その名は●裕ちゃん [the name]
♪ 砂山の 砂を 指で掘ってたら
まっかに 錆びた ジャックナイフが出てきたよ
どこのどいつが 埋めたか
胸に じんとくる 小島の秋だ
(「錆びたナイフ」詞:萩原四朗、曲:上原賢六、歌:石原裕次郎、昭和32年)
「ちゃん」シリーズ。でもないけど再び「ちゃん」。
酒場での会話。
「あんた、ゆうちゃんに似てるわね」
「そうかなあ……」
「よく言われるでしょう?」
「それほどでも。慎太郎刈りじゃないし、背も高くないし」
「えっ? 誰のつもりよ?」
「ゆうちゃんて、石原裕次郎でしょ?」
「違うわよ、伊藤雄之助よ」
30年前ならまだ笑えたけれど、今じゃ「伊藤雄之助って誰?」ならまだしも、「石原裕次郎って誰?」だものね。
もちろん裕ちゃんと呼ばれたのは日活のアクションスター・石原裕次郎。
昭和30年代、「ちゃん」づけで呼ばれた銀幕スターはこの石原裕次郎と東映の「錦ちゃん」こと中村錦之助(萬屋錦之介)。
どちらも一世を風靡したビッグスター。
強いて分けるなら、裕ちゃんは男に、錦ちゃんは女にモテた。
「ちゃん」はアイドルに対する尊称でもある。だからアイドルと呼ぶにはいささか抵抗のある同時代のビッグスター、三船敏郎は「トシちゃん」とは呼ばれなかったし、勝新太郎も「新ちゃん」とは言わない。
もうひとりあげるならば、歌手の坂本九こと「九ちゃん」。
さらに「ひばりちゃん」も、という声も。男のファンも「ひばりちゃん」と言ったのか。美空ひばりは微妙なところ。
昨日ふれた、「山ちゃん」「阿部ちゃん」と苗字で呼ぶ「ちゃん」とはいささか(というかかなりかも)ニュアンスが違う。
ビッグでありながらアイドル性も持ち合わせているという世代を越えた「ちゃん」。
その後、ほんとうにアイドル時代がやってきて、「トシちゃん」「ヨッちゃん」「セイコちゃん」「ミーちゃん」「ケイちゃん」「スーちゃん」「ランちゃん」「ミキちゃん」「モモエちゃん」とチャンチャンバラバラ……。
どうも小粒で、ピリリとこない。
日本映画が衰退していき、もう裕ちゃんも錦ちゃんも出てこないだろう、と思いきや、出てきました、第二の「キンちゃん」が。
そう昭和40年代、50年代のテレビを席巻したコメディアン・萩本欽一。これぞ「欽ちゃん」。坂上二郎とのコンビ「コント55号」でお笑いの一時代を築いた。
「欽ちゃん」はたんなるコメディアンではなく、テレビのバラエティ番組の構成、演出、あるいはプロデューサーとしてその才能を発揮。まさに「ちゃん」にふさわしいビッグ。
もうひとり50年代に輝きを放っていた(今も)「ちゃん」がいる。
「永ちゃん」こと矢沢永吉。
47年にRRバンド「キャロル」のベース兼ヴォーカルとしてデビュー。バンド解散、ソロになったのが50年。
マスメディアとは一線を画してコンサート中心の音楽活動で、その名を浸透させていった。
それは事実だが、ソロになってから3年目に出したシングル「時間よ止まれ」の存在が矢沢永吉のネームヴァリューを全国区に押し上げたことも事実。
もしこのビッグヒットがなければ、後年TVCMに出るほどの“ビッグ”になれたかどうか……。
「永ちゃん」については、自らも名乗る「ヤザワ」という呼称もあるわけで、世代を越えたビッグな「ちゃん」には疑問符をつけるむきもあるかもしれない。
しかし武道館での連呼は「永ちゃん!」だし、さほどファンでもない人間でも話題の中でついつい「永ちゃんはさあ……」などとのたまってしまうことがあったり。ということで「ちゃん」の称号はふさわしい。(ポールやミックがサーの称号をもらったのとは全然違うけど)
さて、平成の「ちゃん」は誰か。そもそもいるのか。
…………、いた! 「エビちゃん」だ!
「エビちゃんですよね?」ってコマーシャルでも言ってるし。
たしかにそうだけど、ちょっと……。だいちそれ苗字……。
錦ちゃんの代表作「遊侠一匹」のラストシーンを。ファンにはたまらない加藤泰のローアングルが。珍しいフランク永井の股旅ものがオマケ。“ちゃん”ばらの好きな人はどうぞ。
こんにちは。
「遊侠一匹」、良いですねぇ、泣けますねぇ。
「関の弥太っぺ」も好きです。
越路吹雪さんはコーちゃんと呼ばれていましたね。
by 都市色 (2008-02-02 13:22)
都市色さん、ありがとうございます。
長谷川伸の世界、まだ通用しますか。
そうでしたね、コーちゃん。もっと古ければ、高田浩吉もファンからコーちゃんって呼ばれてました。
なんだか、ロッキード事件にもそんな名前の人がいました。
by MOMO (2008-02-02 21:30)