SSブログ

【ロイド眼鏡】 [obsolete]

『「東京の人は、お上品じゃけん、そがいなこともあるまいが、わしらは、小麦饅頭やったら、十や十五は誰でも食いますらい。じゃが、二十から先は、ちいと骨が折れる。二十五が関所かいのう。のう、旦那はん?」
 と、坊主頭で、ロイド眼鏡の男が、勘左衛門氏に話しかけた。
(「てんやわんや」獅子文六、昭和23~24年)

「ロイド眼鏡」は太めの縁の丸眼鏡のことである。その名の由来は、アメリカの喜劇役者、ハロルド・ロイドが使用していたからとか、はじめはセルロイド製だったからなどの説がある。永井荷風がかけていたのがまさに「ロイド眼鏡」。
日本で「ロイド眼鏡」がはじめに流行ったのは昭和初期。エノケンの「洒落男」(昭和4年)に ♪ その時の我輩のスタイル 山高帽子にロイド眼鏡 という一節があり、“モボ”の必須アイテムだった。戦後になると「街のサンドイッチマン」(昭和28年、歌・鶴田浩二)で ♪ ロイド眼鏡に燕尾服 などと歌われ、おどけた格好の代名詞になってしまった。
同じ丸眼鏡に“ボストン眼鏡”があるが、つるとフレームの接点の位置が異なる。「ロイド眼鏡」がフレームの真ん中につるがあるのに対し、ボストン眼鏡は上部についている。
眼鏡の流行もうつろいやすく、全盛をほこった小さなフレームの後は何がくるのか。

「てんやわんや」は四国宇和島が舞台。獅子文六一家(夫人と娘)が疎開していた湯河原から夫人の郷里である四国へ移ったのは終戦直後。当時の住宅難、食糧難によるところが大きかったのだが、当の獅子文六にも遠方へ逃避したいという心境があったようだ。転地先は、自然環境、人間環境ともに居心地がよかったようで、2年近く滞在することになる。帰京後間もなく新聞小説として連載された「てんやわんや」だが、作者は「気持ちよく書けた作品」と、感想をもらしている。
そもそも「てんやわんや」とは、『慌て大騒ぎすること』という意味で、笠置シヅ子の「買いものブギ」(昭和25年)にも♪ てんやわんやの大騒ぎ と歌われている。また、昭和30年代から40年代にかけて人気を博した東京漫才「獅子てんや・瀬戸わんや」は獅子文六の「てんやわんや」から命名したものだろう。
小説家は死に、漫才師も亡くなり「てんやわんや」もまた廃語になろうとしている。


nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 1

コメント 2

gutsugutsu-blog

獅子てんや・瀬戸わんやと言えば、現在何かとお騒がせなパロマがスポンサーだった「家族そろって歌合戦」。子供の頃、よく見てました(笑)ヒヨコネタも。たぬきさんチーム…(笑)最後にどうでもいい話題ですみません…。
by gutsugutsu-blog (2006-08-03 23:12) 

MOMO

ヒヨコネタはバカバカしくて笑えましたね。
関西でも東京漫才は通用していたのですね。
リーガル天才・秀才とかダブルけんじとか、トップ・ライトはあまり知りませんが。関西なら中田ダイマル・ラケット、平和ラッパ、日佐丸?でしたっけ、わたしも結構見ていました。
by MOMO (2006-08-04 00:33) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

【ズルチン】【周旋屋】 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。