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【シスター・ボーイ】 [obsolete]

『さきほど、マネージャーが、僕が男のパートナーと踊っていたと申しましたが、それはほんとうです。しかし、僕はシスターボーイではありません。僕は優しい女の人に愛情を感じますが、男なぞ、くそ喰らえと思っているからです……』
(「陽のあたる坂道」石坂洋次郎・昭和31年)

「シスター・ボーイ」、そのまま訳せば“女の子みたいな少年”。もちろん和製英語で、昭和32年2月に封切られたアメリカ映画「お茶と同情」に登場した、年上の女性に可愛がられる優しき青年の姿態が、嫋々として女性的だったので、この言葉が流行した。
映画の封切りとほぼ時を同じくして日本に登場したのがシャンソン歌手・丸山明宏。女性っぽい服装に化粧というスタイルはまさにシスター・ボーイ。そのブームにも乗って彼の歌う「メケ・メケ」はヒットした。しかし、当時「シスター・ボーイ」という言葉は、一般的には優しく弱い男性への揶揄をこめた使い方をされていた。現在のように「オカマちゃん」などと親愛をもって呼ばれるまでには半世紀を要したことになる。時代を50年先取りしていた丸山明宏、いや美輪明宏はいまだ健在である。

『陽のあたる坂道』は読売新聞の連載小説で石坂洋次郎にとっては、「青い山脈」以来のヒット作となった。また昭和33年には石原裕次郎主演で映画化され、その年の日活の興行収入ナンバーワンとなっている。
冒頭のシーンは、歌手のジミー・小池がキャバレーで歌う前に客に言う挨拶のセリフである。ちなみに映画ではたしか、川地民夫が演じていた。小説ではジミー・小池は「日本ジャズ界の俊英」となっているが、映画ではロカビリアン。小説が完成したのは32年の10月。日劇で第1回ウエスタン・カーニバルが開催されたのは翌年の2月で、まだロカビリーという言葉は一般化していなかった。ちなみに小説の中でジミー・小池は、32年にヒットした「バナナ・ボート」(浜村美智子らがカバー)を歌っている。


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