SSブログ

●川④神田川 [a landscape]

♪ あなたはもう 捨てたのかしら
  二十四色の クレパス買って
  あなたが描いた わたしの似顔絵
  巧く描いてねって言ったのに
  いつもちっとも 似てないの
  窓の下には神田川 
  …………
(「神田川」詞:喜多条忠、曲:南こうせつ、歌:かぐや姫、昭和48年)

東京の川といえば、古くからの隅田川、千葉と接する江戸川、山梨県と長野県の境に源をもつ荒川、神奈川とを区切る多摩川が知られているが、そのほかにもいくつかの川が流れている。

なかでも、その知名度が全国区というのが「神田川」。
上にのせたフォークソングのおかげで、東京で最も有名な川になってしまった。

神田川はその源を三鷹市の井の頭池に発する。
そこから、高井戸、東中野、高田馬場、飯田橋、水道橋、浅草橋を経て隅田川に注ぐ。

以前はその上流を神田上水、飯田橋あたりまでの中流を江戸川、それ以降を神田川と呼んだ。それが昭和40年の河川法改正で、すべての流れを神田川と呼ぶことになった。
したがって中央線の御茶ノ水駅付近に見える川も総武線の浅草橋付近で見える川も神田川である。

ヒット曲「神田川」はまさにその当時のキャッチフレーズ“4畳半フォーク”の代表的な歌。当初LP「かぐや姫さあど」の中の1曲として世に出た。ところが、「神田川」のリクエストが際だって多くなり、その2カ月後にシングルカットされたといういきさつがある。その後、爆発的なヒットとなり、売り上げは160万枚に達したとか。

作詞家の喜多条忠は当時放送作家で、ラジオの番組を通じて南こうせつと懇意になった。そしてはじめてかぐや姫のために書いた詞が昭和47年の「マキシーのために」
喜多条は早稲田大学出身で、神田川を見ながらキャンパスに通った。学生時代のアパートは4畳半で、♪小さな石けん かたかた鳴った というのも実話だそうだ。学園を離れて数年、そのほろ苦い思い出を綴ったのが「神田川」。
今は亡き日本クラシック界の重鎮が当時絶賛していたのを何かで読んだことがある。

60年代後半からはじまった日本のフォークソング、つまり和製フォークは政治の季節と相俟って、反体制ソング、プロテストソングがその勢いを増していく。
ところが、69年(昭和44年)の東大安田講堂落城以降、学生運動の勢いがそがれ、反体制フォークに対する翳りが見えはじめる。
そして「神田川」が発表される前年に起こった連合赤軍によるリンチ殺人、および浅間山荘事件によって“その種の歌”は人心から完全に離れていくことになる。

うがった見方をすれば、「神田川」は、そうした反体制フォークにとどめを刺したラブソングといえる。
「天下国家を歌うよりは、自分の愛する人のことを歌おう」
こうした思いは、当時の多くの青年の共感するところとなった。「同棲時代」という言葉が流行したのも、ちょうどその頃ではなかったか。

しかし、その4畳半フォークもそれから数年も経ずして「暗い」「ダサイ」歌となり、ファッショナブルでなんとなくクリスタルなニューミュージックに取って代わられていく。これは流行歌が社会の後を追っていく以上仕方のないことなのだろう。

しかし、それから30数年、いまだこの歌に心揺さぶられる団塊の世代は少なくないと聞く。彼らにとって貧しい中での喜びと悲しみ、希望と不安。すなわち最も鮮明に青春を回顧させてくれる歌なのかもしれない。物質的な貧困が「青春」の定義のひとつだった世代の話だ。

新宿区の大久保付近を流れる神田川。名曲「神田川」の碑がそのあたりにかかる末広橋のたもとにある。


nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 2

deacon_blue

☆ ある意味「神田川」と「傘がない」は,そうした時代に背を向けさせ,「いちご白書をもう一度」が追憶の彼方に放りやってしまった感があります。10年くらい前,まだYahoo!掲示板くらいしかなかった頃,「いちご白書をもう一度」を猛然と攻撃する人に吃驚(ビックリ)したことがあります。なぜこの人はこんなに敵意を燃やすのだろうと。。。

☆ 今は上に書いたような感じで勝手に理解しています。駄文失礼しました。

PS.ところで,写真に写っているのは聖橋ですね。さだまさしの「檸檬」を思い出しました(あとあれだ田原俊彦^o^/)。ではでは。
by deacon_blue (2007-09-25 22:22) 

MOMO

「いちご白書~」を攻撃する人、「そこまでするか」という思いはありますが、その気持ち、まるでわからないでもありません。
反体制フォークというより、和製フォークにとって荒井由実が天敵でしたからね。作・ユーミンでなければ、それほど嫌われたかどうか。逆に言えば彼女にそれほどのパワーがあったということでしょうね。

おっしゃるとおり聖橋です。お茶の水橋から撮りました。
田原俊彦は知りませんが、「檸檬」は映画のワンシーンみたいないい歌ですね。ああゆう破滅的な女も魅力的ですし。
by MOMO (2007-09-27 22:07) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。