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【マンボ・ズボン】 [obsolete]

『……彼は、私の故郷の農村にいるのに、まるでヤクザのような服装をしているのだ。しかもそのジャンパーもマンボ・ズボンも新しかった。おそらく彼は、上京するにあたって、それが東京での最新の流行だと思って買い整えたのかも知れない。しかし、田舎にいるのにその顔は日焼けしていないで、のっぺりと白いのである。』
(「媒杓人」椎名麟三、昭和37年)

「マンボ」は知られているようにラテンのリズムのひとつ。1940年代、キューバのペレス・プラードがルンバをアレンジして創作したといわれている。昭和31年、そのプラードが来日し、日本でもマンボブームが起こった。しかし音楽以上に流行したのがファッション。プラードや楽団員が身につけていた細身のズボンが若者に受け入れられた。それが「マンボ・ズボン」で、それに大きめのジャケットを着るとマンボ・スタイルになる。その2年後にはロカビリー旋風が吹きまくるのだが、ロカビリアンたちはおしなべてマンボ・スタイルだった。いずれにしても、椎名麟三が「ヤクザのような」と書いているように、大人たちからは顰蹙ものだった。
現在でも原宿あたりにはロックン・ローラーが踊りまくっているが、彼らが穿いているデニムあるいはレザーのズボンはまさにマンボ・スタイルを今に伝えているといえる。

引用の場面は、小説家のもとへ、故郷の農村で義理で媒妁をした若者が大荷物を持って転がり込んでくるところの話である。何事につけ傍若無人の闖入者に振り回され、イライラをつのらせていく小説家。妻はその若者をめずらしがり、すこしも夫の不満を理解しようとしない。それどころか同情して下着まで買ってやる始末。それがまた夫の怒りに火をそそぐ。最後には温泉で書き物をしようと、家を出る小説家だったが、とどめを刺すように火事で温泉は消滅している。バスから降ろされた闇夜の海岸で来るあてのない通行人を待ちながら、煙草を吸おうとマッチを擦るが、なんど擦っても風で消えてしまう、というところで小説は終わっている。椎名麟三お得意の悲喜劇である。


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テレビなコラム

マンボスタイルってこんな感じだったんですね。でも、けっこう、今でもいけるような気もしないでもありません。

さて、この記事を私のブログのページでご紹介させていただいたお知らせも兼ねて参りました。もしも、このご紹介について不都合があれば、お詫びを申し上げると共に、その旨、私のページの最新のコメント欄にご一報下さればうれしいです。確認でき次第、紹介の方はとりやめさせていただきます。もちろん、リンク継続OKということであれば、ご一報下さる必要はございません。今後ともよろしくお願いいたします。(最新のページ)http://sapuri777.blog31.fc2.com/
↓掲載のページです。
http://sapuri777.blog31.fc2.com/blog-entry-577.html
by テレビなコラム (2007-11-03 16:07) 

MOMO

テレビなコラムさま。

多くの方々に読んでいただこうとブログを書いていますので、不都合どころか、ありがたく思っております。

こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。
by MOMO (2007-11-03 20:09) 

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