YELLOW/ひまわり② [color sensation]
♪ 夢を見ていました あなたと暮らした夏
それはかけがえのない 永遠の季節のこと
まっすぐにのびていく ひまわりのような人でした
黄昏に頬染めてひざ枕 薫る風 風鈴は子守唄
…………
(「ひまわり」詞、曲:福山雅治、歌:前川清、平成14年)
「ひまわり」はポップス専科ではありません。
歌謡曲・演歌でもあることはある。というのはきわめて少ない。
戦前や昭和30年あたりではまず聴いたことがない。とりわけヒット曲では。
歌詞の中に出て来るものでも覚えているのは昭和18年の高峰三枝子がうたった「南の花嫁さん」。♪くるくるとまわるよ 赤い向日葵の花 というのがあるだけ。これも舞台が本土ではなく、南の島という設定だから。
およそ、昭和40年代ぐらいまで「ひまわり」に日本の花としての“市民権”はなかったのでは。そう思ってしまうほど。
昭和40年代後半の「ひまわりの小径」(チェリッシュ)や「ひまわり娘」(伊藤咲子)あたりから“解禁”となって出始め、平成になるとこれが堰を切ったようにドドドっと。
吉田拓郎の「夏休み」(昭和46年)のなかにも♪ひまわり 夕立ち セミの声 と出てくるが、これなど古いほう。
これが演歌になると昭和40年代、50年代でもさっぱり。
やはりあの湿度の高い世界を語るのに「ひまわり」は不似合いだったのかもしれない。
といっても、演歌だって生き延びるためには新しいものを取り入れて行かなくてはならないし、「ひまわり」もこれだけ定着して流行歌の夏の“季語”として浸透してくれば、放っておくわけにもいかない(いい加減なこと言ってます)。そんなこんなでボチボチと。
では、歌謡曲・演歌の「ひまわり」をいくつか。
前川清「ひまわり」
さびのメロディーが印象的。和風で懐かしい(聞き覚えのある?)。
福山雅治の楽曲提供ということで話題になりヒットした。福山自身もうたっている。
昔の恋人との夏の思い出をうたっている。夏の風物詩風鈴が出てくる。ほかにも宵祭り、蛍火、氷菓子、夕涼みと夏のキーワードがちりばめられている。
〈あなたがそばにいてくれるだけで本当によかった〉とむかしを回想するヒロイン。別れて何年も経ちそれでも、相手のことをそう思える女性がいるのかなぁ。いてほしいなぁ。
でも「ひまわりのような男」ってどうなのかなぁ……。細かいことか。
この歌の「ひまわり」は思い出。
門倉有希「ひまわり」
♪あんたの胸に綺麗に咲いた あたしひまわりひまわりだった
「どこへでも行け」「不幸になればいい」と、男の不実に愛想をつかしながらも未練を残す女の気持ち。演歌の定番。作詞は「からすの女房」の荒木とよひさ。
この歌のひまわりは自分で、男が太陽。太陽が消えればひまわりも枯れると。
キム・ヨンジャ「ひまわり」
♪心に咲いたひまわり あざやかな笑顔で
シングアウトするサビから入るノリのいい演歌。階調もメジャーで「いつも心に太陽を」という歌詞にあるように演歌によくみられる“人生の応援歌”。「ひまわり」は自分の心の中に咲かせたい前向きな気持ち。
この歌、作詞は違うが作曲は門倉有希盤と同じ浜圭介。曲調も明暗じょうずに分けて。
あべ静江「ひまわり」
♪ひまわりが咲いている別れ道 手をつなぎ歩いてる泣きながら
何度聴いても、今日の日はさようならなのか、永遠の別れなのかわからない歌。明るい曲調なので、とりあえずまた明日ネということなのかも。最後は「愛している」の連呼で終わる。作詞作曲は彼女のヒット曲「みずいろの手紙」「コーヒーショップで」と同じ阿久悠・三木たかしのコンビ。阿久悠にしては平凡な作品。
「ひまわり」が男の気持ちだったり、女の気持ちだったり、明るさだったり不安だったりと演歌も頑張っております。
知り合いに教えてもらったのだが、韓国映画に「ひまわり」というのがあるらしい。ヤクザ者が社会で更正する話らしく、その主人公がはたらく所が「ひまわり食堂」。
「ひまわり食堂」という名の飲食店は日本でも全国各地にけっこうあるようだ。以前勤めていた会社があった下町にもありました。昼飯時はよく利用したもの。で、人気のメニューは定食類。なかでもよく食べたのが日替わり定食。ひまわりだけに。
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