SSブログ

【桃色遊戯】 [obsolete]

『……どうせ娘を誘惑して桃色遊戯をしようとしている不良中学生である。娘の父母に面会にやって来るはずがないではないか。めんどうくさくなってちがう相手をさがすにきまっている。しかも世間には、そんな中学生と奔放に遊んでいる女学生は多い。……』
(「恋と少年」富島健夫、昭和38年)

「桃色遊戯」は「若い男女のふまじめな恋愛(性愛)」という意味で、英語ではピンクプレイではなく、セックスプレイだそうだ。ということは桃色がセックスになる。そんなイメージをつけられた“桃色”も気の毒だが、そのせいもあってか“モモイロ”という言葉もあまり使われず、だいたいは“ピンク”で通っている。以前「桃色吐息」というヒット曲もあった。いつ頃から使われはじめたかは不明だが、たしかに昭和30年代には「桃色遊戯」とう言葉がときどき新聞に載っていた。おそらく戦前からあった言葉だろう。
そのうちあまり見かけなくなり、「不純異性交遊」なんていう誰が考えたのかスバラシイ言葉に変わった。その「不純異性交遊」も最近、見聞きしない。なにが“不純”なのかという問いかけに対して社会が解答できなくなったということなのかもしれない。“フリーセックス”が言われるようになった70年代前後から若者の性に対する考え方が大きく変わっていった。

「恋と少年」は富島健夫の“半自伝的”作品。
終戦直後、学制が変わり旧制中学から新制高校へ移行した少年と、それを取り巻く友人たちの学園ストーリー。
主人公の杉良吉は中学校へ編入してきたが、すぐに学制改革で旧制中学5年が新制高校の2年になる。彼の心の中にはいつもひとりの少女が生きていた。それは空想の、理想の少女だった。彼の青春時代はまさにその少女を探す旅でもあった。
旧制中学というと、バンカラつまり男同士の奇態な学生生活が思い浮かぶが、そこへ男女共学が実施されて、良吉の高校へも女学校から女学生たちがどっと入ってくる。男どもがハイテンションにならないわけはない(女どもだって同じだったが)。
良吉は学園でいろいろな友だち、ガールフレンドと知り合い、影響されながら成長していく。中学1年の時に母が死に、継母と妹も事故で亡くなり、唯一の肉親である父親は脳溢血で寝たきりになる。貧しさの中一度は大学進学を諦めるが、父の死後、意を決して東京へと出る。そこでアルバイトをしながら早稲田大学の文学部へ入り、知り合った友人たちと同人誌を刊行するところで物語は終わる。
とにかく、学制改革による男女共学になったことでの少年少女たちの狂騒ぶりがおもしろい。“新しい時代”への幕開けともいうべき時代、新しさと旧さの混在した青春が妙になつかしい。
富島健夫は昭和6年朝鮮生まれ。早稲田大学仏文科卒。在学中同人雑誌に書いた「喪家の狗」が新潮にとりあげられ芥川賞の候補になる。昭和30年代にはジュニア小説、40年代以降は官能小説を多作する。「おさな妻」ほか映画化された作品も多い。代表作は自伝的長編「青春の野望」。平成10年逝去。67歳。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

『カラス』【ピクニック】 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。