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島①島の娘 [a landscape]

島の娘.jpg
♪ハァー 島で育てば
 娘十六 恋ごころ
 人目しのんで
 主と一夜の 仇情け
(「島の娘」詞:長田幹彦、曲:佐々木俊一、歌:小唄勝太郎、昭和8年)

日本が島国であることは現代人であれば常識だが、北海道、本州、四国、九州に住む人の多くは、自分が島人であるという実感がない。多分。
実際国内では「本州島」だとか「四国島」とはいわない。でも「島」なんだな。

「島」とは周囲を海または水域で囲まれ、満潮時に水没しない自然の陸地のこと。だって。
そういうことなら地球上のほとんどの陸地がすべて「島」になってしまう。それでもいいと思うのだが、なぜかユーラシア、アフリカ、オーストラリア、北アメリカ、南アメリカ、南極の6つは「大陸」ということに。
いずれにしても日本は間違いなく島であり、日本列島なわけです。

では日本に島はいくつあるのか。
すべて海洋の中にあるものを島とはいわない。たとえば湘南にある烏帽子岩は岩礁であり島ではない。二見ケ浦の夫婦岩だってそう。
海上保安庁によると周囲が100m以上あるものとされているそうだが、100mとはかなり小さい。日本でいちばん小さい島といわれている長崎県五島市の蕨(わらび)小島でも周囲は1.8キロ。

また最小の無人島は小笠原諸島のさらに南にある沖ノ鳥島だといわれている。
ちなみに沖ノ鳥島は潮の干満で大きさが異なるのか周囲は不明?ただ、満潮時はほとんど海面下に没し、2つの突端が出ているだけとか。その大きさは相撲の土俵より小さいそうだ。

そんなわけ? で島の数も数学的に明らかになっているわけではないらしい。有人島でおよそ3000あまり、無人島もほぼそのぐらいだとか。つまり6000~7000ほどの島からなる国が日本なのだ。

離島での生活は本土に比べてはるかに不便でハンデがある。
物資、水、情報すべてが不足していた時代にくらべると今はかなり便利になってきたというが、それでも多くは雨水に頼る水の確保はいまだに頭を悩ませる問題だとか。また、ひとたび台風などで海が荒れれば、文字どおり絶海の孤島と化してしまう。

本土に住む人間にとって地理的にも距離を隔てる「島」はある種非日常的というか特別なロケーションとなり、古くから小説や映画の舞台にもなってきた。
もちろん流行歌でも。

初めて「島」がうたわれた流行歌は? ということになると私の乏しい知識ではたちうちできないが、
♪磯の鵜の鳥ゃ 日暮れにゃ帰る 
という伊豆大島をうたった昭和3年の「波浮の港」(佐藤千夜子)はかなり古いのではないだろうか。

また昭和5年には
♪私のラバさん 酋長の娘 
という「酋長の娘」(中村慶子)がある。これは日本が侵略をはじめていた南方の島をうたったもので、歌詞に♪赤道直下 マーシャル群島 と出てくるのが時代をあらわしている。

まぁ、そんな歌もあったが大ヒットした島の歌といえば、上にのせた「島の娘」だろう。
なにしろ蓄音機の普及も十全ではない昭和8年に50万枚売れたというのだから驚異。

その歌詞も、16歳の少女の性体験。いまなら「淫行」だの「援交」だので発禁自粛ものだろう。
作詞の長田幹彦は、芸者ものを得意とした小説家で昭和5年には
♪月はおぼろに 東山
でおなじみ(じゃないか)の「祇園小唄」(葭町二三吉)を書いている。

その葭町(藤本)二三吉もそうだが、昭和初年流行歌の黎明期、そのシンガーたちの出自はというと、方やクラシック街道を逸脱した“不良声楽家”こなた小唄端唄が喉自慢の芸者連というのが常道。

芸者シンガー第一号ともいうべき二三吉姐さんはその名のとおり日本橋は葭町の出。
そして「島の娘」で超特大場外満塁ホームランを放った小唄勝太郎姐さんも同じ葭町の売れっ子。

ほかにも浅草芸者で「ちゃっきり節」「天竜下れば」をヒットさせた市丸をはじめ、
赤坂小梅「ほんとにそうなら」、新橋喜代三「明治一代女」、新橋みどり「もしも月給があがったら」、豆千代「夕日はおちて」、〆香「流れ三味線」、美ち奴「ああそれなのに」など粋筋のお姐さん方がゾロゾロ。

まあ、当時は歌手の新人発掘オーデションなどもなかったし、芸者も今と違ってブロマイドを出すほど人気だったので、さもありなんですが。
今でいえばキャバ嬢がCDデビューするようなもの? ちょっと違うか。

「島の娘」のヒットはそれ以外にも流行歌にパターンをつくったことでも知られている。
そのひとつが「お色気路線」。
勝太郎のうたう♪ハァー がなんとも色っぽく(そうかなぁ)、「ハァ小唄」といわれ、その「ハァ」しばしば使われるようになったとか。
♪ハァー 天龍下れば ヨサホイノサッサ 「天龍下れば」市丸
♪ハァー ステップも 軽く銀座は 花の道 「銀座ステップ」渡辺光子
♪ハァー 想い出します おけさの唄で 「佐渡小唄」東海林太郎
♪ハァー 咲いた咲いたよ アリャサ 弥生の空に 「さくら音頭」三島一声他

というように。いまの若い人がキレたときにつかう「ハアーッ!?」とは違うから。
ちなみに当時、流行歌は小唄あるいは流行小唄といわれていた。

もうひとつのパターン化は「島」の歌の流行。
「島ちどり」東海林太郎 
「島の船唄」 田端義夫 
「島の星月夜」 ミス・コロムビア 
「島の夕波」 日本橋きみ栄 
「島の船出」 岡晴夫
 

というように。売れたものは即真似ろ、柳の下の泥鰌の二匹三匹当たり前、というのは何も流行歌の世界に限ったことではないのだけど。

そして「島の娘」もそうだが、そのほとんどは不特定の島をうたったもの。
さらにこうした傾向は戦後も続き、「島」は流行歌のなかで重要なロケーションのひとつとして戦後も引き継がれていくことに。

そうそう「島の娘」といえばクレージー・ケンバンドにも同名の歌がある。
旅先の島で出会った娘を帰りの飛行機の中で回想するという男の気持をサンバに乗せて。
こちらは「ハァー」ではなく「ラララ」と陽気にはじまります。


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MOMO

takeyuki20さん、nice!をありがとうござます。
by MOMO (2009-02-26 20:22) 

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