城①古城 [a landscape]
♪ 松風騒ぐ 丘の上
古城よ 独り 何偲ぶ
栄華の夢を 胸に追い
あゝあ 仰げば侘びし 天守閣
（「古城」詞：高橋掬太郎、曲：細川潤一、歌：三橋美智也、昭和３４年）
「城」が好きだという人、結構いる。とくに男。日本全国にある城を訪ねて、その雄姿を写真におさめたりして。
将来は一国一城の主にとか、いつかはどでかい城に住んでみたいなんて、男なら誰しも思うロマン？ そんなことはないわな。
まぁ、空に聳える天守閣はたしかに美しい造形だし、憧れるのはわからないでもないけど。
全国にどれだけの城があるんでしょ。
なんでも戦国時代の最盛期には３０００以上あったとか。もちろん、みんな大阪城や姫路城で見られる天守閣のあるものばかりではない。そもそも天守閣付きの城が出来たのは安土桃山城が嚆矢らしい。
もともと城は戦のための要塞。天守閣なんてものは単なる権力の自己主張にすぎない。
それが徳川の時代になると、“一国一城”なんてことがいわれて１７０ぐらいに減ってしまったとか。さらにさらに丁髷とおさらばする明治は文明開化の世の中になると、まさに城なんて無用の長物。１００以上が取り壊されたって。文化財もクソもないのかよ。
しかし、人間なんてララララララララーラ、で、終戦後、下々にも余裕ができて諸国行脚の旅が流行出すと、パチパチパチと算盤の音も賑やかに城の復元ラッシュ。まさにご当地の目玉、ランドマークに。
おととしナントカ協会が「日本１００名城」というのを選定したというから、１００以上はあるんでしょうね。なんでも東京だけでも３０近い城があるそうで。もっとも、城は城でも城跡っていうのも数えての話だけど。
とにかく昔の姿をとどめているのは弘前城、姫路城、犬山城、丸岡城など１２だけとのこと。そのうち最も古いものは福井県の丸岡城で、天正４年（１５７６）柴田勝豊によって築かれたとか。残っているのは天守だけで、それも戦後地震で崩壊したものを建て直したものだそうです。それでもその１２城は行ってみる価値あり。
城をうたった歌の代表といえば、滝廉太郎作曲の「荒城の月」。詞は土井晩翠。
いまでも小学校で習うのかな。いささか詞の言葉が難しい。
２番の「ううるつるぎに てりそいし」なんて、「植うる剣に、照りそいし」って漢字をあてなくてはわからない。
「なんで刀を植えるんだい？ 大根かなんかでも生えてくるのかい？」
なんて、そんな現代だもの。
その「荒城の月」の昭和版をということで作られたのが「古城」（三橋美智也）。
詞は高橋掬太郎。生まれは北海道、新聞記者から作詞家へトラバーユ。戦前戦後の売れっ子作詞家でした。代表作は「酒は涙か溜息か」（藤山一郎）や「雨に咲く花」（関種子、井上ひろし）があった。
ほかに、リアルタイムで聞いてたほど歳はいっちゃいないけど「岡の小鳩か、小鳩の岡か……」なんて名調子で紹介されたという「啼くな小鳩よ」（岡晴夫）は終戦直後の大ヒット曲。
曲は細川潤一。「マロニエの木陰」（松島詩子）なんてタンゴの名曲もあるけど、どちらかというと日本調が得意。また作曲よりも編曲の腕が冴えていた。東海林太郎の「赤城の子守唄」や「国境の町」あるいは「麦と兵隊」なんかみんなそう。
三橋美智也にはもうひとつ「二本松少年隊」がある。
これは、会津白虎隊と同様、戊辰戦争の折、福島の二本松城で政府軍に討たれた二本松藩の少年剣士の悲劇を歌ったもの。
そのほかの城を歌った流行歌では村田英雄の「白鷺の城」。これはごぞんじ姫路城のこと。そしてライバル春日八郎の「播州赤穂城」。
歌謡曲というよりはフォーク、抒情歌にはいる「青葉城恋唄」（さとう宗幸）もいわゆる“ご当地ソング”で仙台城。
新しいところでは氷川きよしの「白雲の城」。これはどこの城なんだかわからない。だけど詞をみるとやっぱり「荒城の月」や「古城」を下敷きにしている。荒城シリーズ第三弾ということでしょう。
歌詞に出てくるのでは、
♪孤城に月の 影悲し 「白虎隊」（霧島昇）
舞台は会津若松城。昭和１２年の歌。間奏で詩吟が入ったりして。藤山一郎も歌っていました。
♪名古屋にお城は あるキャアモ 「僕は特急の機関士で」（楠トシエ他）
作詞作曲は三木鶏郎。昭和２６年のＮＨＫラジオ「日曜娯楽版」で放送された。
♪原の古城趾（しろあと） 此処こそは 「南海の美少年」（橋幸夫）
島原の乱の天草四郎をうたった歌で、城跡とは当時すでに廃城となっていた天草の原城のこと。
♪終わりとせ 尾張名古屋は城で持つ 「大学かぞえうた」（守屋浩）
これまたもちろん名古屋城だがね。そのあとの文句は「天下の大学俺で持つ」。
♪小高い丘の城跡の くずれかけた東屋で 「子連れ狼」（橋幸夫）
イントロ部分でこのセリフがかぶる。テレビで拝一刀を演じたのは萬屋錦之介だった。どこの城かは不明。
最後にナゾナゾを一発。
「難攻不落の城とかけて」
「白人女性の化粧ととく」
その心は
「ホリが深くてオチにくい」
チャンチャン。
「白虎隊」を歌のじょうずな島津亜矢ちゃんで。
イッキさん、はじめまして。
読んでいただいてありがとうございます。
by MOMO (2008-02-19 22:18)