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峠②野麦峠 [a landscape]

野麦峠.jpg

♪ 山は 山は吹雪 吹雪 振り返れば
  飛騨は 雪に煙る
  お高祖頭巾に 手甲脚絆
  爪かけ草鞋をきりりとしめて
  雪は野麦の 峠道
  山よ 山よ ええ 荒れるなよ
(「野麦峠」詞、曲:曽我部博士、歌:吉永小百合、昭和44年)

ストレートに「峠」が題名になった文学作品で知られているのが「あゝ野麦峠」(山本茂美)
野麦峠は、北アルプスは乗鞍岳と御岳山の間にある標高1672mの峠。古くから飛騨と信州を結ぶ重要な峠だった。野麦とはクマザサのこと。

「あゝ野麦峠」で描かれた時代は明治前期。まさに日本が「富国強兵」を推進していた時で、日本が世界に誇る輸出品のナンバーワンが生糸だった。
日本各地に製糸工場がつくられ、「野麦峠」の舞台となった信州の岡谷や諏訪はその中心的な地域で、全国から小学校を出たばかりの少女たちが集められ女工として働いた。

その過酷な労働の様子は大正時代末期に出版されたルポルタージュ「女工哀史」(細井和喜蔵)に詳しい。

「あゝ野麦峠」によると飛騨の尋常小学校(四年制)を出たばかりの少女たちが、高山に集められ、そこから7つの峠を越えて信州の岡谷や諏訪にある製糸工場へ働きに行った。その距離35里というから約140㎞。峠道なら10日近くかかったのではないか。

「あゝ野麦峠」では製糸工場で余命幾ばくもなくなった女工・政井みねが、迎えに来た兄に背負われて故郷へ帰る途中、野麦峠で「ああ飛騨が見える……」と言って絶命したエピソードが書かれている。
のちに大竹しのぶで映画化された時は、この政井みねを中心としたストーリーとして描かれていた。

その「野麦峠」をうたった歌はいくつかあるようだが、聴いたことがあるのは上に載せた吉永小百合がうたったもの。
吉永小百合がこういった小説を元にした歌をうたう場合、ふつうは彼女が主演した映画の主題歌というケース。
しかし映画は昭和54年(主演・大竹しのぶ)と57年(三原順子)と二度制作されているが、吉永小百合は出ていない。まして、彼女がうたった「あゝ野麦峠」は昭和44年発売。

これは、当時彼女の父親のプロデュースで「あゝ野麦峠」映画化の企画があったのだが、それがボツになったのである。その理由を彼女は自伝で「出来上がった脚本は、私が考えていた「野麦峠」とは違うものでした……」と書いている。
結局その前に出来ていた歌だけが残ったというもの。その歌は、前奏と間奏に彼女のナレーションが入り、全編に吹雪のSEが入った力作。

そのほかの流行歌にうたわれた実在の峠をいくつか。

ああ さいはての美幌峠に 霧が降る 「美幌峠」 美空ひばり
北海道道東、屈斜路湖の西にあるのが標高525mの「美幌峠」。美幌と弟子屈を結ぶ要路だった。峠には美空ひばりの歌碑があるとか。同名異曲で秋川雅史盤もある。

♪遠い想い出 偲ぶ狩勝峠 「たそがれの狩勝峠」三船浩
富良野から帯広へ向かう間、十勝岳と芽室岳に挟まれるような標高726mの峠。狩勝とは石狩と十勝のひと文字をとったもの。根室本線で峠下の狩勝トンネルを抜けたときに現れる十勝平野の大パノラマが絶景とか。

♪はかなく消えた 遠い虹 夢よさよなら 十国峠 「十国峠の白い花」島倉千代子
昔からの箱根の観光スポットが十国峠。箱根峠から熱海へ向かう日金山の山頂770mの峠。見晴らしが絶景で、伊豆、駿河、甲斐、武蔵、信濃など10の国を見渡すことができたのでその名がついた。
島倉千代子にはほかに♪姉サは峠に 消えてゆく 「りんどう峠」というヒット曲がある。

ほかでは、「鈴鹿峠」鳥羽一郎、「大菩薩峠」村田英雄、「笹谷峠」西島三重子、「暮坂峠」五木ひろし などもあるようだが未聴。

先日、誘われて近場へ低山ハイクをしに。
小さな山を2つ越えるという駅から往復4時間足らずのコース。
脚力、体力にはいささか自信があったのだが、寄る年波と普段の不摂生、おまけに久しぶりの山道ということで2つめの峠に着いた時には2人ともいささか息切れぎみ。

そこで、弁当にお茶。天気も良いし見晴らしもいいし、低山ではあっても山は山。久々の征服感、達成感に浸っていると、下の方から何やらガヤガヤと騒がしい声が。
と間もなく、若い先生に引率された幼稚園の年長さんが30人あまりドヤドヤと。

連れと顔を見合わせ「情けねぇー」。
下りは楽だと思いきや、まずは連れが転けて仰向けに。その姿は悪いけど笑えた。その報いはすぐに。数分後、今度はわたしが見事に右足首を捻挫。太い木の枝をみつけて杖変わりに。それを見て今度は連れが大笑い。
ようやく下山したが、町中で杖でもないと思い、連れの肩に掴まってヨチヨチ歩行。
「いつだって私があなたの杖だってこと、忘れちゃだめよ」
と連れが。
「はいはい。まぁ、ステッキガールってことだな」
とキツイ反撃をしてみたが、どうやら意味が通じなかったようだ。


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レモン

野麦峠は僕にとっても思い出深い作品です。

何故かというと僕の在籍していた音楽舞踊団カチューシャという劇団で
1980年ミュージカル版でこの作品を取り上げたからなのです。

これがミュージカルになるのかとmomoさんは思われるに違いありません。しかし今考えると思い出深い作品です。

脚本:カチューシャ創立メンバー河野たつき
演出:若杉光夫
音楽:宮川泰
作詞(テーマ曲):岩谷時子
初演出演:佐野浅夫、堀江美津子(キャンディ・キャンディ歌)等
という顔ぶれでした。

時代はそれから28年を過ぎ、
あの時のことがmomoさんの文章から思い起こされます。

それからmomoさん達が順番に転んだ様子も目に見えるようです。
お互い足腰は鍛えないといけないですね。

参考までに野麦峠主題歌 「愛のテーマ」です
1.淋しい時は思い出そう
私達には愛がある
この瞳には見えないけれど
手をとればあたたかくふところに流れてくる
愛があるから生きていく
愛があるから生きていく







by レモン (2008-10-26 21:50) 

MOMO

「音楽舞踏集団カチューシャ」ってよく知りませんが、懐かしい名前ですね。

佐野浅夫さんてあの黄門様のですか?
堀江美都子さんは、アニメソングの女王でしたよね。アニメシンガー数ある中でもいちばん可愛かった。あの頃からアニメの声優やシンガーが注目され始めたのでしたよね。

ミュージカルで「野麦峠」ってまったく違和感がありません。
作詞作曲も凄いメンバーですね。

いつかその頃の話を聞きたいですね。
by MOMO (2008-10-27 21:36) 

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