『花火』

 

♪　はじけた花火にあおられて
　　恋する気分が燃えてくる
　　真夏の一日カーニバル
　　しゃれて過ごしていいじゃない
　　ああ蝶になる　ああ花になる
　　恋した夜はあなたしだいなの
　　ああ今夜だけ　ああ今夜だけ
　　もう　どうにもとまらない
（「どうにもとまらない」詞：阿久悠、曲：都倉俊一、歌：山本リンダ、昭和４７年）

花火のシーズンです。ドンとなった花火がパッと咲いてキレイだな。
東京では大きな川という川の河原で花火大会が行われます。多摩川、荒川、江戸川……。そして本家本元の両国（隅田川）。いくつかはもう終わりましたが、両国は明日でしょうか。

もちろん隅田川の花火は江戸時代にはありました。といっても、それほど昔には遡りません。とにかく鉄砲伝来より後のことは間違いなし。

隅田川で大がかりな花火が打ち上げられ、それを庶民が楽しみはじめたのは享保の頃といいますから１８世紀前半。当時は５月から夏にかけての４カ月間が“川開き”といい、現在のように１回こっきりではなく、何度か花火を打ち上げたそうです。
春は花見、夏は花火。これが江戸っ子の楽しみ。
昭和４０年代だったか、いちじ隅田川の花火が中止になっていた時期があります。しかし、川が少しきれいになった５０年代に復活しました。そのころから、隅田川以外でもあちこちで花火大会が開かれるようになったのではないでしょうか。

花火大会というと夏の風物詩のように思いますが、一年中どこかしらでやっているそうです。熱海では真冬にやるそうです。わたしの知り合いに“花火ハンター”がいますが、彼はカメラとテント持参で、そうした全国各地の花火を追いかけていくのだそうです。そういうハンターがかなりの数いるのだとか。

「花火」というタイトルの歌は、わたしが知っているだけでも唱歌をふくめ、チューブ、研ナオコ、ａｉｋｏと４曲あります。ほかにもかなりありそうで、いったいどれだけあるのか。
山本リンダの「どうにもとまらない」に出てくる花火は、これはもうスターマインというか洋もの。「たまや～、かぎや～」の和の世界ではありません。同じように、
♪花火は舞い上がり　スコールみたいに降りそそぐ「真夏の夜の夢」（松任谷由実）
♪空に割れて飛ぶ花火　サンバのリズムが……「ミ・アモーレ」（中森明菜）
という２曲もどちらかというと洋風。まあ、空で光る分には洋でも和でもかまいません。

先日放送していた映画「太陽がいっぱい」でも、ラスト間際に花火が上がってました。しかし、これは運動会の花火のようで、空が明るい分味も素っ気もない。同じ映画で花火のシーンが印象的だったのはアンジェ・ワイダ監督の「灰とダイヤモンド」。

終戦間際のポーランドで、覇権争いに巻き込まれた若者が党の地区委員長を暗殺するシーン。拳銃で撃ち抜いた委員長が若者の腕の中に倒れ込む。そのときドーンという音がして、道にできた水溜まりにきれいな花火が映るというシーン。モノトーンの映画なのに花火の美しさが際立っていました。

小説でいうなら中川与一の「天の夕顔」。

二十歳をすぎたばかりの青年が７歳年上の女性に恋をする。しかし、ふたりは結ばれることなく、彼は２０年以上も待ち続けたあげく、彼女を病気で失ってしまう。
中年になったかつての青年が、旅先の宿の一室から夜空を眺めている。今日は花火大会。
空にパッと咲いて散っていく花火。そのとき、男に昔の想い出が甦る。若い頃、彼女と２人で散歩をした夕暮れ、ふと彼女が白い指で夕顔の花を摘んだ。そのときの白く滲んだ指と夕顔の花を思い出したのだった。
ふたたび、夜空に花が咲き、そして消えた。その瞬間、彼は「ああ、いま、天の国であの人が、花を摘み取ったのだな……」と思うのだった。

というのが、わたしが若い頃読んで感動した「天の夕顔」。ところが、改めて読み直してみたら、ラストがちょっと、というかかなり違うのです。もっと現実的なのです。なんでこんなにねじ曲げて記憶してしまったのか……。自分の記憶のいい加減さに笑えてきました。ただ、この小説の大意は同じだと思っているのですが。

子供の頃は、橋に人が鈴なりになるのもいとわずに見物にいったものでした。あのヴァイタリティやいまいずこ。川沿いの料亭や屋形船で、なんて風流人でもないし。まあ、近所の盆踊りをひやかしがてら、西の空でも仰いでみましょうか。

コメント 2

☆ こんばんは。今日（7/28）午後7時のニュースの終わりに隅田川花火大会の映像が流れていました(^o^)。
by deacon_blue (2007-07-28 19:48) 

テレビでも花火の中継をやっていたようですね。
大画面なら違うのかも知れませんが、花火こそやっぱり生でしょうね。
by MOMO (2007-07-30 21:48)