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BLUE/青い鳥① [color sensation]

青い鳥.jpg

♪青い鳥を見つけたよ 美しい島で
 幸せ運ぶ 小さな鳥を
 だけど君はあの空へ 飛んで行くんだろ
 ぼくがこんなに 愛していても

 小さな幸福を ぼくの手に乗せたのに
 青い鳥 青い鳥 行かないで
(「青い鳥」詞、曲:森本太郎、歌:ザ・タイガース、昭和43年)

「青い鳥」といえば、モーリス・メーテルリンクの戯曲、チルチル・ミチルの物語。
兄妹が「青い鳥」を求めて旅する話。「思い出の国」や「夜の御殿」「幸福の楽園」「未来の国」を巡るけど、結局青い鳥を捕まえることはできなかった、というまさに「夢物語」。

日本ではよく知られた戯曲ですが、実際には読んだことがないけれど、話の大筋は知っているという人がほとんど。それほど有名な物語なんですね。ところがメーテルリンクの生まれたベルギーをはじめヨーロッパでは、ノーベル賞作家の彼の存在はしっていても「青い鳥」はあまり知られていないとか。

そんな「青い鳥」は幸福の象徴であり、チルチル・ミチルつまり「人間の人生は幸福を求める旅のようなもの」というのがテーゼ。さらにすすんで「何処を探しても見つからない幸福は案外自分の身近にあった」という教訓も。

いずれにしても「青い鳥」は人間の幸福の象徴であることには変わりないでしょう。

人間とは幸福を求めるもの、しかしそれはなかなか手にできないもの。というのは実に単純なリアリズムで、こういう図式は流行歌にはピッタリ。

「青い鳥」が日本に紹介されたのは明治後期ですが、戦前の流行歌の中では聞いたことがありません。多分わたしが知らないだけであったのでしょうが。

戦後になると、
♪青い鳥いとしや いずこえ消えたか恋の鳥
という岡晴夫「東京の青い鳥」(昭和29年)が。この場合の青い鳥は恋人のこと。岡晴夫には他に「君は愛しの青い鳥」があるそうですが、未聴。
また、昭和31年の「自転車旅行」(岡本敦郎)には
♪青い小鳥の住む国へ チリリンチリリンと ベル鳴らし
と出てきます。

しかし、本格的に日本の流行歌の世界に「青い鳥」が飛び交うのは昭和も40年代になってから。

そんななかで比較的古いのは昭和41年の、
♪青い鳥が泣いている 小さな庭の片隅で 「青い鳥が泣いている」ブロードサイド・フォー
幸せをなくした友?を励ますという「バラが咲いた」(マイク真木)を思わせるストーリー性のない和製フォーク。シンプルなアルペジオをバックに。たしか「若者たち」のB面。
まさに和製フォークとGS(グループサウンズ)の両輪が動き始めた日本のオリジナルポップスの萌芽期に出た歌。

そしてそのGSから昭和43年にヒットしたのが上に歌詞をのせたタイガース「青い鳥」
GS特有のメルヘンソングでシチュエーションは「美しい島」。メーテルリンクの戯曲そのままに見つけた青い鳥は飛んでいってしまう。「青い鳥=叶わぬ夢」は“原作”以上に輪郭が強調されていたり。

どちらかというと暗くネガティブな歌謡曲を引きずっていたGSに比べ、その直後のヤング流行歌の主流となったアイドル歌謡では、おなじ「青い鳥」をうたってもはるかにポジティブ。それが昭和48年のヒット曲。

♪ようこそここへ クッククック わたしの青い鳥 「わたしの青い鳥」桜田淳子
青い鳥の訪問に誰よりも幸せ感じちゃってるおんなの娘。「どうぞいかないで」という願いの言葉も不安などみじんもなく、幸せいっぱいに聞こえます。

アイドル歌謡ではさらに昭和52年になると、
♪青い鳥逃げても もう泣かないわ 「青い鳥逃げても」伊藤咲子
昨日までいた青い鳥が消えて、幸せが粉々にくだけちっても、わたしは泣かない、きっと立ち直ってみせる、と“ひまわり娘”がうたっております。こちらも「青い鳥、行かないで」と懇願していたタイガースの悲壮感などまるでなし。

アイドルでいえば小泉今日子にも「AOITORI」が。

20年以上昔、「青い鳥症候群」という言葉がマスコミで取りざたされたことがありました。風俗(困るなぁ、こう書くと誤解を生むようになってさ)関係の本などでは当時の流行語なんて書かれているものもありますが、それほどでも。しかし、よく耳目にしたことはたしか。
これはたしか、夢ばかりを追い続けていつまでも大人になりきれない人間たちのことをいっていたと思っていましたが、インターネットで調べてみるとだいたいは「就職してもさらなる適性の職種があるのではと、次から次へ転職する人間のこと」というかなり限定的な意味で紹介されていました。いつから変わってしまったのだろう。それとも初めから?

しかしチルチル・ミチルも歳を重ねれば、生きるために現実と向き合わざるをえなくなるでしょう。で、彼らは「青い鳥」を探すのをやめるのかといえば、決してそうではなく、夢と現実の両面をかかえながら、バランスをとりながら生きているのではないでしょうか。そういう人間の方が圧倒的に多いような気もしますね。できたら“夢”の方に全比重をかけたいなぁ、なんて思いながら。

♪しあわせの 青い雲~ ……違うか。


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