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その名は●アキラ [the name]

寺尾聡.jpg

♪ 鏡だけが恋人の 彼女は ah 小声で笑うの
  本気だから困るのと キスなら ah 遊びのエリア
  みんな承知 本命は別だと 
  何にも知らないの アキラがかわいそう
  隠れて見えない アキラの魅力は
  あの子にはなんにも わかりなどしないのに
  回れ回れ 恋のルーレット
  わたしと ah アキラを乗せて
(「アキラが可哀想」詞:康珍化、曲:小倉博和、歌:和久井映見、平成5年)

「あきら」は戦前から人気の名前で、はじめは「昭」が多かった。
昭和8年突然「明」がベスト10入りし、翌9年には1位に。ところが次の年の10年にはベスト10落ち。なにがあったのか。昭和8年12月に現天皇・明仁が誕生している。このことで翌9年、ベスト1になったことは想像できるが、その前の年の8位が不明。

再びベスト10に入ってくるのは、戦争が終わった昭和21年。まさに、苦しい状況の中でなんとか光明を見たいという願望の表れではなかったのか。
それから昭和34年まで常にランキングの6~10位を移動し続ける人気だったが、35年つまり1960年にベスト10から消え、以後復活することはなかった。代わりに「聡」が35、36年に9、10位に入ってきたが、やはり37年以降消えてしまった。

シンガーにも「アキラ」は多い。いや多かった。
なかでもやはり「明」がいちばん多かったのではないか。
それもやはり昭和30年代。歌謡曲と映画の黄金時代。
まず先鞭をつけたのが映画俳優でその後ミュージカルでも活躍することになる宝田明
昭和32年に“歌う銀幕スター”の仲間入り。「美貌の都」「大学の侍たち」「恋のいのち」など自身主演の映画主題歌、挿入歌を。なかでは、
♪一緒になろうよ 短いいのち……
という西條八十作詞の「美貌の都」がヒット。
当時はやはりシンギング・アクターの鶴田浩二とともに代表的な二枚目、いまでいうイケメンだった。

そして30年代も後半、青春歌謡の時代になると“史上最高の美少年”といわれた三田明「美しい十代」でデビュー。
♪白い野ばらを捧げる僕に……
って、そんなキザな若者がいたのか(いなかったんじゃない)ってマンガチックな歌詞。それが大ヒット。以後「明日は咲こう花咲こう」「ごめんねチコちゃん」「若い港」「恋のアメリアッチ」「アイビー東京」と恩師・吉田正の作品でヒットを続ける。

もうひとりが安達明
昭和39年、当時あった「女学生の友」(ストレートなタイトル)という雑誌で公募された歌詞「潮風を待つ少女」でデビュー。2作目の、やはり雑誌で詞を募集した「女学生」がヒット。同じ日本コロムビア所属なので第二の舟木一夫に、と期待されたが青春歌謡のトレンドは過ぎていた。その後「春を待つ少女」「初恋」「悲恋」など“純愛路線”を貫いたがしばらくして引退。
♪うす紫の藤棚の 下で歌ったアベマリア……

そして昭和も40年代になると、布施明が。
昭和40年、カンツォーネのカヴァー「君に涙と微笑みを」でデビュー。
翌年、平尾昌晃作曲の「おもいで」でオリジナル曲を。以後「恋」「霧の摩周湖」「愛の園」と平尾作品のベストセラーを連発。50年には小椋佳「シクラメンのかほり」でレコード大賞受賞。現在還暦を過ぎていると思うが、その豊かな声量はほとんど昔のまま。
♪いつも貴男の手を借りた 背中のボタンが止めにくい……
というクニ河内「そっとおやすみ」も名曲だった。同棲ブームに乗った「積木の部屋」なんてのも。

その他のアキラを。

古いところでは、戦前の昭和、一世を風靡した松平晃
古賀政男「サーカスの唄」でブレイク。その後「急げ幌馬車」「夕日は落ちて」などのヒットを。なかでも、
♪咲いたらあげましょ あの人に……
伏見信子とのデュエット「花言葉の唄」は名曲。
もうひとり戦後も活躍した俳優兼ジャズシンガーの岸井明がいた。日大相撲部出身の巨漢で「煙草屋の娘」やアチラものの「ダイナ」などを小粋に歌っていた。

戦後ならばやはり小林旭
30年代から現在に至るまでどちらが本業? と思うほどヒット曲を出し続けている。
「アキラ」ということでは、この歌手がいちばんふさわしい。なんといっても「アキラのズンドコ節」から「アキラのシベリア大陸横断鉄道」まで、「アキラの~」あるいは「アキラで~」という歌を数多く出している。元妻の美空ひばりの「ひばりの~」にも匹敵する。ベスト曲を選ぶのが難しいほどいい歌が多いが、ポピュラーなものでいえば
♪夜がまた来る 思い出つれて 俺を泣かせに 足音もなく
という「さすらい」がいい。

ほかに30年代では「喜びも悲しみも幾年月」若山彰「湖愁」松島アキラ。カヴァーポップスで「ジプシー・ウーマン」などを歌った瀬高明もいた。

40年代になると「空に太陽があるように」にしきのあきら(錦野旦)。「学園天国」などをヒットさせたフィンガー5のヴォーカルもたしかだった。
50年代のニューミュージックでは因幡晃「わかってください」)と寺尾聡「ルビーの指輪」)。

まぁ、アキラの多いこと。それが平成の世になるとサッパリ。やはり名前の流行り廃りはあるもので。
とはいえ、上にのせた和久井映見の「アキラが可哀想」は平成の歌。それでももう10年以上経っている。女友だちのボーイフレンドに恋している女の子の歌。よくあるパターンだが、その男の子が女友だちに遊ばれているというのがおもしろい。昔と反対の設定?

まぁ、今となっては骨董品のような「アキラ」だが、最近ちょっと人の口の端にのぼった。
ジャニーズの臨時ユニット「修二と彰」の「彰」。
2005年にTVドラマの主題歌「青春アミーゴ」が大ヒット。修二と彰は、そのドラマの登場人物からの命名とか。ドラマも原作も読んでないのでわからないが、原作でも「修二と彰」なのか。いずれにしろ現代の青春ドラマで「修二」もそうだが「彰」も古い名前。シナリオライターが年配者なのか、はたまた今では逆にマイノリティで新鮮な“昔の名前で出ています”なのか。


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