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【ラバーソール】 [obsolete]

ラバソール.jpg

『ふと、背後の足音が耳についた。ひそかな軽い靴音だ。ラバーソールかゴム底の靴音だ。おれとおなじリズムの靴音だ。
 おれはぱっとそばの塀に背中をはりつけた。すると足音もピタッとやんだ。横目をつかってふりかえると、二軒おいた家の塀ぎわに駐車中の車があった。おそらく奴はその車の陰だね。』
(「空巣専門」原田康子、昭和39年)

「ラバーソール」Rubber sole ゴム底の靴のこと。もともとは運動、ハイキング用のカジュアルシューズ。「ラバーソール」およびその言葉は戦前からあったようで「浮雲」(林芙美子、昭和26年)にも戦前の場面で『洒落たラバーソールをつっかけて』という記述がある。一般的になったのは戦後で、昭和27年ごろ先の丸いラバーソールが流行った。

ある本には「品のよくない男たちが履いていた」と書かれている。小津安二郎監督の「麦秋」佐野周二がラバーソールは履いていて、それを品がわるいと批判されたとか。いつの時代でも、スターは監視されている。

また30年代になると、マンボ族、太陽族に愛用され、大きめの上着に細いズボン、そして厚底のラバーソールがロカビリアンの定番スタイルとなった。とにかく活動的オシャレで昭和30年代の若者には欠かせないファッションアイテムだった。おそらく昭和30年前後の風俗映画に出てくる若者の足元を見れば、様々なラバーソールを見ることができるはず。

その後もかたちは変わっても厚底のラバーソールはパンクやロックのミュージシャンに愛用され続けているとか。ミュージシャンだけではなく、そのコンサートに駆けつける少女たち(バンギャルとかバンギャとかいうそうです)の中にも超厚底のラバーソールを履いている者も。なにかにこのラバーソールのことを、“Lover soul” と書いてあった、なんとなく頷けるようでも……。
ちなみに、現在、トレッキングやウォーキングなどで使うシューズもラバーソールという。

「最初(はな)っからやばいとは思ったね」
ではじまる「空巣専門」は、空き巣に入った先で殺人事件と遭遇してしまい、犯人から生命を狙われる羽目になった男の独白小説。

自称バーテンダー、その実体は空き巣狙いの“俺”は、その日仕事をするつもりである家に忍び込んだ。ところが、いきなり拳銃を発射される。白いシーツをかぶったノッペラボーが銃口をかまえていた。4発撃たれたが、1発がラバーソールの踵にあたっただけで“俺”は命からがら逃げ延びた。

翌日新聞を見るとその家の主婦が拳銃の弾2発を打ち込まれた死体でみつかり。元射撃選手の夫が逮捕された記事が出ていた。“俺”は真犯人別にいると思った。なぜなら、あのノッペラボーは元射撃選手にしては腕が下手だったから。

“俺”の推測どおり、真犯人は口封じに出てきた。尾行されて住まいを突き止められたのか、銃口を向けられている気がした。そして、ついに犯人とおぼしきクルマに轢き逃げされた。運良く軽傷ですんだ“俺”は警察(サツ)に泣きついた。もちろん空き巣に入ったことは言わず。しかし、警察は現場に残されたラバーソールの踵の破片から“俺”が現場にいたことをすぐにつきとめた。そして、“俺”を囮にして犯人を捕まえる計画を立てた。
いやならお前を逮捕すると言われ、“俺”はしぶしぶ同意した。そのかわり刑期を軽減してやると刑事は言った。

“俺”はその家へ二度目の“空巣”に入ることになった。しかしドアを開けたとき、その前に若い女が立っていて、その手には拳銃が握られていた。その銃口が火を吹く寸前、別の銃声がして、彼女の拳銃をたたき落とした。
結局犯人は、逮捕された夫の従姉で、横恋慕が動機だった。“俺”はどうやら1年、あるいは半年ぐらいの刑期になりそうだった。そのぐらいだったらいい休養になるからいいかなと思った。

作者にはめずらしいソフトな犯罪推理小説。そのため警察や犯罪者の隠語がふんだんに出てくる。ゴト(仕事=犯行)、ハジキ、ガイシャ、サツ、ホトケ、ホシ、タタキ、マエ(前科)、サス(密告する)、ムショ、ジュク(新宿)、ブクロ(池袋)、アマなどなど。

この年流行った歌。「歌詞がヘン」と話題になった。

 


 


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