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『秋の歌②』 [noisy life]

夕空晴れて秋風吹き
月影落ちて鈴虫鳴く
思えば遠し故郷の空
あゝわが父母 いかにおわす
(「故郷の空」 詞・大和田建樹 曲・スコットランド民謡)

秋の歌といえば、次から次と思い浮かぶのが子供の頃に覚えた童謡・唱歌。「赤とんぼ」「紅葉」「村祭り」「野菊」「里の秋」などなど。商売上? 季節のない歌が多い流行歌と違って童謡・唱歌には四季折々の歌があります。スコットランド民謡の「故郷の空」もそんな一曲。
小学生時代、わたしの家の周りも学校の周りも田んぼや畑だらけでした。朝の登校中はそんな余裕はありませんでしたが、下校時、とりわけひとりのときは、“あかまんま”や“じゅずだま”を引き抜いては手で弄びながら、好きなこの「故郷の空」を歌いながら畦道を通ったものです。刈られて丸坊主になった田んぼを囲うように畦には稲架(はさ)が連なり、独特の臭いをただよわせていました。ごくふつうに白鷺が飛び、ごく日常的に青大将やヤマカガシが出没し、驚くほどの赤蜻蛉の大群が空を覆ったこともあった。そんなのどかな田園風景が宅地に変わり、やがて大小の住宅が建ち並ぶのはアッという間でした。

「故郷の空」古い唱歌です。“唱歌”として採用されたのが明治21年。明治の小学生が授業でこの歌を習い、感激して放課後もみんなで歌い続けたという話をどこかで読んだことがありました。
叙情的な歌ですが、昭和50年代に♪誰かさんと誰かさんが麦畑 とドリフターズ(日本の)がコミックソング風に歌ってイメージが損なわれたと思う人もいるかも知れませんが、実はこのドリフ版のほうが原詞に忠実なのです。原曲はスコットランド民謡[COMIN' THRO' THE RYE]で、18世紀、詩人のバーンズによって「ライ麦畑でキスしたら少女は泣くでしょうか……」という詞がつけられました。それを大和田建樹が、まったく別の抒情詩に変えてしまったわけです。
日本でも原詞に忠実な「麦畑」「誰かさんと誰かさん」という曲名でレコード化されたものもあります。♪誰かが誰かと麦畑(むぎばた)で こっそりキッスしたいいじゃないの という具合です。曲調も、「故郷の空」の爽やかな感じではなく、オリジナルに忠実にもっと楽しく弾むような感じです。
悪く言えば原詞を無視して創作してしまった大和田建樹ですが、いまとなっては“素晴らしき改竄”といえないこともありません。なお、大和田建樹はかの新橋から神戸まで60番あるという「鉄道唱歌」の作詞者でもあります。


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