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『そんなの関係ねえ』 [noisy life]

 

♪ 上目づかいに盗んで見ている 青いあなたの視線が眩しいわ
  思わせぶりにくちびる鳴らし きっかけぐらいはこっちで作ってあげる
  いわゆるふつうの17歳だわ 女の子のこと知らなさすぎるのあなた
  早熟なのはしかたないけど 似たようなこと誰でもしているのよ
  じれったいじれったい いくつに見えても わたし誰でも
  じれったいじれったい わたしはわたしよ 関係ないわ
  特別じゃない どこにもいるわ わたし少女A
  …………
(「少女A」詞:売野雅勇、曲:芹澤廣明、歌:中森明菜、昭和52年)

小島よしお
これから寒くなるから大変だ。ギャグまで寒くならないでね、と。

「そんなの関係ねえ」、「オッパッピー」and「ウェー」の3点セットは今のところ今年度最高のヒットギャグではないでしょうか。秋風とともに、そろそろという気もしますが。
「そんなの関係ねえ」の前のネタがあまりシャープじゃないけど。
それと損してるな。あの鉄板ギャグ。体力使うし、自分でもギャグにしているように腰を痛めそう。

現在では大人から子供までが簡便に使う「関係ねえ」「関係ない」という言葉、改めて考えてみると日本語としては変。「関係する」、「関係しない」あるいは「関係はない」というのがもともとの使い方。『名詞+ない』はイレギュラー。
たとえば、「関係」を「干渉」に置き換えると、「干渉しない」とは言っても「干渉ない」とはいわない。

じつはこの「関係ない」そんなに古いものではないのです。昭和30年代に生まれた言葉。
いまの言葉でいえば、「半端ない」が同じような端折られかたをしています。つまり、「関係ない」、かつては若者言葉だったのです。

では、誰が言い出したのか。
流行語に関する本を読むと、昭和36、7年、ハナ肇とクレージー・キャッツのメンバー(植木等谷啓だろう)によって使われはじめ、世間に広まったと。そのころ、坂本九が使い始めたという話も聞いたことが。

いずれにしろ、高度経済成長期の日本、オリンピックを数年後に控えた社会でこの「関係ない」は生まれるべくして発生したのです。

そもそも、「関係ない」という言葉の意味は、文字どおり2つの物や事柄に関連性がない、すなわち“無関係”ということ。もちろん、「僕はその事件とは関係ないですよ」というように、本来の意味どおりに使われることもありますが、たとえば、
「お前は甘やかされて育ってきたからな」
「関係ないよ」
というように、「違うよ」「そうじゃないよ」という否定の意味で使われることもある。いまとなっては、むしろこちらのほうが多いかもしれない。

いずれにしても、かなり強い“拒否”“否定”の言葉。
家でいえば、ドアを閉ざすどころか、鍵を掛けてシャッターまで下ろしてしまうという言動。つまり、それは外からの強いプレッシャーに対する同等の反応とも。
それだけ社会の中でわれわれは、望まないしがらみに囚われているのでしょう。

「関係ない」が“発生”した昭和30年代後半はまさに、社会のプレスがキツクなりはじめた時期。それは高度経済成長の裏面。
週休二日もなく、過労死などという言葉もなく、われわれのお父さんたちはひたすら働いていました。家に帰れば女房子供の不平不満や要望に耳を傾け、実行しなければなりませんでした。つまりお父さんは頑張っていたのです。

そのストレスたるや相当なものだったでしょう。
「会社? そんなもの関係ねえよ!」
「親戚づきあいだ? 近所づきあいだ? そんなもの関係ねえよ!」
「子供の勉強を見てくれ? そんなもの関係ねえよ!」

きっと、一度でいいからそう言ってみたかったんでしょうね(いまでも言いたいもの)。でも、実際にそんなこと言ったら“破滅”。そこはじっと“我慢の子”で。

そして植木等やクレージー・キャッツの発する「関係ない」や、無責任な行動に少しだけ溜飲を下げていたのでしょう。

それから10年あまりのち、1ドル360円の相場が崩れ、日本経済が国際社会の中に取り込まれていった翌年、「あっしには関わりのないことで……」という言葉が流行りました。

これは笹沢佐保の時代小説『木枯し紋次郎』の中で主人公の渡世人・紋次郎の常套句。テレビドラマ化され大人気に。主題歌の「誰かが風の中で」(上条恒彦)もヒット。

この流行語もやはり、「関係ない」と同じ、しがらみを断ち切る意思表示の言葉。
実際の紋次郎は、そうした非情のセリフをいいつつ、揉め事に関わってしまうのでしたが。
やはり、「関係ねえ」と叫びたくなるような時代だったのでしょうか。

そう考えると、小島よしおの「そんなの関係ねえ」に共感するということは、相当プレスの強い社会になっているということかも。
植木等や紋次郎と少し異なるのは、若い人から共感しだした、ということ。たしかに若者のストレスたるや、植木等の“ニッポン無責任時代”とは比較にならないほど大きいかも。

またまた、下手の長文になってしまいました。
それでは、「関係ねえ」と言ってくれちゃっている流行り歌を。

代表的なのは上にのせた中森明菜の「少女A」。彼女のデビュー曲で“反社会的キャラ”を定着させた1曲でした。

2曲で吼えているのがパンク小僧、ブルーハーツ
♪ 大人も子供も関係ないよ 左も右も関係ないだろ? 「爆弾が落っこちる時」
♪ ステップなんて関係ないんだ デタラメでいいよ 「ダンス・ナンバー」

実は「関係ない」で見つけられたのはこれだけ。“反逆のメロディー”は意外と少ない。「関係」では、

♪ 社会の常識・親戚関係 心配されるほど意地になる 「夏が来る」大黒摩季

♪ 入り組んでいる関係の中で いつも帳尻合わせるけど 「innocent world」Mr.Children

♪ 何もかも関係なくなればいいと 思うことがある 「大阪へやって来た」友部正人

♪ 人間関係どこでもギィスギス 言った言わない…… 「人間関係ギィスギス」ぢ・ヂーザス

またタイトルに「関係」がつく歌は、
腕のふり付けが受けた「他人の関係」金井克子
いつも他の女のところへ帰っていくアイツとアタシって何なの? と自問する「長い関係のブルース」浅川マキ
お互いの愛を信じられない二人を歌った「ふたりの関係」ヒデとロザンナ
そのほか「男女関係」やしきたかじん、「危険な関係」キャンディーズなど。

「関係ない」と思いつつ、言いつつ、生きるために関係を保っていかなくてはならないこと。我が身に照らしてもつらいことではあります。
「高齢化社会! 関係ねえ!」「少子化! 関係ねえ!」「格差社会! 関係ねえ!」
そう叫びたいよね。
叫んだところで……そんなの関係ねえか。


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コメント 6

ウェー

失礼しました。

このギャグが流行ってから周りでは会話の中で「そんなの…」と口にした瞬間なぜかハッとするようになりました。それくらい何の疑問も無しに使われてる言葉になってるんですねー。そういう意味ではよしおはすごいかもしれない(笑)
私も文法上のことまでは気にしてませんでした。
by (2007-11-01 01:39) 

pafu

重く考えるべきことならいいんですが、
軽く考えちゃえばいいことまで重く受け止めて
苦しんでいる子が、
子供や若者に増えてきたように思います。
「関係無いんだよ。大丈夫だよ。」と言ってあげたいですね。

関係無いように見えて、実はみんなに考えて欲しいこともあるので、
それが難しいですね。
by pafu (2007-11-02 04:50) 

MOMO

アコさん、こんにちは。音楽生活、バイト生活、学園生活(順不同)と、いまがいちばん楽しいのではないですか?

それにしても、ほんとによく使いますね「関係ない」。大人も子供も。
流行語大賞の“ロングセラー”賞もあげたいぐらいですね。
by MOMO (2007-11-02 21:33) 

MOMO

pafuさん、ごぶさたです。
なるほど。そうですね、多くの若者は不安なんですよね。私もそうでしたし。先輩として、見ておれず手をさしのべたくなることもあります。それは自然。それに対して「関係ねえだろ」と拒否する若者。それも自然。

結局は見よう見まね(実際は先輩の長短を見ている)で生きていくしかないのでしょうね。この繰り返しのように思います。それにしても支えになるのは家族の場合もありますが、やはり友達ではないでしょうか。
by MOMO (2007-11-02 21:34) 

MOMO

deacon_blueさん、いつもどうもです。
by MOMO (2007-11-02 21:34) 

MOMO

simaさん、nice!ありがとうございます。
by MOMO (2007-11-05 21:55) 

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