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『秋へフライング』 [noisy life]


♪ 今はもう秋誰もいない海
  知らん顔して
  人がゆきすぎても
  わたしは忘れない
  海に約束したから
  つらくてもつらくても
  死にはしないと
(「誰もいない海」詞:山口洋子、曲:内藤法美、歌:越路吹雪他)

仕事の真っ最中にパソコンがクラッシュ。
どうやら要リカバリー。そ、そ、そんな。

プリントできない、メールができない、仕事ができない(これだけは昔からだが)。
夕方終わる仕事が翌朝までかかってどうにかこうにか。わかっちゃいたけど、なんとかなるものです、仕事なんて。まあ、パソコン借りにいったり、メールを送らせてもらいにいったり、あちこち駆け回ったり、必要なソフトを入れ直したり、設定をしたり、互換性がなかったり、辞書がないだけでも小さなストレス。この電脳箱の煩わしさを再認識。

「そんなもん、やめちまいなよ。仕事だって昔のように手動でやれないことはないだろ。これがパソコン生活と決別する絶好のチャンスだぜ。ええ? そう思わないかい?」
なんて悪魔だか、天使だかの囁きが。

たしかに、パソコンのない世界っていうのは、想像しただけでも愉快だ。しかし、それはあくまで想像の世界。極端なことをいえば、パソコンの消えた世界というのは、電気・ガス・水道といったライフラインのない世界と同じこと。そんなところまでパソコンは来てしまっている。いざとなったら窓から放り投げる覚悟はできてるけど、まだ“いざ”じゃないので……。

そんなわけで、パソコンは“病院送り”。
ようやく仕事も峠を越し、借りたパソコンでインターネットも繋がった。接続したところで、忘れられてしまう前にブログを書こうと。

で、本題は何を書こうかと考えたが、わたしの頭もクラッシュ間近なのか、思いつかない。しかたなく、題材を選ぼうと歌謡曲の歌本を一発開きしてみた。322、323ページ、右ページが「誰もいない海」、左ページが「翼をください」ともに昭和45年の歌。年度順の歌本だからあたりまえだけど。

うーん。どちらも嫌いな歌じゃないけど、キーを叩く意欲をわかせてくれない。そこで初心を曲げて今度はフォーク、ポップスの歌本を手にし、再びの一発開き。
208、209ページ。208ページは「知床旅情」だったが、209はなんとふたたび「誰もいない海」の大当たり。
そうかい、わかったよ。どうしても季節先取りの♪今はもう秋…… ってことにしたいんだ。

とにかく、この歌の画期的なところは、失恋した女性が、そのとき海や砂や空に「死にませんからね」って約束すること。こういう発想は歌謡曲ではあまり出てこない。
歌謡曲だと、「死んでしまいたい」とか「たとえ死んでも」とか、実際には死にはしないのに、なんとか死という“悲劇”に己を近づけて相手の共感を得ようという魂胆。

しかし「誰もいない海」では「そりゃあ、失恋は辛くて悲しいわよ。でも死ぬこととは違う」という自立した女のストレートな本音が聞こえてくる。

作詞は山口洋子。同一人物だと思っている人が意外と多いが、あの役者から銀座のママへ、そして作詞家へ、作家へと転身した山口洋子ではない。「一緒にしないでよ」ってどっちのセリフ?
現代詩を書く同姓同名の詩人・山口洋子だそうである。あちらの(どちらの?)山口洋子が秘蔵っ子の五木ひろしに「よこはまたそがれ」を書くのは翌、昭和46年のこと。

作曲は内藤法美。ピアニストでもあり、たしか「イカルスの星」も彼の作品だったと思う(資料は家出しているパソ子が持ってるので……悲し)。
越路吹雪のご主人で、コーちゃんこと越路吹雪は「誰もいない海」も「イカルスの星」も歌っている。おもしろいことはこの2つの曲、妻だけに独占させずに、競作としていること。寛大な夫、いや音楽家?

わたしが開いた歌本では2冊とも、歌手はトワ・エ・モアになっていた。たしかにトワ・エ・モアでヒットした記憶がある。しかし、いちばんはじめにレコードに吹き込んだのは越路吹雪、ではなくシャンソン歌手の大木康子だとか。

ほかにも当時レコード化した歌手がいたはずだが、思い浮かばない。しかし、上の3人の「誰もいない海」は聴いている。で、やっぱり歌詞の雰囲気から大木康子がいちばん合っているように思う。当時も今も。トワ・エ・モアは少し“お子様”だし、越路吹雪は男がなくては生きては行けないという雰囲気で、この歌のイメージからはずれている。
大木康子は美貌のシンガーで、シャンソンというジャンルからか、デビュー当時からアダルトで自立した雰囲気があった。

引退したとばかり思っていたら、何年か前、テレビに出ていた。体調でもくずしたのか、かなり痩せてしまっていて痛々しかった。その時は「誰もいない海」は歌わず、シャンソンの「セ・フィニ」を歌っていたが、その歌声は健在だった。

ところで上にのせた「誰もいない海」って、どこの海だろう。彼女は何者で、どこから来たのだろう。
わたしが思うに、九十九里は白里あたりで、彼女は……ってやめましょう。他人のイメージを踏みにじるのは。


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deacon_blue

☆ 山口洋子のウィキに必ず書いてある事項ですね。同姓同名同字別人。銀座系山口(^^;)にチェック入れていたのですが,たぶん両方とも。
by deacon_blue (2007-09-14 00:48) 

最初フレーズで「17才」と勘違いしてました。そういうタイトルの歌だったんですね。

私もたまにPCのない世界に逃げたくなります。スゴイ便利だけど逆にそれに生活とか心が蝕まれているという感じが嫌で・・・。

まだ「いざ」って時ではないという言葉に共感しました。
by (2007-09-14 17:34) 

MOMO

deacon_blueさん、いつもありがとうございます。
銀座系の山口洋子さん、初ヒットの「よこはまたそがれ」で盗作騒動になりましたが、いい詞も書いてますよね。裕次郎の「ブランデーグラス」なんてすきですねぇ。
by MOMO (2007-09-14 23:10) 

MOMO

アコさん、お久しぶり。いつも見てますよ。
まだ夏休みですか。
なるほどねぇ。のっけから♪誰もいない海…… の「17才」。
「誰もいないって、彼氏がいるじゃん」
ってツッコミたくなりますが、そこは17歳、2人以外はってことですよね。まだ孤独のなんたるかが分かっていない。いえ、いいんですよ。17歳だもの。

そうですよね。あんなマシンにあたふたさせられる(恥ずかしい)なんて、人間として悲すぃー。でも、若い人でもそんなこと思う人がいるんですね。
by MOMO (2007-09-14 23:12) 

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