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街▼神田神保町 [a landscape]

 

♪ 肩で風切る 学生さんに
  ジャズが音頭とる 神田 神田 神田
  屋並 屋並に 金文字かざり
  本にいはわせる 神田 神田 神田

(「神田小唄」詞:時雨音羽、曲:佐々紅華、歌:二村定一、昭和4年)


先日、用事があって神保町へ。
地下鉄を降り、神保町の交差点に出ると、平日だというのにかなりの人で混雑していた。
「古本市」の真っ最中。通常の古書店の前にずらっと露天が並んでいる。露天ばかりの一角もある。僥倖?
取り急ぎ用事を済ませて、靖国通りへ戻ってくると、もはや午後2時近く。
昼食を済ませてないことに気づき、共栄堂に飛び込んで腹にカレーを放り込む。

乱暴な食事を終えると2時を回っていた。秋の陽はつるべ落とし。タイムリミットは4時半。駿河台寄りはあきらめて、九段寄りの露天を見ることに。
結局4時まで、九段下方面への露天を2往復して8冊購入。ほしかったものは3冊で、あとの5冊は予想外というか、衝動買い。
シャツ1枚買うのに、迷って(いまだ自分の好みが分からない。好みなんかないのかも)ひと月以上かかるくせに、本はいらないものまで買ってしまう。

以前図書館で借り、今後、まず入手できないだろうとと思って、丸々1冊コピーしてしまった本があった。もちろん買ってしまった。あのコピーは棄てるべきか……。

もう一冊。中の三色刷りの挿絵がケバケバしく、昭和30年代を彷彿させる新書。値段は安い! が、奥付がない。わたしと同年代とおぼしき店主に問い質す。
オヤジさんページをめくりながら。

「えーと……、これはないですね。ホラ、ここんとこ破りとられたあとがありますよ」
「じゃあ、いつのものかなあ……、30年代かな?」
「いや、40年代でしょう」
「そうか。30年代のものだったらほしかったんだけど……」
「まあ、30年代かもしれないなあ。奥付がないから……。でも、奥付があれば倍の値段はするものね」
「そう、じゃあ買うよ」

馬鹿な客。

そもそもこの神田神保町という街。
世界的な古書店街だそうだ。古本屋さんが集まりだしたのは関東大震災以降というから、大正の後半。もちろん、それまでは学生の街として知られていた。官庁街に近く、明治の頃は地価も安かったので学校が集まった。昭和50年代、地価が高騰するとともにいくつかの大学や学部が郊外へ移転。いまは明治大学、日本大学が残っている。

さらに古に遡れば、この一帯は伊勢神宮へ奉納する田んぼ、つまり神田(しんでん)だったともいわれている。神保町の由来は、江戸元禄時代、幕臣であった神保氏の屋敷があったことにより、神保小路ができ、やがて神保町になったとか。

昭和4年に出版された「新版大東京案内」という本に、古本市のことが、
『神保町から早稲田、本郷、遠く郊外からも古本屋さんたちが続々と集まってくる。珍本奇書、紙魚の古くさい臭いに近代日本の尖鋭な臭いも交って、なかなかすさまじい現象を呈す』
と書かれている。

その昭和4年にヒットした流行歌が二村定一の歌う「神田小唄」
2番以下に今も残る“ニコライ堂”や“聖橋”が出てくる。また朴歯(ほうば)やエプロンさん(カフェの女給)など当時を忍ばせる言葉が出てくる。

時雨音羽、佐々紅華、二村定一のトリオで、この「神田小唄」の3カ月前に「君恋し」をヒットさせている。どちらも当時の軟派学生が好んだ歌だとか。

「神田」が出てくる歌で最もよく知られているのが「神田川」(かぐや姫)だが、これは神田界隈を歌ったものではない。

♪ 現(うつつ)に夢見る君よ 神田は想出の街 「東京ラプソディー」藤山一郎
♪ 君は浅草か あの子は神田のそだち 「夢淡き東京」藤山一郎
♪ 私のとなりのおじさんは 神田の生まれでチャキチャキ江戸っ子 「お祭りマンボ」美空ひばり
♪ 五つとせ いつも神田で叩き売り バイトする奴ァ 「大学かぞえうた」守屋浩
♪ なんだ神田の 無駄づかい 「恋の山手線」小林旭
♪ なんだ神田の 八百八町 「銭形平次」舟木一夫

どれもこれも古い歌ばかり。全部口ずさめちゃう。年の功。エバることはない。古い歌に古い本、古色蒼然とした街にバランスはとれているのかも。

久しぶりの神田古書店街だった。古本市だった。
古本散策者の7割は中高年者(わたしも)。それもほとんどがひとり。複数でいるのはほとんど若者。ギャルもいた。
やはりこの街は古本オタクというか、活字ジャンキーであふれている。

学生風の男2人連れで、片方が連れに声高で蘊蓄を語り続けている。それがなかなか傾聴に値する内容。ただ、その滑舌のわるさたるや。
まあ、カンダ、カンダ、カンダということで。


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MOMO

deacon_blueさん、いつもありがとうございます。
by MOMO (2007-11-05 21:56) 

MOMO

takagakiさん、いつもありがとうございます。
by MOMO (2007-11-06 22:13) 

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