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『クシコス・ポスト』 [noisy life]

眠りの綻びからしみ込むように軽快な音楽が耳から脳へ。

近所の小学校で運動会の練習をしているようです。
小学校の運動会の思い出。徒競走は速からず、早からずでまあ3等賞が定位置。で、いま思うと不思議なのが、あの“はだし足袋”ってヤツ。
徒競走用に履いた白い足袋。底が少し厚くなっておりました。なんであんなものを……。

考えれば、当時はスニーカーやスポーツシューズなんて気のきいたものはなし。かといって普段の運動靴とは名ばかりで、誰もがあわよくば2、3年履けるようにと2サイズばかり大きなものを。そんなので激走しようものなら、靴は空を舞い、見物席か貴賓席かってなもん。で、やむなく誰もがシューレスジョーに。これがまた痛いんだ。小砂利がいっぱいで。いまみたいにナンツーカ、アンツーカーなんてものはない。

そこで経済的に余裕のある者はかの“はだし足袋”を購入して実戦に備えるということに。
まあ、貧乏人のわたしも買った記憶があるのでそんなに高価なものではなかったのかも。
日本の経済成長が下々までいきわたり、貧乏が底上げされ、多くの子供がフィットした運動靴を履くようになる頃、はだし足袋も消えていきました。

こんな話をするのではなかったっけ。

そうです、安眠を妨害してくれたあの音楽。運動会には欠かせない「クシコス・ポスト」。当時は邦題を「クシコスの郵便馬車」といったが、現在はただの「郵便馬車」
なんでも、“クシコス”は地名ではなく、馬車の意だとか。で、「クシコスの郵便馬車」では“馬車の郵便馬車”になってしまうので、「郵便馬車」に訂正したとか。そりゃ、そうです。

それにしても我々の時代から半世紀近くが経とうとしているのに、「クシコス・ポスト」はいまだ“現役”。季節、行事限定とはいえ、これほど長く親しまれている曲は、そう多くないです。

「クシコス・ポスト」は17世紀から18世紀にかけてのドイツの作曲家、ヘルマン・ネッケの作品で、もともとは運動会で聴くオーケストラ編成ではなく、ピアノ曲だったとか。とはいえ、誰が始めたのか、あのリズミカルで躍動的な音楽は運動会、とりわけ徒競走のBGMとして合いすぎてます。

そうしてみると「クラシックなんてお上品すぎて」などと言っていた、われら貧乏人の洟垂れ小僧どもだって、あの当時、様々な機会にクラシックと接していたのですね。流行歌が下品で、子供にとって有害だと思われていた時代、むしろクラシックのほうが童謡や唱歌とともに“押しつけ”教育で耳の中に落ち込んでいたのかも。とりわけ、その場となったのが学校でした。

たとえば、運動会にしたってオープニングからエンディングまで「クシコス・ポスト」ばかり流れていたわけではありません。
ほかでは、勇壮な曲調で行進にはうってつけで、昔、ラジオやテレビのスポーツ・ニュース、あるいはプロ野球放送の冒頭に流れていた「ラデツキー行進曲」(ヨハン・シュトラウス)。そのほか、やはり行進曲の「アメリカン・パトロール」(フランク・ミーチャム)、あるいはオッフェン・バックの「天国と地獄」、ロッシーニ「ウィリアムテル序曲」なども使われていましたっけ。

クライマックスの高学年によるリレー競技の選手入場には、「ラデツキー行進曲」がよく合ってましたし、父兄参加の“借り物競走”などは「天国と地獄」がピッタリ。

小学校ではあまり聴いた覚えはないのですが、中学校、高校では最後の表彰式になるとあの厳かな音楽が響き渡ったもの。そうです、あの高校野球の表彰式にも使われている、胸がジーンときて目頭が熱くなるミージック。

あれはバロック音楽で知られるヘンデルの「見よ、勇者は帰りぬ」。これは単独の曲ではなく「マカベウスのユダ」というオラトリオ(聖譚曲)の中の合唱曲。
これまた、いまとなっては選曲者に拍手もの。

その他、運動会につきものの音といえば、まず開催を告げる朝の花火。小雨のちらつく日などは実行か中止かでやきもきしたもの。中止になったときのあの落胆ぶりったら。

そして、あの競技スタートを告げるピストル。野蛮だとか物騒だとかウルサいというひともいるけど、あれがホイッスルでやられた日にゃあ、力も抜けまする。やっぱり“パーン”と一発ケイキよくいかなきゃ。そして、そのあと起こる生徒たちの大歓声ね。This is 運動会。

一等賞だったヤツも、ビリのヤツも。赤が勝っても白が勝っても。不思議なことに日が変わって通常通りに登校すると、教室の中はもうあれだけ興奮したはずの運動会の話題のひとかけらもなかったり。
まあ、振り替え休日が間にはさまったということもあるのでしょうが、勝者も敗者もすべて終わったこと。その潔さは運動会ならではのものなのか、それともそれが子供たちの生活スタイルだったのでしょうか。

運動が苦手で、運動会が苦痛だった人もいるでしょうが、ああした経験、体感があればこそ、われわれは世界の運動会、オリンピックに一喜一憂できるんでしょうね。


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MOMO

deacon_blueさん、nice!をどうもです。
by MOMO (2007-10-15 21:32) 

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