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その名は●みどり [the name]

緑魔子.jpg

♪ 疲れたら眠りなさい
  わたしが歌をうたってあげる
  あなたが森と思っているものは
  死んだ人たちの爪の跡
  あなたが風と思っているものは
  まだ生まれない息子たちの声
(「やさしいにっぽん人」詞:東陽一、曲:海老沼裕、田山雅光、歌:緑魔子、昭和46年)

「みどり」ちゃん、「みどり」さんも以前はよくいた。
名前の語感からはなんとなく“陽性”でかつ優等生というイメージ(わたしだけか?)だが、そんなものアテにならない。
わたしの小学校と高校時代にも「みどり」ちゃんがいた。
高校時代のみどりちゃんは、眼が大きく“ペコちゃん”というあだ名(当時はよくあった)の大柄で陽気な娘だった。しかし、小学生の「みどり」ちゃんは痩せていて、無口でキツイ性格の子だった。どちらも勉強が優秀だったかどうかは記憶にない。

この「みどり」ちゃんも、おそらく終戦後から昭和30年代にかけてはモダンな名前だったのではないだろうか。それがこの平成の世となってほとんど聞かなくなった。もちろん毎年マイノリティとして誕生しているのだろうが。

さっそく音楽に。

名前の「みどり」が出てくる歌は2曲知っている。
ひとつは以前にもとりあげた飯田久彦「トランジスタ・シスター」(昭和37年)で、当時のロカビリアンの名前を連呼するなかに「みどりちゃん」。
もうひとつは坂本九「あの娘の名前はなんてんかな」(昭和36年)で、こちらはイカシた女の娘を振り向かせようと、あてずっぽの名前をやはり連呼する歌で、その中で「みどりちゃん」が出てくる。

2曲とも歌謡曲というよりはポップスで、昭和36、7年のポップスの「みどりちゃん」といえば思い浮かぶのは田代みどり
10才でウエスタン・カーニバルに出場、12才でレコード・デビューという田代みどりは大阪育ち「パイナップル・プリンセス」「ビキニスタイルのお嬢さん」「ベビー・フェイス」「月影のマジョルカ」などカヴァーポップスをヒットさせ、パンチのある歌い方は和製ブレンダ・リーなどと言われた。
日活青春映画にも多数出演し、19才で引退。その後元ブルー・コメッツの三原綱木と結婚しデュオで再デビュー(「愛の挽歌」)するが、のちに離婚、そして引退。オールディーズが人気の昨今、数年前から歌手活動を再開している。

しかし、この昭和30年代後半、ほかにも「みどりちゃん」が二人いた。
二人ともいまでいう演歌歌手で、ひとり目は若くしてお座敷ソングのイメージがあった五月みどり
昭和33年19歳で「お座敷ロック」でデビュー。その後「おひまなら来てね」「一週間に十日来い」「温泉芸者」とヒットを連発。大人の色気があったほとんど最後の純和風シンガー。私生活でも話題が多く、「新聞少年」山田太郎は一時義理の息子だったし、現在は菊池桃子が息子の嫁。

もうひとりはあっと驚く袴姿で登場した畠山みどり
♪恋をしましょう 恋をして…… 「恋は神世の昔から」
で昭和37年にデビュー。奇抜な舞台衣裳と浪曲調のメロディーが大ヒット。作詞作曲は都はるみを世に出した、星野哲郎市川昭介
そのあとも「ちょうど時間となりました」「馬鹿は死ななきゃなおらない」「さてそれからというものは」と浪曲のフレーズを取り入れた題名の歌を連発。やはり日本の経済成長期に存在感を示した歌手だった。

ほかでは笹みどり「下町育ち」、西崎みどり「旅愁」、木の内みどり「東京メルヘン」、辛島美登里「サイレント・イヴ」などが。

また、みどりは名前だけではない。苗字だって。
その代表が緑魔子。彼女の主演映画で自身が歌う「やさしいにっぽん人」の主題歌は、いまでも頭の中の“蓄音機”でかんたんに再生することができる。

「やさしいにっぽん人」は昭和45年の公開。監督は東陽一
もちろん公開時に観た。ATG(アートシアターギルド)だったか。東監督の前作「サード」が印象に残ったので期待して観にいったのだったっけ。

あれから40年あまりが経って、残っているのは当時の時代がにじみ出ていた演劇じみたセリフと“思わせぶり”な内容(というより雰囲気)。そして主演の緑魔子がうたった主題歌。

あまにりにも忘れてしまっているので、ウェブで探してそのストーリーを追ってみることにしたのだが、結局のところその“あらすじ”を読んでも、あの時観たはずの映像は再現されなかった。
唯一思い出したのが主人公の苗字。沖縄の青年で「謝花」。そうだった、映画の中で彼は誰からも「じゃはな」と呼ばれず「しゃか」と呼ばれていたのだった。
たまたま当時、何かで沖縄の自由民権家・謝花昇のことを読んでいて、それが映画とシンクロしたのだ。“あらすじ”を読みながらそんなことを思い出した。わたしにとってはそれだけの映画。

緑魔子はカッコよくいえば70年代に咲いたあだ花。
大きな鼻が印象的なコケティッシュな女優だった。60年代後半は日本映画のセックス・シンボルとして。70年代は自由劇場や黒テントで前衛的な舞台女優としてその存在感を示した。
いまだ現役でテレビ、映画に出演。個性派俳優・石橋蓮司夫人でもある。
「やさしいにっぽん人」の作曲家の一人田山雅光はのちに田山雅充として「春うらら」を自作自演。

ほかの緑姓としては競作の「夢は夜ひらく」を歌った緑川アコ、シャンソンの深緑夏代がいる(古川緑波もレコード出しているけど)。
またグループにはthe brilliant green「There will be love there -愛のある場所-」も。

あの頃みんなピチピチしていた「みどりちゃん」もオバさん(オバアサン? それは言うな)になりにけりで。しょうがないよね「緑のおばさん」だもの。
そういえば「緑のおばさん」が姿を消してから何年になるんだろう……なんだか、暗い話になりそう。でも、エヴァー・グリーンっていう言葉もあるし、頑張ってくれ、みどりちゃんず!


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Mashi☆Toshi

この曲、レコードを聴きながら採譜したことがあるんです。
TBSアナウンサーの故・林 美雄さんが、番組で歌いたいということで、生でギター伴奏をさせていただきました。
34年も昔のことですが、昨日のように覚えています。
あの番組が早朝5時で終わって、片付けを終えたあと、友人がADをしていた「おはよう720」のスタジオに行くと、森ミドリさんがスタンバイしていたっけ・・・。
数年後、うつみ宮土里さんにピンチヒッターをやっていただいたこともありましたね。

by Mashi☆Toshi (2008-07-05 00:00) 

toty

その名はシリーズ、
次はどの名前かと、楽しみにしています。
昨日、「みどり」もいっぱい居るなと思っていたので
こちらを見て、おお! みどり! と思いました。


by toty (2008-07-05 02:03) 

都市色

こんにちは。
みどり。
緑 魔子さん。
カルト系女優と云うイメージです。
「盲獣」、凄い映画でした。

みどり。
最近僕が気に入っているユニークなシンガーソングライターで「ミドリカワ書房」という方がいます。
人間のダークサイドをユニークな切り口で歌っています。
YOU TUBEで楽しめますよ。

by 都市色 (2008-07-05 10:56) 

MOMO

Mashi☆Toshiさん、返事が遅れてすみませんです。

ギターで伴奏ですか?そのときのテープは残っていないのですか。あれば宝物でしょうね。

森ミドリさん、いましたね。最近テレビでみかけませんが。



by MOMO (2008-07-13 19:50) 

MOMO

totyさん、こんばんは。
返事が遅れてすみません。

そうですか、グッドタイミングでしたね。
これからもない知恵絞ってupするつもりですのでヨロシクお願いします。
by MOMO (2008-07-13 19:52) 

MOMO

都市色さん、いつもありがとうございます。
返事が遅れてすみません。

緑魔子、名前からしてスゴイですよね、挑戦的というのか、戦闘的というのか。実際は可愛い女性らしいですが。
「ミドリカワ書房」ですか、今度聴いてみます。


by MOMO (2008-07-13 19:55) 

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