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城②夢のお城 [a landscape]

 

♪ 僕のかわいい 友達は
 (マイ・ガール マイ・ガール)
  白いテラスに 囲まれた
  夢のお城に 住んでいる

  星よ 星よ どうして早く
  眠らないの 水色の朝日は
  とても とても 冷たいよ
(「ガール・フレンド」詞:橋本惇、曲:筒美京平、歌:オックス、昭和43年)

歌謡曲や演歌で城といえば、姫路城に代表されるような天守閣の聳えた日本の城だが、ポップスになると画的にもそういう城はあまり似合わない。

イメージとしてはやはり、白雪姫などの童話に出て来るような尖塔のあるヨーロッパの城だろう。
それを日本発の歌とするのは、ちょっと無理。
しかし、「いいじゃない。そもそも流行歌はファンタジーやメルヘン的な要素があるんだから」と強引に打ち出してきたのがGS、すなわちグループサウンズ。
それがみごとに若者に歓迎された。

考えてみれば、戦前は知らないが戦後の子どもたちは、「桃太郎」や「浦島太郎」も聞かされてきたが、「シンデレラ」や「幸福の王子」も読み読まされて育ってきたはず。
ならば、イメージの世界にキャッスルが存在しようが、ナイトやプリンスが出現しようが全然抵抗がないわけ。

そのGSビッグヒットのひとつがジャッキー吉川とブルーコメッツの「ブルー・シャトー」
♪森と泉に 囲まれて 静かに眠る ブルー ブルー ブルー シャトー
ってこれは日本の風景ではない。
日本にも森はあるし泉だってある。しかし、シャトーはない。シャトーが出現したとたんに、森と泉のたたずまいも××県△△村にあるものから、グリム童話・白雪姫の舞台の西洋の森に変わってしまう。

それが日本レコード大賞までとってしまうのだから、日本人がいかに以前からインターナショナルだったかが分かる?

こうしてGSの国籍不明メルヘンソングの大量出荷とあいなった。そのいくつかをピックアップしてみると、
ブルーコメッツ「青い瞳」「マリアの泉」
タイガース「花の首飾り」「白夜の騎士」
テンプターズ「エメラルドの伝説」
スパイダース「真珠の涙」
オックス「ガール・フレンド」「スワンの涙」

ほかにも「星の王子さま」(スケルトンズ)、「眠れる妖精の物語」(ピーコックス)「眠れる乙女」(アダムス)などなど。

そうしたイメージが最も強かったのはタイガースで、ほかにも「モナリザの微笑み」「銀河のロマンス」「僕のマリー」「落葉の物語」「青い鳥」とそれっぽい歌が多かった。
いまのビジュアル系ロックバンドにも通ずるところがあるような。もっともいまのファンのほうがフィクションの生き方が上手だけど。

それでもさすがに「城」はあまりにも唐突、メルヘン過ぎるということか、それほどは出てこない。
ランチャーズ「砂のお城」があった。
ただこれは、メルヘンというよりは、恋人同士が渚で将来を夢見ながら砂の城をつくるというストーリー。まぁ、いまどきそんなカップルいない(当時もいないか)からメルヘンといえばいえますが。

砂の城というのはある種、“儚い夢”の象徴でもある。そうしたテーマで、愛が蜃気楼に過ぎないと知ってしまった女の哀しみをうたったのがシャンソン風味の「砂の城」(木の実ナナ)。同名異曲の演歌「砂の城」(八代亜紀)もある。

「砂の城」といえば、昔「SAND CASTLE」 というカナダのアニメーションを見たことがあった。文字通り砂でつくったアニメーション。
砂漠の砂の中から三本足の鳥やら奇妙なかたちをした物体が出て来る。それがまるで祭りのよう楽しげに動きはじめる(動きがアニメの命)。そして、やがて砂漠に風が吹きはじめ、“彼ら”からサラサラと砂がこぼれはじめると、みんな元いたところへと消えていく。

そんな作品だった。動きの巧みさと“儚さ”が感じられるストーリーに感動した覚えがある。CGのないころの話で、アニメでいうとちょうど宮崎駿「ルパン三世・カリオストロの城」が公開された頃だったような気がする。

軌道修正。「城」のポップス。
「虹色の湖」「涙の森の物語」でメルヘンお得意の中村晃子にもあった。
「ガラスの城」ゾンビーズTHE ZOMBIES「二人のシーズン」TIME OF THE SEASONばりの溜息のイントロではじまるこの歌。♪ガラスの城は おとぎ話ね もう帰れない と少し成長した女性の失恋歌。

いしだあゆみの初期の楽曲には「ふたりだけの城」が。
筒美京平、橋本惇「ブルーライト・ヨコハマ」の黄金コンビ。ここでの城はイメージで、恋人たちの空間という意味。

ほかでは今は亡き岸洋子「スエーデンの城」がある。スウェーデンでないところが懐かしい。この曲は1962年公開の同名のフランス映画主題歌。監督はロジェ・バディム、主演はモニカ・ビッティ。サントラはジャズ仕立てだが、甘いメロディーが歌謡曲向きで、日本語詞がつけられた。
観ていないが、スウェーデンの城でくりひろげられる男と女の愛憎ドラマ(便利な言葉)だそうだ。

そういえば、若い頃読んだ小説にカフカの未完の長編「城」があった。
ある村に迷い込んだ主人公・Kが、その村にある城に“たどり着こう”とする物語。しかし結局はたどり着けない。城の暗示するものはさまざまだが、「存在しているのに見えない、存在しないものに振り回される」そんな印象を受けた小説だった。まったく難解な小説で苦労してやっとこさ読み終えた記憶がある。

当時仲間内でカフカは文字どおり“難攻不落の城”だった(そんなことを書いていたら今日の夕刊に、やはり当時の南海、いや難解文学の作家、ロブグリエの訃報が載っていた)。
カフカを理解できるか? パズルやナゾナゾでもあるまいし。でもそんなことに己のアイデンティティを見いだそうとするのもまた、若さの証でもありました。
理解できる? それともできない? 可? 不可? 可不可。
なんてつまらぬ洒落を言っていたヤツもいたな。

今日はGS3連発。
一発目 出てるタレントが異色。黛ジュン、中山千夏、黒メガネの男は……
二発目 江戸砂利番ショー。なんじゃこれ。
三発目 リードギターのこの人の作品。


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MOMO

イッキさん、毎度毎度、キョウシュクです。

ありがとうございます。
by MOMO (2008-02-21 22:30) 

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