WHITE/白い花① [color sensation]
♪白い花が咲いてた ふるさとの 遠い夢の日
さよならと言ったら 黙ってうつむいてた お下げ髪
悲しかったあの時の あの白い花だよ
(「白い花の咲く頃」詞:寺尾智沙、曲:田村しげる、歌:岡本敦郎、昭和25年)
「赤い花」の歌も多いけれど、「白い花」もよくうたわれています。
「赤い花」がおおむね女性のことだとすると、「白い花」は男性?
そんなことないですね。どんな花でも花は花。花はやっぱり女。
では「赤い花」と「白い花」の違いは。
赤は経験者、白はバージン。そういっちゃ身も蓋もありません。せめて、赤はオンナ、白は乙女ぐらい言わなくっちゃ。大差なし。
まぁ、とにかく「赤い花」よりは幼いというのか淡いというのか、未成熟の女性、つまり娘という印象でしょうか、「白い花」は。ですから、初恋なんていうのはまさに「白い花」のイメージかも。
♪小さな肩だった 白い花夢かよ 「森の小径」灰田勝彦
彼女と肩を並べて歩く森の小径。互いに言葉はなく白い花だけが舞い散っていた。ときおり腕に触れる彼女の肩。「女の娘の肩ってなんてか弱いんだろう」と初めて思った。主人公は旧制中学の学生。歳でいえば15、6。来年は進学のため上京することになっている。彼女が泣いていたのはそんな理由があったから。
そんな初恋の思い出をうたった歌。
純情ですね、ポエムですね。昭和15年の歌なのですからさもありなんです。
短い歌詞ですが、佐伯孝夫の最高傑作ではないでしょうか。ハイカツの透明感のある声もいいし、兄・有紀彦がつくった旋律がまたいい。こんな抒情的な詞にハワイアンがこれほど合うとは。
もうひとついえば、初恋と重なるかもしれませんが「白い花」には「故郷」の風景がよく似合います。
「森の小径」だって肩寄せて歩いたのは故郷の道。
抒情歌謡といいますか、純情歌謡の極めつけが岡本敦郎のうたった「白い花の咲く頃」。
この歌もまさに「白い花」に託して「初恋」と「故郷」がうたわれています。
終戦から5年、NHKの「ラジオ歌謡」から生まれた歌。戦争という歴史的大事変を挟んで世の中大きく変わりつつ、人の気持ちも変わりつつ。そんな時代。
それでもこの歌には10年前の「森の小径」とほとんど変わらない“純情”がまだ生息しておりました。
花も雲も月も、みんな白かったという初恋の思い出。
作詞作曲は、寺尾智沙、田村しげるの夫婦。
田村しげるは戦前からの作曲家。当時キングレコードの専属で、東海林太郎の「山は夕焼け」などを手がけています。なんでもふたりはデビュー前からの友人で、東海林太郎をキングに紹介したのが田村しげるだったとか。
「白い花の咲く頃」の翌年やはり夫妻で「リラの花の咲く頃」をつくっています。うたったのも岡本敦郎と「白花トリオ」でそこそこヒットしたそうです。
♪リラの花が胸に泣く今宵 はるばる別れきて
とノスタルジックな詞はもう少し大人の雰囲気。アレンジもタンゴ調で叙情的な「白い花」とはだいぶ異なるようで。
またリラの花はピンク、紫いろいろですが白もあるそうです。
ほかでは平野こうじの「白い花のブルース」
♪想い出の花 白い花 一輪空に投げあげる ……別れた人の恋しさよ
初恋かどうかはわかりませんが、「白い花」は忘れられない人のこと。昭和36年の歌。作詞は佐伯孝夫なので、「森の小径」の“戦後編”かも。
こちらもスチールギターがはいりますが、作曲は吉田正で青春歌謡とムード歌謡が混在したような(どんなんだか)曲調。
五木ひろしの「ふるさと」にも、
♪白い花咲くふるさとが 日暮れりゃ恋しくなるばかり
と「白い花」が。白い花とは都会に出て行った自分を、お嫁に行かず待っているという娘のことだそうです。
ついでにいうと、五木ひろしでは「夜空」にも、
♪誰も答えはしないよ 白い花が散るばかり
とあります。「夜空」は別れた娘のことを時間が経つにつれて恋しくなるという“未練節”。ハラハラと散る白い花が、行く先の不幸を暗示しているよう。
「ふるさと」「夜空」とも作詞は山口洋子。
しかし、初恋の花「白い花」とはどんな花なのか気になるところです。
ひとそれぞれ思うところは異なるんでしょうね。相手の印象によっても変わってきますしね。
わたしだったら、そうねぇ、そばかすに黒目がちな瞳が印象的だった道子ちゃんは「霞草」かな。いや、クラスのマドンナでウェーブの髪が大人びて「からたち」のように華麗だった郁子ちゃんがいたな。そうそう、大人しいけどいつもニコニコしていて、卒業してからとても逢いたくなった「静江ちゃん」は「しろつめ草」のように可憐だったしなぁ。って何回初恋したんだって話ですよね。
コメント 0