SSブログ

BLUE/青い鳥③ [color sensation]

カワセミ.jpg

♪僕は青い鳥
 今夜もだれか捕まえに来るよ 銀の籠を持ち
 僕は青い鳥
 だれかの窓辺に歌うよ 銀の籠の中で
 幸せを追いかけて 人は変わってゆく
 幸せを追いかけて 狩人に変わってく
 青い鳥 青い鳥 今夜も迷子
(「僕は青い鳥」詞、曲、歌:中島みゆき、昭和61年)

メーテルリンクの「青い鳥」では、幸福の鳥とは実はハトだった、というある種ガッカリ話のオチ(じゃないよね)がありましたが、フランスにはこんな「青い鳥」の伝説があるそうです。

聖書ではノアの箱船のノアが緑なる大地の存在を信じて船からハトを飛ばし、ハトがオリーブの枝(ピースの絵柄)をくわえて帰ってきたのでそれを確信したという話があります。実はこの話には続編があって、ノアはハトを飛ばしたあと、あまりに戻ってくるのが遅いので、続いて灰色のカワセミを飛ばします。
ところがその直後ハトが戻り、船は無事陸地に着いたので、動物たちと共に上陸したノアは船を壊してしまいます。
可哀想なのはカワセミで、大海の上で船を探しますが見つかりません。大空を彷徨うカワセミのお腹は太陽に焼かれて赤くなり、背中は青空に染まって青くなったとか。

あのトボケた長いくちばしを持ったカワセミが“幸せの鳥”とはまるで思えませんが。

ところで日本には600種類以上の鳥がいるといわれていますが、どうやら「青い鳥」は見あたりませんし、そうした伝説もないようです。それでも明治時代に輸入された“幸せの青い鳥伝説”は定着しているようで、最近の流行歌にもしばしば登場します。昔ながらの青い鳥=幸福というシンプルな歌ばかりでなく曲解、いや新解釈したものも含め現代日本の青い鳥を。

まずはオーソドックスな「青い鳥」の歌。
♪キラキラ降りそそぐ 木漏れ日の隙間に 僕等は青い鳥を見たよ 「青い鳥」藤井フミヤ
幸せを探すカップルのラブソング。青い鳥は消えても二人の愛は永遠にと。

♪いつの日にも明日は来るから 青い鳥はきっとそばにいる 「Bluebird」今井美樹
これもそう。ふとしたことで失くしてしまった“青い鳥”。こういう場合だいたい青い鳥とは愛だの恋だの。とくに女性の場合はね。でもいつか癒されて、また青い鳥を見つけることができる、って自分を励ましている。最近の若い人がよくつかう「頑張れ、自分」ってヤツですか。

♪青い鳥の不満は イカレた森に響く 「青い鳥はいつも不満気」AJICO
長いイントロ、現代のサイケというか前衛音楽風。詞は多分に言葉遊びの感が強いですが、歌の印象は今風カップルの乾いたラブソング。強引に解釈すれば青い鳥は彼らのこと。一見幸福そうなんだけど満たされない。でもたいした問題じゃない、っていうような? UAの声、うたい方は好きだし、こういうのもたまにはいい。でもこればっかだと頭の方がイカレちゃうけど。

♪飛べないブルーバード すべてをゼロに戻して歩いてゆく 「飛べないブルーバード」小比類巻かほり
もはや懐かしの80年代ディスコサウンド。
ブルーバードは自分のこと。なんで自分が幸せの鳥なのか。ただし、“飛べない”って冠がつくので本来幸福な存在なのにいまは不幸、ってことなのかな。“歩いていく”のは飛べないから仕方なく、ってことじゃないよね。

♪儚い命を抱いて カゴを捨てた青い鳥 「アオイトリ」平井堅
この青い鳥は一見自分のこと? つまり貴女のためならば今の幸せを捨ててもいいって。でも後半には♪さまよう二人残して 星に消えた青い鳥 って出てくる。これは二人の幸せや希望が消えたってことで、オーソドックスな青い鳥になってる。まぁ幸福という概念だって自分にとってのだから、自分のことでいいのか。サビの切実感は演歌と通底してます。

「青い鳥」は私。でも人間が自分を青い鳥に例えたのではなく、青い鳥を擬人化した歌が上にのせた中島みゆき「僕は青い鳥」。その青い鳥が自分を捕まえに来る人間たちを憐れみ悲しんでいる歌。相変わらずドラマチックというか大げさな曲調は彼女の持ち味。スクリーンミュージックのような間奏がいいです。

浜崎あゆみにも「BLUE BIRD」が。しかし、これはラブソングというより“友だちの歌”。タイトルからも「青い鳥」というより「憂いの鳥」かも。

演歌だって。
♪俺の心に春を呼ぶ おまえはしあわせの青い鳥 「しあわせの青い鳥」山本譲二
「浪花節だよ人生は」
に代表されるような、長調で調子のいい曲調は演歌の王道ソング。詞がまたしばしば耳にする“女房賛歌”。でもこの種の歌苦手で……。とくにカラオケで聞かされるのは耐えられませんです。

♪泣いたら駄目 死んだら駄目 それなりに青い鳥 「それなりに青い鳥」村上幸子
これまた「辛いおんなの人生航路」と演歌定番ソング。気は持ちようで、男に振られたって辛い出来事があったって、時には小さな喜びがある。それなりに幸せなんだよ、という謳演歌だったり応援歌だったり。
それを“それなりに青い鳥”と気の利いた歌詞にしたのは阿久悠。リズム歌謡は三木たかしの作曲と川口真のアレンジ。
村上幸子は新潟県村上市出身。昭和63年に「不如帰」のヒットがあるが、2年後31歳の若さで病死。幸子の幸は……。

♪男なんて淋しいもんだね どこかの空まで飛んでく青い鳥 「男なんて青い鳥」小林幸子
この青い鳥は幸福よりも自由を求める。たしかに男のある部分はそうかも。でもメーテルリンクの「青い鳥」は自由ではなく幸福の象徴なので、この歌では「青い鳥」を新解釈している。その作詞者はいかにもの荒木とよひさ。いまや演歌界の巨匠。ただこの歌に関しては♪近頃いい男に お目にかかれない とか ♪昔の男たちは 背中がシブかった などとどこかで聴いたことのある歌に似たフレーズ。まぁ、それだけ阿久悠が偉大だったということでしょうか。

メーテルリンクの戯曲「青い鳥」のラストシーンでは、青くなったハトにチルチルとミチルが餌をあげようとしたとき、ハトは大空へ逃げていってしまいます。そしてチルチルが観客に「どなたかあの青い鳥をみつけたら届けてくれませんか。僕たちが幸福になるためにはあの鳥が必要なんです」と語りかけて幕がおります。
えっ? 幸せ探しって最後は人に頼むの? 他力本願……。と思ったけど案外真理かも。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

BLUE/青い鳥②冬歌①雪椿 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。