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[春の匂い・菜の花] [ozolagnia]

♪ 青い空白い雲 菜の花の小道を
  駆けまわり蝶々とり 遊んだ故郷
  真っ白な霧の中 神社の石段を
  駆け上がり手を合わせ 泣いていた小さな子
  ……
  帰ろうかあの家へ 帰ろうかあの家へ
  帰ろうか あの家はもうないのに
(「望郷」詞、曲、歌・山崎ハコ、昭和50年)

今日が花見のピーク。東京は少し肌寒かったものの昼前後は風もなくいい天気。
なんの因果か午後から仕事。せめて職場へ向かうまで遠回りして、いくつもの桜の木の下をゆっくりと。すでにあちこちで酒盛りが。みなさん楽し気な様子。30人あまりの団体から少数精鋭?まで、話が弾み歌がでて、手拍子が追いかけて。公園からちょっと離れた一本桜の下では、50代の夫婦と20代の息子の三人がシートの上で、ささやかな宴会。父親はひたすら缶ビールを呷り、奥さんは重箱の手料理をつつく。息子は立ち上がり、デジカメ片手に平成19年の春をパチリ。いろんな花見があるんだ。

桜の花は匂わないのがいい。もし桜が金木犀のような強烈な匂いを発していたら、これほどあちこちに植えられなかっただろうし、桜の木の下で花見などという習慣も生まれなかったかも知れない。そういう意味では、春を匂いで告げてくれるのは菜の花

町(村だって)の匂いが年々変わっていっても、花の匂いはそうは変わらない。菜の花のなんともいえない匂い、ときとして発情を促すようなあの匂いは、子どもの頃からずっと変わらない。花蜜を吸いにくる蜂たちもあの匂いに魅かれるのだろうか。

油菜、菜種ともいう菜の花は学名をBrassica campestris (野性のキャベツという意味)という。“菜”という字がつくことからも分かるように食用になる。この時期、新芽をおひたしやマヨネーズ和えにして出してくれる飲み屋もある。それよりも、種から絞り採る菜種油のほうがよく知られている(かな)。以前は食用や潤滑用の油として使われた。その油かすは肥料として利用され、実に無駄のない、人間の生活に近しい植物だった。

「望郷」山崎ハコのファーストアルバム『飛・び・ま・す』に収録されている。高校時代に横浜へ出て来た彼女が、生まれ故郷の大分県日田市を追慕して作ったもの。五木寛之『青春の門』を題材にした「織江の唄」、北原ミレイ版も素晴らしい「白い花」、そのほか「ヨコハマ」「さよならの鐘」など抒情的な歌(「呪い」だってそう)が心に沁みた少女ももう五十路。『日本詩集』という童謡・唱歌を歌ったアルバムでは「月見草の歌」が良かった。また、昭和30年代40年代の歌謡曲のカヴァーアルバム『十八番(おはこ)』の中では「みんな夢の中」がいい感じだった。
藤圭子、山崎ハコ、森田童子……こういう日陰の花のようなシンガーは久しく聞かない。それとも、知らないだけでJポップスの中にはいるのかも(いるはずだよね)。「わたしは幸せになるために生まれてきたんじゃない」なんて言い切る、そんなシンガーの歌を聴いてみたい。


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MOMO

deacon_blueさん、いつもありがとうございます。
by MOMO (2007-04-21 21:38) 

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