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島②小島 [a landscape]

 小島.jpg

♪砂山の砂を 指で掘ってたら
 真っ赤に錆びた ジャックナイフが出てきたよ
 どこのどいつが 埋ずめたか
 胸にじんとくる 小島の秋だ
(「錆びたナイフ」詞:萩原四朗、曲:上原賢六、歌:石原裕次郎、昭和32年)

今日は「小島」の話。
といっても「よしお」のことではない。ましてや「正雄」でもない。……知らないか。

戦後になっても「島」は、その本土との“隔たり”ゆえに様々なストーリーを含んだ流行歌に仕立て上げられていった。

戦後間もなくヒットした「島」の出てくる歌といえば昭和21年の「かえり船」(田端義夫)がある。
♪霞む故国よ 小島の沖じゃ 夢もわびしく よみがえる

これは時代が産んだ歌のひとつ。
「かえり船」は当時頻繁に行われ様々なドラマを生んでいたかつての戦場であった外地からの「引揚げ船」をうたったもの。
トピカルなストーリーと哀調を帯びた倉若晴生の曲で、敗戦のダメージさめやらぬ庶民の心に響いたのである。

この「かえり船」では「小島」とうたっている。
もちろんこの歌の場合、島は帰るべきところでもなく、船出した南方の島でもない。たんなる故国の港へ向かう途中にあった“風景”でしかない。ただそれでも、その緑におおわれたその島の姿は南洋の島とは異なり胸に迫る“和風”のたたずまいだったはず。

それはともかく問題は「小島」。
「小島」は地形的にもそれほど大きくない、小さな島という意味もあるが、ちょっとした名の知れない島という意味で「小」という接頭詞をつけることがある。「小粋」とか「小料理」あるいは「小耳」「小腹」などと似たような意味で。

また歌の歌詞としては二音の「島」よりも三音の「小島」のほうがゴロがよく、響きもいいので旋律にのりやすいということがある。
そんなわけで流行歌の中で「小島」はしばしば使われることになる。

同じ田端義夫で昭和28年の「ふるさとの燈台」でも、
♪はるかなる小島よ 灯台のわが家よ
とうたわれている。

その小島をタイトルに冠したのが昭和30年に発売された「小島通いの郵便船」(青木光一)
♪いとしあの娘も みかんの木かげ 待っているだろ ……小島通いの郵便船


いまでもほとんどの有人の離島では郵便物や新聞・雑誌などは船で運んでいるのだろう。現在はわからないが、以前ならば郵便物も本土よりも配達時間がかかったもの。
伊豆大島をうたった都はるみ「あんこ椿は恋の花」でも
♪三日おくれの便りをのせて 船は行く行く波浮港
とうたわれているように、ラブレターが届くにも気をもんだものだった。
いまじゃ電話やメールでシンクロしちゃいますが。

「小島通いの郵便船」にはそんな不便だがのんびりしていた時代の日常がうたわれている。

昭和30年代前後の人気歌手といえば三橋美智也。彼の歌にも「小島」は出てくる。
♪小島の鴎も 椿の花も 見て見ぬふりした その涙 「かすりの女と背広の男」(昭和34年)
島を出て行く男と残る女の別れと再会がうたわれているが、その歌詞がユニーク(素人の投稿作品かもしれない)。

その少し前の昭和32年には2つの大ヒット曲で「小島」がうたわれている。
はじめが上に歌詞をのせた石原裕次郎「錆びたナイフ」
「錆びたナイフ」は前の年「太陽の季節」で鮮烈デビューした石原慎太郎の小説が原作で、翌年日活で映画化された。
もちろん主役は裕次郎だが、小林旭が脇役(重要な)で共演しているというめずらしい映画。裕次郎ブーム真っ只中での公開は大ヒット。監督は「紅の流れ星」舛田利雄

そしてもうひとつがやはり映画とともに大ヒットした主題歌「喜びも悲しみも幾歳月」
♪はなれ小島に 南の風が 吹けば春くる 花の香便り
木下恵介監督が灯台守の夫婦の半生を感動的に描いた。夫婦を佐田啓二高峰秀子が演じていた。
主題歌は監督の作詞に映画音楽も担当した木下忠司が作曲し、若山彰が朗々とうたいあげている。

この映画は30年後にやはり木下恵介監督でリメイクされた。観てはいないが傑作という評判は聞かない。時代の空気がちがったのかもしれないが、リメイクというのはむずかしい。

最後は「錆びたナイフ」で共演した小林旭の「アキラのダンチョネ節」
♪逢いはせなんだか 小島の鷗 可愛いあの娘の 泣き顔に
この歌は
♪三浦三崎で ドンと打つ波はね 可愛いお方のさ 度胸だめし ダンチョネ
とうたう神奈川県民謡の「ダンチョネ節」遠藤実が歌謡曲にアレンジしたもの。またこの民謡は変え歌として軍歌になり、八代亜紀の名曲「舟唄」でも“アンコ”につかわれている。

「ダンチョネ」とは漁師の掛け声とも、「断腸だね」(辛いね)の転訛だともいわれるがはっきりしない。でも、「断腸」は上の民謡の詞からもピンとこないな。

小島があれば大島もあるかな?。もちろんあります。次回は大島へ。


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toty

小島正雄さん、懐かしいですね。こんなサイトをみつけました。
http://www.ozsons.com/KojimaMasao/

それから「沖の小島へ行ってみたいな♪」ではじまる歌があるのですが、検索してもみつかりませんでした。
あまり有名ではないのかもしれませんが、
最後まで歌えます。
どこかに、楽譜があるのかもしれません。さがしてみます。
by toty (2009-02-27 02:58) 

MOMO

totyさん、こんにちは。

落涙もののサイトですね。ダンディでしたよね小島さん。子供だったわれわれからみてもあか抜けたオジサンでした。

どんな歌なんでしょうね、その沖の小島へ……という歌。気になりますね。流行歌ではないのでしょうか。唱歌ですか、どこで覚えたのでしょう。

わたしの場合は一部しか覚えていませんが、やはり誰に聞いてもわからないという歌があります。見方を変えれば「誰も知らない歌を知っている」ってエバルこともありませんね。
by MOMO (2009-02-28 20:45) 

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