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YELLOW/れもん② [color sensation]

レモン2.jpg

When I was just a lad of ten, my father said to me,
"Come here and take a lesson from the lovely LEMON TREE."
"Don't put your trust in love, my boy", my father said to me.
"I fear you'll find that love is like the lovely LEMON TREE."

LEMON TREE very pretty and the lemon flower is sweet
but the fruit of the poor lemon is impossible to eat.
LEMON TREE very pretty and the lemon flower is sweet
but the fruit of the poor lemon is impossible to eat.

([LEMON TREE]words & music by WILL HOLT, vocal by THE KINGSTON TRIO, 1961)


そもそもレモンは日本人にとってそれほど親しみのある果物? ではなかった。
丁髷人がレモンのスライスを焼酎に入れて飲んだとか、焼いた秋刀魚に垂らしたなんて話は聞いたことがない。
それもそのはず、日本に入ってきたのは明治のはじめというからリンゴと同じ。出所はアメリカというからこれまたリンゴ並み。今でも輸入先は大半がアメリカ。次いで多いのがなぜかチリ。

しかし、みかんのようにムシャムシャとはいかない。そこがレモンの嫌みというか気取ったところで、料理にたらして味を引き立たせるのがせいぜい。あとは、レモネード、レモンスカッシュ、レモンライムなど飲み物で。

子供の頃の夏、よく食べたかき氷のレモン水、あれはどこまで本物のレモンが入っていたのか。でもだいたいはイチゴ、たまにレモン、飽きるとメロンの順だった。水(すい)は絶対に食べなかった。色気がないというか味気がないというか。

軌道修正。
とにかく梶井基次郎が題材にしたようにレモンは明治、大正の世すでに八百屋の店先に並んでいた。しかし当時は歌に出てくるほど日本人にとって親しみのあるフルーツではなかった。大輸入先のアメリカと一戦構えた戦時中はもちろん、戦争が終わってうたわれたのは、「リンゴ」であり「みかん」であって、「レモン」ではなかった。

ヒット曲の中に「レモン」という言葉が出てきたのは昭和26年の「憧れの郵便馬車」(岡本敦郎)あたりではないだろうか。
♪レモンの花の咲く道を 郵便馬車は日に一度
ちなみにレモンの花は見たことはないが、紫色だとか。

そんなわけで? はじめ“レモンの歌”は海の向こう(古い!)からやって来た。
昭和30年代の後半というから1960年代前半、
♪Johnny boy, take it slow  don't you know, don't you know
というヴァースが入って、
♪恋をした女の子 誰でもが好きなこと
と始まる「レモンのキッス」ザ・ピーナッツ伊藤アイコが歌っていた。
これはナンシー・シナトラNANCY SINATRA[LIKE I  DO]のカヴァー。内容は恋敵に対して「彼女も私のように彼にキスをするけど、決して私ほど彼を愛していないわ」というティーネイジャーの気持ちをうたったもの。
「レモン」などどこにも出てこない。安井かずみの詞では、恋する女の子の歓びが♪甘いレモンのキッス とうたわれている。レモンは甘くないぞ、甘いのはレモン水だろうが、というツッコミも“安井かずみ”さんならば言わずにおきましょう。

もうひとつ付け加えると、この歌はバレエ音楽の「時の踊り」DANZA DELLl' ORE をベースにしている。「時の踊り」はディズニーの名作「ファンタジア」でも使われていた。

その少しあとに出たやはりカヴァーポップス「ロリーポップ・リップス」LOLLIPOP LIPS(九重佑三子&パラダイスキング)でも冒頭に、
♪オレンジ、パイナップル、チェリー、レモン
と「レモン」が出てくる。オリジナルはご存じコニー・フランシスCONNIE FRANCIS で上の歌詞は原語どおり。

そしてそのアメリカからモダンフォークブームに乗ってやってきたのが「レモン・トゥリー」LEMON TREE 。これはピーター、ポール&マリーのデビュー曲(1962年)。

「僕が10歳のとき父親がレモンの木の話をしてくれたんだ……」という出だしではじまり、父親は「レモンはキュートで、その花はいい香りがする。でも実際に囓ってみるとほろ苦い味がするんだ。だから気をつけな……」と息子に諭す。
それから僕は大きくなり、恋をして、失恋してはじめて父親の言った意味がわかった。
というような内容の歌。

ほかにキングストン・トリオKINGSTON TRIOトリニ・ロペスTRINI LOPEZなどがうたっていた。

なぜか、P.P.M.のヒット曲は日本でのカヴァー盤が少ない(小室等のいたPPMフォロワーズというバンドもあったが)。アマチュアバンドではずいぶんコピーされたと思うのだが、この頃から洋楽カヴァーというスタイルが減少していったのかもしれない。

そのほかでは、ジャズにウディ・ハーマン楽団WOODY HARMAN ORCHESTRAの演奏で知られる「レモン・ドロップ」LEMON DROP。アドリブの天才エラ・フィッツジラルドELLA FITZERALDがカーネギーホールのコンサートで全編スキャットでうたっている。

またロックなら「ベッドの中でお前がオレをレモンみたいに絞りとるたびに、夢中になる……」というレッド・ツェッペリンLED ZEPPELIN「レモン・ソング」THE LEMON SONG が。

その歌詞で思い出すのが、日本のシーナ&ロケッツ「レモン・ティー」
♪絞って 絞って 僕のレモンを 好きなだけ……
印象的なリフと思わせぶりな歌詞で彼らの代表曲になっているが、ロックファンならご存じのとおりこれもカヴァー。
本歌はヤードバーズYARDBIRDS「トレイン」TRAIN KEPT A ROLLIN'

まだ見たことのないLEMON TREE を一度見てみたい。
国内でもずいぶん生産されているようで、みかんの産地広島、愛媛に多いという。実が成るのは秋口ではじめはよくスーパーでもみかける緑色。秋が深まるにつれて黄色いレモンが見られる。みかんや柿とはまた違った風景だろう。
レモン・トゥリーといえば遊佐未森の歌に「レモンの木」があり、そのはじまりは♪一口囓ったら…… レモンは青春(便利な言葉だ)の象徴。
なんでも、ほんとうに、そうして囓れるほど酸味を抑えたレモンもあるそうだ、これも囓ってみたい。


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コメント 4

toty

檸檬とレモンで、2回に分けられるようだったので
今日を楽しみに待っていました。

その間に、
レモンに関する歌を幾つか思い浮かべていました。
最初に、Lemon Tree
一生懸命歌詞を覚えて歌った懐かしい曲で、
PPMの真似でした。

そして、レモンのキッス(ピーナッツ)。

そして、デュークエイセスの「おさななじみ」で
青いレモンのあじがでてきました。
これからも、楽しみにしております。
by toty (2008-09-06 23:42) 

レモンツリー鈴木

MOMOさんこんにちは、
初めてコメントさせて頂きます。
レモンという言葉に反応してしまうのはいた仕方ありません。(笑い)

テーマに沿ってブログを書かれているのでMOMOさんのブログを読まれている方達も自分の記憶と触れ合う瞬間を楽しみにされていると思います。

終戦後、経済と同じようにの日本の音楽もアメリカのポップス一色になって、良いか悪いか別として若者達がその音楽から色々なものを学んだのかもしれません。

その日本も今では若者達が自分の言葉で歌を作るようになりました。
ただ歌は自分で作れると教えてくれたのがアメリカンフォークソングだったのかも知れません。

MOMOさんのブログは話題が豊富でとても参考になります。
これからもよろしくお願いします。
by レモンツリー鈴木 (2008-09-07 09:15) 

MOMO

totyさん、いつもありがとうございます。

やはり同年代(多分)だけに連想する曲も同じですね。
そうでした、「おさななじみ」、ありましたね。

ああいうストーリーを考えることもすばらしいですけど、それを歌にしてしまうところが永六輔の巧みなところですね。中村八大の曲も絶妙ですよね。


by MOMO (2008-09-08 21:32) 

MOMO

レモンツリーさん、こんにちは。

なんだか催促してしまったようなかたちになって恐縮です。

こちらこそ、今後いろいろ教えていただくことも多いと思いますが、よろしくお願いします。


by MOMO (2008-09-08 21:38) 

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