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三つの歌●瞳④とじる [day by day]


いずみたく&岩谷時子.jpg

♪ 瞳とじれば 聞こえる声よ
わたしは逢いたい あの人に
夢を見ては 涙ぐむ
わたしの恋 だれも知らない

瞳とじれば 夕焼け雲よ
わたしは行きたい 故郷へ
幼い日の 心のまま
妹たち 浜辺で歌おう
(「瞳とじれば」詞:岩谷時子、曲:いずみたく、歌:倍賞千恵子、昭和39年)

泣くこと、涙を流すことも目や瞳の訴求力のあるアクションですが、もうひとつインパクトのあるしぐさが目を閉じること。

なぜ目をとじるのか。
眠いからだろうって。そりゃそうだ。睡魔にゃかてない。
まばたき? それもそうだけど。
♪嘘をつくとき瞬きをする癖が…… 「硝子の少年」KinKi Kids

なんて歌もあるけど、ふつう眠たくて目をとじたり、まばたきしたぐらいじゃ歌にはならない。

まばたきや睡魔に襲われなくたって人間、瞳をとじることがある。
もの想いにふけったり、何かに集中したり、記憶の路地に進入していくとき、あるいは現実を拒否したり、現実から逃亡するときなど。

たとえば、古いストーリーですが、長谷川伸は「瞼の母」。

生き別れの母を探しあてた渡世人・番場の忠太郎が、母親からゆすり・たかりと誤解され、追い返された道々で、「こうやって上の瞼と下の瞼をピタッと合わせりゃ、オイラにゃまだ見ぬおっ母さんの顔が……」と実母と逢ったことを悔やむセリフ。

瞳をとじて、10数年間記憶の中で育ててきた母親像を思い浮かべることで、辛い現実を忘れようという行為ですね。理屈をいえば。

この戯曲は「瞼の母」あるいは「番場の忠太郎」として三波春夫や真山一郎、あるいは中村美津子などで歌謡浪曲にもなっている。

つまり、眠くもないのに目をとじるとそこにはなんらかの理由があるわけで、そこにドラマが生まれるし、また流行歌にもなる。

まぁ、忠太郎さんにご足労願うまでもなく、通常は「瞳をとじる」というよりも「目をとじる」とか「瞼をとじる」という言い方のほうが正確で、流行歌の歌詞でもそのほうが多いかもしれない。

たとえば「目をとじる」ならば、「なにも云わないで」(園まり)とか、「昴」(谷村新司)、あるいは「あざやかな場面」(岩崎宏美)「チャコの海岸物語」(サザン・オールスターズ)などがある。
「瞼をとじる」なら、「春よ、来い」(松任谷由美)とか「時間よ止まれ」(矢沢永吉)が。

しかし、「瞳をとじる」というどちらかというと叙情的表現もないわけではなく、というより流行歌にはうってつけの言い回しともいえる。

これまで「瞳」で続けてきたということもあるし、再三いうように絞り込むためにも、今回は目や瞼ではなく「瞳」で。

実際「瞳をとじる」とか「とじて」という歌詞がでてくる歌はけっこうあります。
今回は、けっこう古い歌、西暦でいえば60年代の歌を三曲。

瞳とじれば 倍賞千恵子 昭和39年(1964)
昭和37年の「下町の太陽」が歌手デビューなので、その2年後の歌。40年には「さよならはダンスの後に」のヒット曲があり、ちょうどその間ということに。

作詞作曲の岩谷時子・いずみたくコンビといえば、その前に「夜明けのうた」がある。これは岸洋子がヒットさせる前に、当時いずみたくが情熱をそそいでいたミュージカルでつかわれた(さらにそれ以前にはテレビドラマで)1曲。

「瞳とじれば」も歌詞がドラマ仕立てで、どうもミュージカル用につくられた歌ではとおもわれます。昭和39年といえば、倍賞千恵子もいずみのミュージカル「夜明けのうた」に出演していた頃で、その中でうたわれ、レコーディングされたのかもしれない(確証はないけど)。

とにかくいずみたくらしい旋律の名曲です。ダンモ調のアレンジもGOOD。

ベッドで煙草をすわないで 沢たまき 昭和41年(1966)
♪瞳をとじて やさしい夢を あまいシャネルの ため息が

これまた岩谷―いずみコンビの名曲。
いまならどうということはないが、当時はかなりキワドイ“大人のうた”。
当時消防庁がキャンペーンソングにしようとしたとかしないとか。

いずにれしも“禁煙ファッショ”の現在では考えられない歌。

この歌について、何かで岩谷時子が「映画の挿入歌として書いた」という記事を読んだ覚えがあります。

岩谷時子はいずみたくのほかに、宮川泰、弾厚作(加山雄三)、筒美京平とのコンビでのヒット曲が数多くありますが、イニシャルがともに「I.T」ということで、殊更いずみたくが気に入っていたようです。
このコンビでのヒット曲のいくつかをあげると、
「太陽のあいつ」(ジャニーズ)
「恋の季節」「涙の季節」(ピンキーとキラーズ)
「太陽野郎」(バニーズ)
「いいじゃないの幸せならば」(佐良直美)
「貴様と俺」(布施明)

銀河のロマンス ザ・タイガース 昭和43年(1968)
流れるような バラの香り 瞳をとじて 甘えておくれ

3曲目も岩谷―いずみでいけばカッコついたのですが、そう人生甘くはない。
これはGSのゴールデンコンビ、橋本淳―すぎやまこういちの作。

デビュー曲「僕のマリー」からはじまって「シーサイド・バウンド」、「モナリザの微笑」、「君だけに愛を」、「落葉の物語」、「銀河のロマンス」と初期はほとんど橋本―すぎやまコンビ。

タイガースはアイドルGSとしてはナンバーワン。やっぱりヴォーカル・沢田研二の存在大でした。もちろん、ピー、いやの存在もありましたが……。

それでは最後に不採用となった「とじた瞳」のいくつかを順不同であげときますので、気になる方はYOU-TUBEで探して聴いてみてください。

「真夜中のシャワー」ケイ・ウンスク
「あなたに逢いたくて」松田聖子
「ウェディング・ベル」シュガー
「ダンシング・オールナイト」もんた&ブラザーズ


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