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『秋の歌①』 [noisy life]


いつもいつも思ってた サルビアの花を
あなたの部屋の中に 投げ入れたくて
そして 君のベッドに 
サルビアの 赤い花 敷きつめて
僕はきみを 死ぬまで 抱きしめていようと
なのに なのに どうして
ほかの人のところへ
僕の愛のほうが 素敵なのに

泣きながらきみの後を 追いかけて
花吹雪 舞う道を 
ころげながら ころげながら
走り続けたのさ
「サルビアの花」(詞・相沢靖子、曲・早川義夫、歌・もとまろ、昭和47年)

街を歩いているとどこからか金木犀の香り。二、三日前あたりから聞こえていたのは虫の声。若い頃は行きかかっている夏を惜しむ気持でいっぱいでしたが、歳を重ねるとともに安堵感の割合が大きくなってきて……。その入り交じった感じがなかなかいいもんです。
で、冬が来ないうちに秋の歌を。まずは邦楽。
秋の歌もいろいろあります。「誰もいない海」(大木康子ほか)、「秋桜」(山口百恵)、「風」(はしだのりひことシューベルツ)、「りんごの花咲く頃」(伊東きよ子)、さざんかの宿(大川栄策)、「公園の手品師」(フランク永井)、「鈴懸の径」(灰田勝彦)などなど。
でも、いちばん秋の気分にさせてくれるのは「サルビアの花」。はじめて聴いたときオリジナリティ溢れた曲もよかったし、詞も新鮮でした。

この歌は名曲だけあっていろいろな歌手が歌っています。やはり聴きなれたせいもあってオリジナル? の「もとまろ盤」はいちばん。競作した「岩淵リリ盤」は、声や歌う雰囲気がやや女っぽすぎて……。本田路津子ヴァージョンはさすが歌が上手なので聴き入ってしまいます。ありがちですが、イントロに教会の雰囲気でパイプオルガンを使っています。変わったところでは、「山本リンダ盤」。「どうにも止まらない」のパンチのきいたヴォーカルもいいけれど、この歌では終始おさえたbaby voice で困っちゃうなって感じです。今の歌手だったら宇多田ヒカルで聴いてみたい。
もともとこの歌は、「もとまろ盤」が出る2年前に、作曲者でもあるジャックスの早川義夫のソロアルバム「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」に入っていたもので、早川義夫がピアノソロの伴奏で歌うバージョンもなかなか聴かせます。男性ヴォーカルでいえば井上陽水も「UNITED COVER」の中でやはりパイプオルガンをバックに歌っています。その他、では「冬のサナトリウム」が後半になって「サルビアの花」に変わるというあがた森魚のライブ盤も。男性ヴォーカルの中では雰囲気いちばん。
「サルビアの花」は詞からもわかるように、少年の失恋ソングなのですが、なぜか自分のことを「僕」というボーイッシュな少女の失恋ソングに聞こえるのは、歌っているのが女性デュオだという理由だけではなく、相沢靖子という作詞家の感性によるものでしょうか。相沢靖子は「マリアンヌ」ほか、ジャックスの曲に詞を提供しています。
なお“もとまろ”はレコードデビューしたにもかかわらず(20万枚売れたそうだ)、プロにはならなかったというめずらしいシンガーズ。
ところでサルビアの語源は、ラテン語で「治療」だとか。ということはあがた森魚のサナトリウムからサルビアというのは、意図的な構成だったのかも。


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