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WHITE/白い花② [color sensation]

白い花02.jpg 


♪私の目の前の 白い花
 人目にもつかずに 咲いているけど
 幸せそうに ほほえんで
 香りを 漂わせる
 できることなら この指で
 お前を 摘んでしまいたい
 あの人の心に 誇らしく
 咲いてる お前を
(「白い花」詞、曲、歌:山崎ハコ、昭和51年)

「白い花」っていうのは「赤い花」もそうですが、だいたいが、男の目線から見た女性のことですね。文字どおり無垢で清純なイメージ。
となるとほとんどは十代の少女、それも乙女ということに。
もちろん、20代でも30代でも「白い花」のイメージを抱かせる女性はいます。それはたびたびいうように、“見る”男の感性によるのですが。

でも、「赤い花」にもあったように、女性が同性に対して「白い花」のイメージを感じ取るというケースもあります。そこには多かれ少なかれ同性愛的な感情が含まれているのではないでしょうか。
そして、そういう見方というのは多分に「可愛い」「触れたい」という好意的な感情に裏打ちされている場合がほとんどでしょう。

ところが、そんな単純にはいかないところが人間のというか、女性の心情。

そんな複雑な“思い”をうたにしたのが山崎ハコ「白い花」

この歌には女心というよりは、人間だれにもありえる邪悪な心「嫉妬」が描かれています。

自分がどうしようもなく好きになってしまった男には相思相愛の彼女がいる。もしかしたら、好きになったのは自分の方が先だったかもしれない。
いくら考えても彼女の清楚な美しさには太刀打ちできない。もし彼女が彼を好きにならなかったら、友だちになりたいくらい可愛いい。それはまるで「白い花」。
もし可能ならば、彼女を彼の中から消してしまいたい。自分の手を汚しても……。

ひとりの男をめぐる恋のバトル。こういう図式はドラマや小説ではめずらしくないですね。というより常套手段でしょうか。

つまり嫉妬に燃える女は「仇役」。決して主役ではありません。
か弱き「白い花」に対してあの手この手の無差別攻撃。最後に善は勝つ、愛は勝つ、悪は滅びる。最悪抹殺されてサヨウナラ。THIS IS 「土曜ワイド劇場」。

ところが歌の場合は何が何でもヒロイン、主役。
だからそんな悪党まがいのことはできません。
ほとんどは、「悔しいけど負けたわ。幸せになってね」なんて心にもないことを言いながら身を引くというのがマジョリティ。

山崎ハコの「白い花」でも、
「あの人と一緒に生きていけ」「あの人をなぐさめながら」と敗北宣言。もちろん彼女に対してそう言うのではなく、自分に言い聞かせているのです。
「あんたなんか殺してやりたいくらいが憎らしくて、ほんとうは、あたしがあの人の心の中に咲きたかったのよ!」
と叫んでいるのです。

でも実際は何も言わず、彼女に対しても平静を装っている。そんな自分に対して「白い花」は邪気のない笑顔を返してくる。引き裂かれそうな自分の気持ちなど知らないで。

なんとかヒロインとしての立場を遵守しているものの、これほど「嫉妬心」や「怨念」を露骨にあらわした歌は少ない。
それもいかにも悪女そうなシンガー(誰だ?)ではなく一見か弱そうな山崎ハコ(年を経てだいぶ逞しくなりましたが)がうたうから、余計にそのギャップを感じる。

花嫁に「くたばっちまえ!」とつぶやくシュガー「ウエディング・ベル」では、女の本音をコミカルに糖衣して“耳あたり”をよくしていますが、「白い花」はいつまでも残りそうな怨念が感じられてコワイ。だけに面白いのですが。

「白い花」の歌はいくつもありますが、こういう捉え方、表現の仕方はハコの十八番。

ついでにフォークの「白い花」をいくつか。
♪白い花をそえて下さい 別れの言葉に 「白い花」松山千春
白い花はアネモネだそうです。アネモネは年下の恋人を失った美の女神アフロディーテが流した涙からできた花だとか。清純無垢という花言葉があるとも。
でも、別れ際に彼からもらいたいというのはどんな心理? まぁいいか。

♪白い花つんで あの人にあげよ 「赤い花白い花」赤い鳥
赤い鳥の代表的な歌で、Jフォーク(造語)のスタンダード。山本潤子もソロでうたっています。ワンコーラスめは「赤い花」。髪に飾ってあげようというのだから男歌? ツーコーラスめは胸に飾るのだから男女兼用? まぁワカチコワカチコってことで。

♪白い花はふるさとの 恋人の花 「花のかおりに」フォーク・クルセダーズ
これは前回の「故郷&初恋」ヴァージョン。作詞作曲は例によって北山修、加藤和彦コンビで、似た曲想の「白い色は恋人の色」(ベッツイ&クリス)も同じ。
名曲だと思いますが、あまりカヴァーされません。

♪白い花髪にさして 娘はお嫁にいく 「白い花」本田路津子
これも古いJフォーク。NHKテレビドラマのテーマソング。白い花はくちなしだそうです。「くちなし」と路津子さんについてはあらためて、ということで。

それにしても山崎ハコの「白い花」が耳に残ります。
とりわけ「お前を摘んでしまいたい」というフレーズ。
若い娘がおない歳くらいの同姓に「お前」っていうのだからどんだけ深い憎悪なんだってこと。

で、この歌は北原ミレイに提供された歌ですが、彼女がうたうとまたニュアンスが違ってきます。同じ歌でも、歌う人のキャラクターや表現力で伝わり方が異なるといういい例。
ミレイさんの場合、過去に男を刺した前科があるので(歌の世界の話ですよ、本気にしないでね)、それはそれでコワイですよね。

かたや見た目「強面」、こなた「清純」、でも中身は一緒。ということになればどっちがコワイ?


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