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『秋の歌④』 [noisy life]


アカシア並木の 黄昏は
淡い灯がつく 喫茶店
いつも貴方と 逢った日の
小さな赤い 椅子二つ
モカの香りが にじんでた
「喫茶店の片隅で」(詞・矢野亮、曲・中野忠晴、歌・松島詩子、昭和30年)

とくに歌詞のなかで秋とはうたっていませんが、落葉の季節をイメージしてしまう歌。作られたのは昭和30年ですが、もっと古い戦前の雰囲気を漂わせています。
喫茶店が出てくる歌もそこそこあります。50代前後の人なら「学生街の喫茶店」(GARO、昭和47年)とか「コーヒーショップで」(あべ静江、昭和48年)。40代なら「私鉄沿線」(野口五郎、昭和50年)、「ハロー・グッバイ」(柏原芳恵、昭和58年)。戦前に青春を過ごした大先輩ならコンチネンタル・タンゴの「小さな喫茶店」(中野忠晴、昭和10年)や「一杯のコーヒーから」(霧島昇、ミス・コロムビア、昭和14年)などでしょうか。
最近の流行歌ではどうなのかな。街ではスターバックスやタリーズ、ベローチェなどの格安喫茶店が全盛(わたしも時々使います)。あるいはインターネットカフェとかマンガ喫茶とか、個人仕様の喫茶店が大増殖。昔ながらの店はすっかり少なくなった感があります。しかし、こういう時代に合った“喫茶店”の歌が作られてもいいと思いますが。ドラマにならないか……。
振り返ってみると、われわれはいろいろの喫茶店で様々な人と会ってきました。恋心を打ちあけたり、別れ話を切り出されたり、馬鹿話で盛り上がったり、口論になったり、気まずい沈黙があったり。仕事の打ち合わせだったり、旧友との何年かぶりの再会だったり、待ちぼうけを食わされたり……。毎日のように通った店、珈琲の味が忘れられない店、可愛いウエイトレスがいた店、ジャズ喫茶、名曲喫茶……。ほんとに喫茶店にはいろいろなドラマがありました。40代以上ならほとんどの人が、思い出の喫茶店のひとつやふたつは持っているのではないでしょうか。
そういえば昔よく通った喫茶店があります。いまでも店は残っていて、その町へ行くと立ち寄ります。父親が亡くなる1年ほど前、その喫茶店へ連れて行ったことがありました。とにかく父親に褒められた記憶がないほど出来のわるい息子だったのですが、その時、80歳を過ぎた父親が珈琲を啜りながらほんとに嬉しそうな顔をして「ああ、美味しい」とひと言。つまらないことですが、父親を喜ばせた唯一の親孝行。そんなことはどうでも。
松島詩子は明治38年生まれ。山口県出身で歌手になる前の職業が女学校の音楽教師。昭和11年に「マロニエの木陰」がヒット。タンゴのリズムで女学生の愛唱歌になったとか。戦中、戦後と不遇だったが、昭和30年に「喫茶店の片隅で」が小ヒット。ほかに「夜のささやき」「スペインの恋歌」「私のアルベール」など古賀メロディー全盛の時代にあって洋楽風の歌を多く歌った。平成8年逝去。91歳。


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