『追いかけて』 [noisy life]
わたしの前に続く、どこか見慣れたまっすぐな道。
わたしはその道を避けて、裏道へ入ってみた。
泥濘のその道にはオートバイが走りすぎた後のような轍が続いていた。
わたしはその道を避けて、さらに横道へ入ってみた。
その路面はまるで乾ききった底なし沼のようにブヨブヨしていて、いまにも表面が裂け身体が沈んでいってしまいそうだった。しかし、おそるおそるわたしは沼底に引き込まれることもなく、安全な広場へ避難できた。
そして、やはりはじめのメインストリートへと出てきた。
すると誰かがわたしの目の前を全速力で駆け抜けていった。そのはるか、後方から数名の人影がばらばらに近づいてくる。
その先頭にいたジャージを着た中年男性がわたしに話しかけてきた。
中年男性は言った。
「あんたは、どうする？ 逃げてもいいよ。その代わり我々は追いかける」
「我々って？」
「セイガクさ。日大もいれば駒澤もいるし、青学だって、神奈川だっている……」
「もし逃げなかったら？」
「我々と一緒に来てもらう」
「…………」
わたしは中年男の後ろからゆっくりと近づいてくるヤツラを認めると、いきなり全速力で走りはじめた。人影もなくクルマも見あたらないアスファルトの道をひたすら走った。
道は少し登り坂になっている。なおも力一杯走り続けた。それでも気になって後ろをふり返るとヤツラが数人、やはり全速力で追いかけてきていた。
坂を登り切ると鉄橋だった。
その鉄橋をさらに登ろうとしたが、上へ行けばやがてすぐに行き止まりになる。あとは下へ落下するしかない。という考えが浮かんだ。
わたしは、鉄橋の橋桁を伝わって下へ降り始めた。その動作はまるで忍者が体操選手のように身軽ですばやかった。
そして、ものの数秒でしたの道路へと降り立った。しかし、道の彼方を見ると、やはり数人の追っ手が近づいてきていた。そのときわたしは「これは無理だ。逃げられない」と観念した。
わたしの想念が切り替わり「夢だったんだ……」という意識が少しずつ広がってきた。と同時に、昨晩付けっぱなしで眠ってしまったラジオから箱根駅伝の模様が聞こえてきた。
アナウンサーが「○○大学はあと４００ｍのところで歩いているという情報が入ってきています……」という声がはっきり聞こえた。
追いかけられる、追いつめられる、そんな夢は久しぶりだ。
刺激的な夢だった。昨日の夢は覚えていないので、これがわたしの２００８年・初夢ということになる。
大晦日から、昨日までたしかになぜか疲れ気味で、いきなり瞼が重たくなってしまうことが何度かあった。おかげで寝付きは良かったのだが。
何か強迫観念があるのか考えてみた。昨年末にやり残した仕事があって、正月明け早々忙しくなることはわかっている。しかし、それは毎度のことで、そのことが負担になっていたとも思えない。たしかなことは、ラジオの箱根駅伝が脳を刺激したということ。
夢判断にはさして興味がないのだが、“冷や汗もの”の夢のわりには目覚めはさほどわるくない。あの、鉄橋を滑るように降りきった“快感”がいまだに二つの腕に残っているせいかもしれない。
それにしても、あの見たことのない（きっとどこかで会っている）わたしに忠告をした中年男、いったい何者だったのだろうか。
「恋のフーガ」ザ・ピーナッツ……じゃない（詞：なかにし礼、曲：すぎやまこういち、編曲：宮川泰）
追いかけられる夢って、おめでたいんじゃなかったかなーと思っています。手が疲れていらしたのではないかしら。
駅伝、見るほうは好き勝手なこと言っていますが、走るほうは大変だろうな、と思います。
全然関係ないんですけど、私、中学の時陸上部でした。かめ陸上部員。
by にしにし (2008-01-10 17:56)
おめでたい夢なんですか。よかったなぁ。
ももははさんこんにちは。
もう通常ペースに戻れていますか。
わたしは、正月気分はとっくに抜けてますが、なぜか体調が……。年末年始の暴飲暴食がたたったのかも。
若い頃のようにはいかない、と反省しております。
意外なカミングアウト。そうですか陸上してましたか。長距離ですか？といっても中学なら１５００ｍでしょうが。
わたしも陸上大好きで、グラウンド、フィールドなんでも。世界陸上なんか織田さん以上に熱くなったりして。
「キターッ！」
なんて雄叫びはあげませんが。
by MOMO (2008-01-10 21:54)