その名は●キムタク [the name]
♪ 君はいつも僕の薬箱さ
どんな風に僕を癒してくれる
笑うそばから ほら その笑顔
泣いたら やっぱりね 涙するんだね
ありきたりな恋 どうかしてるかな
君を守るために そのために生まれてきたんだ
あきれるほど そうさ そばにいてあげる
眠った横顔 震えるこの胸 Lion Heart
(「らいおんハート」詞:野島伸司、曲:コモリタミノル、歌:SMAP、平成12年)
「キムタク」。いわずとしれたSMAPの木村拓哉のこと。
これも説明の要はないとおもうが苗字のアタマ2文字“キム”と名前のアタマ2文字“タク”をつなげた呼び方。つまり略式愛称。
なんでも女子高生の間で言われだしたのが定着したとか。
ほかにも、やはりジャニーズの“嵐”の松本潤がマツジュン。お笑いでは、ネプチューンの堀内健がホリケン、笑う焼き肉屋のたむらけんじがタムケン。また、役者では暴れん坊将軍の松平健がマツケン、長谷川京子がハセキョーなど。
志村けんをシムケンということもあるが、これはあまり浸透していない。「シムラ」のほうが一般的。
この略式愛称。女子高生が言い出したからといって、彼女たちのオリジナリティではない。
では、その歴史は?。日本ではじめてそう呼ばれた人は?
江戸時代以前の武家社会、あるいは公家社会でそういう呼び方があったかどうかはしらないが、常識的には一般市民にも苗字が浸透した明治以後だろう。
だからといって、政治家や学者、文化人にはあまりきかない。
大隈重信をオオシゲ、岩倉具視をイワトモ、山県有朋をヤマアリ、あるいは坪内逍遙をツボショウ、北里柴三郎をキタシバ、黒田清輝をクロキヨなんて、いいそうだけど、いわなかった(多分)。
どうも、そんけいできる偉人さんたちへの略式愛称はオソレオオイことだったのかもしれない。庶民はもっと身近で親しみのある人間に対して、そういう愛称を与えたのではないだろうか。
そういう意味でかなり古いと思われるのが、バンツマこと阪東妻三郎。
明治生まれで、大正12年に映画俳優としてデビュー。昭和の大銀幕スター。とりわけチャンバラ(時代物)ではピカイチの俳優だったとか。
戦後は、「無法松の一生」や「おやじ太鼓」などの現代劇でも主演している。
その息子、田村正和のほうが今では知る人が多い。
バンツマに心躍らせた人たちは、現在70代以上の方々ではないだろうか。
その少し下の世代に愛されたのがアラカンこと嵐寛寿郎。
歌舞伎界から銀幕へトラバーユした役者で、戦前戦後を通じ、当たり役「鞍馬天狗」は一斉を風靡し、「天狗のおじさん」は子供たちのヒーローだった。
二人とも映画俳優で、それも時代劇中心。
昭和の前期、いかに映画が栄え、なかでも時代劇の比重が大きかったかを物語っている。
その当時の略式愛称は時代劇スターだけではない。今にも通じるコメディアンにもいた。
それが日本の喜劇王、榎本健一。つまりエノケンである。
バンツマやアラカンは、庶民からそうは呼ばれても、「バンツマの雄呂血」とか「アラカンのむっつり右門」などという冠のつく映画はなかった。
しかしエノケンには「エノケンのホームラン王」をはじめ「エノケンの天国と地獄」など何本もの“冠映画”がある。
時代劇と喜劇の違いはあるが、エノケンのほうがより親しまれた存在といえなくもない。
エノケンはまた、独特のダミ声と歌い方で「洒落男」「ベアトリ姉ちゃん」「モン・パパ」「エノケンのダイナ」など多くのレコードを出している。
エノケン同様、昭和の喜劇役者にシミキンこと清水金一がいる。シミキンも冠映画が何本かあり、口ぐせの「ハッターッソ」(張り倒すぞ)は流行語にも。
そして戦後の役者で忘れられないのが、「座頭市」、「悪名」、「兵隊やくざ」といくつもの“十八番”を持っていた勝新太郎。かれはカツシンと呼ばれた。
そういう古から現代を照射してみると、キムタクを除けば、いかに略式愛称のスケールが小さくなったことか。
ファンの方には申し訳ないが、カツシンとマツケンは比べられないし、エノケンとホリケンは比較にならない。
唯一光彩を放っているのがキムタク。しかし、彼はそう呼ばれるのがキライだとか。
そのキムタクのいるSMAPが歌う「らいおんハート」。
作曲のコモリタミノル(小森田実)はポプコン出身。シンガーソングライターから作曲家に。V6、KAT-TUN、VoAなどに楽曲を提供。スマップでは他に「shake」や「BANG! BANG! バカンス」なども。
作詞の野島伸司は「家なき子」「高校教師」などのTV脚本家。
「らいおんハート」とはもちろん、12世紀のイングランドの王、リチャード1世からの命名だろう。第3回十字軍遠征に参加し、生涯を戦いに費やしたリチャード1世は、その勇敢で強靱な精神力から獅子心王(LION HARTED)と呼ばれた。
ところでこの略式愛称、呼ばれる人間の共通点はないかと考えてみたが、決定的なものはない。しかし、「バンツマ」「カツシン」「キムタク」と例外も少なくないが、比較的コメディやお笑い系のタレントに多い。
もうひとつは名前に「ケン」がつくタレントが呼ばれやすい。
エノケンからはじまって、タムケン、ホリケン、マエケン、マツケン……。
しかし高倉健をタカケン、渡辺謙をワタケンとはいわない。あまりにもビッグネームなのでオソレオオイのかも。
ライオンキングじゃなくて、らいおんハート、でもなくてライオン違いということで。
語感がいい名前の人ってよく略されますよねー。私が知ってるのは大槻ケンヂ→オーケンみたいな。
実は私の本名はある女優さんと同じなんですが、彼女は略称がないので私も今後はないと思います…。
とても面白い記事でした!
by (2008-01-30 23:21)
アコさん、こんにちは。
なるほど、オーケン。やっぱり「ケン」の法則(なものない)ですね。
でも、土佐健一くんや、柴田謙治くんはイヤでしょうね、略されるのが。
アコさんの本名が某女優さんと一緒?
オモシロイな。いろいろ考えてみようかな。
女性はけっこう少ないですね。
by MOMO (2008-01-30 23:52)