夏の歌⑤南国の夜 [noisy life]
♪ 月は輝く 南の
はるかなる 夢の国よ
星はきらめき そよ風
ささやく 椰子の木陰に
うるわしの星よ 永久(とわ)に
輝けよ 君が胸に
喜びつきぬ 常夏の
君知るや 南の夜
(「南国の夜」詞:駿河あきら、曲:AUGASTAN LARA、歌:大橋節夫とハニー・アイランダース、昭和36年)
やはり夏はビール。ビールはビヤホール。つまみは枝豆にヤキトリ。そして欠かせないのはハワイアンのBGM。生バンドなら最高。あの“ピヨ~ン”というスチールギターが聞こえてきただけで、夕やみにつつまれたビルの屋上は常夏の国の浜辺にいる気分。
そんなハワイアンでリクエストの多い曲のひとつが「南国の夜」。
大橋節夫とハニー・アイランダースをはじめ、和田弘とマヒナスターズ、バッキー白片とアロハ・ハワイアンズ、山口銀次とルアナ・ハワイアンズ、ポス宮崎とコニー・アイランダース、大塚達夫とパーム・セレナーデなど、ほとんどのハワイアンバンドがそのレパートリーに加えていました。
また、シンガーではエセル中田、南かほる、日野てる子のハワイアンシンガーばかりでなく、石原裕次郎、水原弘、西田佐知子といった面々もレコードに吹き込んでいます。
そんなハワイアンの人気ナンバー「南国の夜」ですが、実は“本物”のハワイアンではないのです。これがなんとラテンミュージック。
作曲はアウグスチン・ララAUGASTAN LARA というメキシコ人で、原曲は[NOCHE DE VERACRUZ](ヴェラクルスの夜)。1938年のパラマウント映画「セニョリータ」TROPIC HOLIDAY で主演のドロシー・ラムーアが英語で歌い、知られるようになったとある本に書いてありました。それがどうしてハワイアンになってしまったんでしょう。いまでもメキシコやキューバではうたわれているようですが。
いわれてみれば、ハワイアンであまりマイナーチューンの曲というのは聞きません。それでも「南国の夜」といえば、あのスチールギターの奏でる切ないメロディーを思い浮かべてしまうのですが。マイナーの曲といえば、和製ハワイアン「倖せはここに」も。
♪秋の夜は更けて すだく虫の音に……
という出だしです。このハワイアンを作詞作曲したのが大橋節夫。
大橋節夫は大正14年生まれ。昭和16年、わずか16歳でスチールギターを手に入れ、ハワイアンバンドを組んだというから筋金入り。慶大に入り、学徒出陣の前に自主レコードを制作していったというのも凄いエピソード。終戦後復員し、翌年には再びハワイアンバンドをつくり、48年にハニー・アイランダースを結成。
最上級ランクのバンドとして進駐軍で演奏をするとともに、日本のハワイアンブームの火付け役に。大橋節夫の特筆すべきところは、自分たちの音楽をハワイアンだけに限定しなかったこと。ジャズやラテンもこなし、シンガーソングライターとして、オリジナルも作りました。それが上記の「倖せはここに」であり「赤いレイ」、「グッバイ・ホノルル」などなど。
平成になってから、旧友でありバンド仲間だったジャズ・シンガーの笈田敏夫と、お互いのニックネームを冠した「ゲソとオッパチ コンサート」で健在ぶりを示していましたが、15年にゲソこと笈田敏夫が亡くなり、大橋節夫も昨年の6月に逝去。享年81歳。
これでまた戦後ポップスの草分けがいなくなってしまいました。仕方ないですね。
そういえば近所に、先生の趣味でBGMにハワイアンを流す歯科医院がありまして、歯医者だけに“歯はいい”なんてダジャレではないのですが、とにかく最新のハワイアンが聴けるのです。考えてみれば、歯医者にハワイアンはあってます。治療台に乗ってもなんとなくやさしくホジクッてくれそうな気がしますから。あと、クラシックもいいかも。ダメなのはロック。カントリーもだめだな。必要以上に削られそうで。
でもいちど、ハイウェイ・スターかなんかで治療を受けてみたいね、ってマゾだよ。
☆ デンタル・クリニックのBGMがルー・リードの『メタル・マシーン・ミュージック』だったら,三日もたないでしょうな。それでホントに医院かい(喜久蔵師匠コース^^;)。。。
by deacon_blue (2007-07-10 22:19)
うーん。座布団5枚半!
by MOMO (2007-07-10 22:24)