多用が印象的で、これは当時(いまも?)よく耳にしたJ-POPの“1(いち)パターン”ですね。

ほかの曲は知らないのですが、BONNIE PINK がどんな評価をされていたのか気になって『音楽誌が書かない「Jポップ」批評』という本のページをめくってみると、
「Bonnie Pinkの曲が伝えるのは…………女性という条件を超えた、ヒューマンで普遍的なテーマだ」
ということだそうです。

そしてCHARAUAを例に出して、
「数多くのフィメール・シンガーのなかで、特異な輝きを放っていた……」
とも。

なるほどね、1曲ぐらい聴いただけではわからないものです。
まぁ、よくわかりませんが、演歌歌手にはいないタイプってことは理解できました。

で、いちばん知りたいのはなんでBONNIE PINK なのかということ。
これがよくわかりません。

ウィキペディアを見ると、ピンクは「保守的じゃない色」だからとか「破裂音」がいいからとか書かれています。
それにはじめピンク色は好きじゃなかったとも。なら、ボニー・パンクでもボニー・ピンチでもボニー・ペンチでもよさそう(よくないか)ですけど。

そもそも「ボニー」については、ただ「単語の響き」からだって。
どうやらボニー・レイットタイラーのファンだっていうことはないようです。

ということは、ピンクが革新的な色ということも含めて、古い言葉でいえばフィーリング、今風にいえばノリでつけたのでしょう。よくあることです。

日本の「ボニー」はピンクだけか、というともうひとりというか、ひと組、大物がいました。
そう、ボニー・ジャックスBONNY JACKSです。

早稲田大学のグリークラブ(当時は男性合唱団)出身で、慶応大学グリークラブ出身のダーク・ダックスとよく比較されます。
どちらもロシア民謡、世界の民謡、日本の童謡をレパートリーにしていることもよく似ています。

オリジナルではありませんが、まるで持ち歌のようによく知られているのは童謡の「ちいさい秋みつけた」いずみたく「手のひらを太陽に」

でもわたしが覚えているのはテレビドラマの主題歌で、やはりいずみたくが作った「青春をぶっつけろ!」

青春スポ根もののはしりとなった「青春とは何だ」(1966年)の前の年に放映されたのですから、隠れた“青春ドラマ第一号”といってもいいかも。

大学生3人の青春記で、まだ無名の黒沢年男が主役を演じていました。

この「青春をぶっつけろ!」や、「青春とは何だ」の挿入歌でヒットした「貴様と俺」などは、あきらかに軍歌のシッポがついていますね。とくに後者はタイトルからして。

「勝って帰らにゃ男じゃない」の世界ですから。戦後も20年経っているんですけど。

そうです、ボニーでした。
で、ボニー・ジャックスですが、なぜボニーなのか。
ボニーが男であっても不思議ではないことは「その名は●ボニー①」でふれましたので、それはいいとして、その命名の由来は。

なんでも、早大グリークラブの先輩で作曲家の磯部俶という人が命名者だとか。
はじめは「ボン・ジャックス」だったそうで、ジャックは欧米の男のサンプル的な名前で、ボンBonはフランス語で「ボン・ジュール」や「セ・シ・ボン」の「ボン」で「よい」とか「ステキ」という意味。つまり「いい男たち」。

その後、熟考して「ボン」を「ボニー」に変えたそうです。
「ボニー」にも「GOOD」の意味がありますから、意味は同じ。
「ボン・ジャックス」も捨てがたいとおもうのですが。

そして3人目のジャパニーズ「ボニー」はやはり女性です。

昭和38年(1963)、和製(最近こういう言い方しませんね)コニー・フランシスのキャッチフレーズ(これまたなしですか)を前面にコロムビアから「渚のデイト」でデビューしたボニー井田

こちらの命名理由ははっきりしているようで、映画「渚のデイト」で主演した本家・コニーの役名が「ボニー」だったから、ということから。

彼女の経歴についてはつまびらかではありませんが、これまた唯一もっている音源「悲しきゴスペル」If My Pillow Could Talk (これもオリジナルはコニーで、カヴァーは弘田三枝子と競作)を聴くと、本家の軽快な高音とは似ても似つかぬ低音ヴォイス。
ポップスといよりジャズ向きの声。これじゃ、ミーコに負けるはず(余計なこと)。

それでも翌年のミュージック・ライフ誌の人気投票では女声ヴォーカルで32位にランクされています。ちなみに31位が沢村美司子で28位が田代みどり。ナンバーワンは弘田三枝子で、男声ヴォーカルでは坂本九

残念ながらそれ以外のことは不明。
顔写真も見たことがありませんし、本名だって。はたして井田△子さんかどうかだってわからない。もしかしたら苗字の「井田」もステージネームかも。

ボニー井田、ぼにーいだ、ぼにーだ、ボニータって「ボニータ」のモジリだったりして。

その「ボニータ」ですが、スペイン語圏やポルトガル語圏でつかわれる女性の名前で、その愛称が「ボニー」。
ボサノヴァにはアントニオ・カルロス・ジョビン「ボニータ」BONITAが。

またボニータは、女性の名前だけでなく「ボニー」や「ボン」同様、「美しい」や「素晴らしい」「可愛い」という意味があります。

その代表的な歌に、マドンナMadonna の“恋よ恋、あゝ南方のローマンス”といった感じの歌、「美しい島」La Isla Bonita があります。日本でも中森明菜長山洋子がカヴァーしていますね。

ついでなのでもひとつ、30年以上前に、ピート・シーガーPete Seeger が教えてくれた「ボニータ」の歌、「ケ・ボニータ・バンデーラ」Que Bonita Bandera を。
この歌は、プエルトリコの“第二の国家”ともいわれる歌で、「なんて素敵な旗なんだ」と自国の国旗を、しいては国家を讃えている歌だとか。

最後に唐突ですが、またもや訃報。
池部良さん。90歳を超えていたんですね。
残念というより、ごくろうさまって言いたいですね。

記憶に残る映画は「昭和残侠伝」(唐獅子牡丹)の“風間さん”と、小津映画の「早春」
封切りからずっと後になって観たのですが、「早春」のハイキングのシーンは、当時の男女交際あるいは娯楽とはかくものだったのか、という印象でほほえましかった。

残念ながら池部さんがレコードを出したという知識はもっていないので(昔の役者は概ね出しているのでもしかしたら……)、これはという音楽は思い浮かびませんが、しいて言うならやっぱり「青い山脈」でがいちばんふさわしいのかもしれません。

しかし次から次へと。
考えてみれば、昭和30年から55年が経っているのですから仕方のないことかも。まごまごしてるとこちとらも。


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かずすけ

ボニー井田を調べていただいてありがとうございます。
この人は私の母で、今も横浜で元気に暮らしてます。
本名は井田淳子でほかのページのプロフィールには乗ってます。
私は歌手になった経緯など一切聞いてないので
非常に参考になりました。
最近は画像検索で私も見たことの無い、とジャケットなども出てきて
インターネットはすごいです。
ちなみにレコードは車に入れてたらすべてだめにしたそうで
1枚も残ってません。

by かずすけ (2014-09-21 01:19) 

MOMO

かずすけさん、返事が遅れましてすみませんでした。

ボニー井田さんご健在ということでなによりです。
いまでも歌をうたっているのでしょうか。

息子さん? ということですが、お母様のうたごえは聞いたことがありますか?

貴重なレコードはもったいないことをしましたね。

どんなかたちであれ、ブログを読んでいただき、ありがとうございました。
by MOMO (2014-09-28 00:02) 

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