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【バート・ランカスター】 [obsolete]

『……麻子は映画を見終わると、劇場の前で西田晴夫と別れてきたのだ。
 「とても素敵だったわ」
 と麻子は泉に〈OK牧場の決闘〉の物語りをおしえていた。たしかに映画は面白いものではあった。しかし、横に並んでいる西田晴夫が気になって、バート・ランカスターとカーク・ダグラスの粋な拳銃さばきも、麻子は愉しんで見ることができなかった……』
「輪唱」(原田康子、昭和33年)

アメリカの映画俳優。デビューは33歳と遅かったが印象的な映画に多く出演し、1960年には「エルマ・ガントリー」でアカデミー主演男優賞を受賞。“引用”の「OK牧場の決闘」では主演のワイアット・アープを演じた。ちなみにカーク・ダグラスは相棒のドク・ホリディ。その他「地上より永遠に」「5月の7日間」「終身犯」「泳ぐ人」「山猫」「家族の肖像」など多くの名作に主演している。なかでも悪役になった「ヴェラクルス」でのゲーリー・クーパーとの決闘シーンは、あの死に方とともに印象に残る。そして脇役だったが「フィールド・オブ・ドリームス」でも、少年の頃、野球選手に憧れていたドクター、ムーンライト・グレアムを演じ、幻の中でメジャーリーガーと一緒に野球をして夢を叶えるという重要なエピソードで観客に強い印象を残した。1994年、81歳で亡くなる。

釧路で土建業を営む内藤壮一郎には3人の娘がいる。亡くなった母親の代わりに家事をしながら絵を描いている長女の泉、通信社に勤める次女・麻子、大学浪人中の三女・通子だ。内気な長女、行動的な麻子、明晰な通子と、性格もそれぞれ異なる。それもそのはず、実は、三姉妹の母親はそれぞれ違うのである。そして彼女たちはそのことを知らない。また3人にはそれぞれ恋人やボーイフレンドがいる。ストーリーは3人の恋の行方と姉妹愛が絡み合いながら展開していく。
たとえば、長女・泉の恋人・塩沢医師の亡くなった妻は、内藤壮一郎の昔の恋人で、麻子の母だった。また、通子はボーイフレンドがいながら、麻子の恋人の新聞記者に思いを寄せ、内緒で口づけまでしてしまう。こうして出生の秘密を抱えながら三姉妹の恋愛ゲームが進行していくのである。
読者はその秘密がいつどうやって暴露されるのかと、サスペンス並みにハラハラする。母親が異なる三姉妹という設定はおもしろい。ただ、長女の恋人の元妻が次女の母親という関係はいささか荒唐無稽。しかし、その秘密を次女と微妙な関係にある三女が知るという話の流れからいけば、そういう設定もありなのかなとは思う。
「輪唱」は昭和33年、『週刊女性』に半年間連載された。ベストセラー「挽歌」に続く原田康子の長編。


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