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春の歌①春風 [noisy life]

中山千夏・あなたの心に.jpg
♪あなたの心に 風があるなら
 そして それが 春の風なら
 私ひとりで ふかれて みたいな
 いつまでも いつまでも
 …………
 だっていつも あなたは
 笑っているだけ
 そして 私を 抱きしめるだけ
 …………
(「あなたの心に」曲:都倉俊一、詞・歌:中山千夏、昭和44年)

今年はバレンタイン・デーの前日に春一番が吹いたそうです。
毎年2月あるいは遅くとも3月の中旬までには吹くらしい。
今年もそうでしたが、春一番が吹いたあとでも雪は降るわけで、必ずしも春一番が春を連れてくるというわけでもないようです。まぁ、やっぱり桜が咲かないことには春まだ遠しですね。

しかし、桜が咲き、そして散って寒さを感じなくなる春本番、そんなときにサラッと吹いてくる風つまり春の風というのは、ほんとうにフルーツポンチの村上じゃないですが、自然に「ありがとう」をいいたくなります。夏の暑さを吸い取ってくれる秋風も捨てがたいですが。

「春風」ってヤツは人をポジティヴな気持ちにさせるわけでして童謡や唱歌にはもってこい。

もちろん、「恨み節」「泣き節」「失恋ソング」「片思いソング」が主流の流行歌ではありますが、ハッピーソングもないわけではなく、そんな歌では「春風」も幸福、快適を象徴するキーワードとして使われています。
上に詞をのせた「あなたの心に」もそう。

「がめつい奴」の天才子役から、国会議員にまでなり、現在も健筆をふるっている中山千夏の“一発ソング”(失礼)。
幸せ真っただ中というラブラブソング。特筆すべきはソングライトまでしてしまうという多才ぶり。

この歌が世に出た昭和44年(1969)といえば、「風」(シューベルツ)「白いブランコ」(ビリー・バンバン)、あるいは「フランシーヌの場合」(新谷のり子)などのカレッジフォークが巷に流れていた時代。そんななか「あなたの心に」もフォークトレンドに乗って大ヒット。高田渡岡林信康もすでにレコーディングしていましたが、そうした本格的フォーク時代の前夜。

戦前だって春風は吹いていたはず、と思って探してみましたが、それほどはない。知られてる(70歳以上限定で?)ところでは、
♪吹けよ春風 紅傘日傘 今日もくるくる人通り 「銀座の柳」(四家文子)昭和7年
くらい。〈昔恋しい 銀座の柳〉の「東京行進曲」の続編のような歌で、作詞・作曲も西條八十・中山晋平と“前篇”と同じコンビ。

ほかでは昭和9年の「空は青いぞ」(藤山一郎)
♪空はさみどり 渡る春風
とありますし、14年の「春の港」(瀬川伸)には、
♪春の港は 春風吹いて
と出てきます。もうひとつおまけに、
♪吹いた優しの 春の風 「思ひ出夜曲」(霧島昇、奥山彩子)

上の2つはやはり西條八十、さいごのひとつはサトウハチローの作詞です。

しかし、少ないな。「春風」という言葉があまりも明朗すぎて、湿度の高い流行歌にはそぐわなかったのでしょうか。見方を変えればモダンな言葉だったのかも。もっとも昭和も10年代に入ると、いわば“冬の時代”、春風に身をさらす余裕なんてなかったのかな。

春風が吹くには戦火が止み人心が落ち着かなくては。
とはいえ戦後になってもなかなか「春風」は吹かない。そよぐ風(「憧れのハワイ航路」)やそよふく風(「君待てども」)あるいはみどりの風(「三百六十五夜」)はおそらく春の風でしょうが、ストレートに「春風」とはいいたくないようです。昔の作詞家は詩の世界にも通じていた人が多くひねくれて、いやひとひねりしていたのかもしれません。

♪あわれ春風に 嘆くうぐいすよ 月に切なくも 匂う夜来香 「夜来香」山口淑子
昭和25年生まれのこの歌の「春風」は決して心地よい風ではないけれど、戦後比較的早く「春風」がつかわれた歌かも。

これは中国の歌で、訳詞は佐伯孝夫、サトウハチローともどもやはり西條門下。お師匠さんの好みなんですかねぇ、「春風」をつかうのは。

そういえば昭和30年代に日本で流行った“ロシア民謡”に「カチューシャ」(スリー・グレイセス)がありますが、その中でも
♪春風やさしく吹き 夢が湧くみ空よ
とでてきます。この訳詞というか作詞も西條門下の丘灯至夫

お師匠さんの西條八十は戦後も健在で舟木一夫「花咲く乙女たち」で、
♪春風のように 笑う君
と“必殺技”(でもないか)を披露しています。

この頃になると歌謡曲よりも湿度の低いポップスが若者に受け入れられるようになってきます。はじめは何でもそうでしたが海の向こうから。
♪甘いかおりふくんだ 春風のように 「可愛いマリア」ペギー・マーチほか
♪春の風と鳥の歌と やさしいあなたがいた 「悲しき天使」森山良子ほか

和製フォークでも「春のからっ風」(泉谷しげる)のような変化球もありました。
50年代のアイドル歌謡こそ春風が吹き荒れていそうですが、思い浮かぶのは山口百恵「春風のいたずら」
♪寒いわ 寒いわ 寒いわ
ってヤツ。もっとも「春風」や「春の風」というフレーズはどこにも出てきませんが。

どうもポップスも含めた流行歌と「春風」はあまり相性がよくないのかも。Jポップではどうなんでしょうか。ウジャウジャあったりして。
最後にこんな「春風」もいいんじゃないでしょうか。

♪春風吹き 秋風が吹き 淋しいといいながら 君によせる愛はジェラシー 「ジェラシー」井上陽水
♪春の風に舞う 花びらに変えて 「チェリー」スピッツ

「風」っていうのは流行歌にとってとてもインパクトのある素材ですが、どうやら季節でいうならば「春風」より「秋風」のほうがふさわしいようです。
春と秋があれば冬や夏があっても不思議ではありません。
日常会話でも「冬風」とはあまりいいません。その場合「北風」や「木枯らし」でしょう。
また「夏風」もひか、いや聞かない。…………「夏風邪」はひきますが。

話変わってWBC。
日本勝っちゃいました。私の予想では今日負けて、次のベネズエラに勝って(楽観主義)、決勝でアメリカに勝った韓国を破るというものだったのですが。
あまりツキを使ってほしくなかったなぁ。このまま破竹の4連勝っていけばいいけど。
それにしても気になるのは村田のリタイア。病院へ行くぐらいだから開幕戦は無理かもね。こういうことがあると、落合さんみたいな監督や選手が増えるんだよなぁ。


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コメント 2

tsukikumo

「あなたの心に」は都倉俊一氏の出世作、
「悲しき天使」は漣健児氏の最後の一作でしたっけ。

>春風
シリア・ポールはじめ極めて多くの歌手がカバーしている大瀧師匠の「夢で逢えたら」にも ♪春風そよそよ右の頬を撫で~♪ って一節がありましたよね。

「そよ風」なら結構多い気がします。小川知子の「初恋のひと」、チェリッシュ「若草の髪飾り」、千葉紘子「折鶴」など。
by tsukikumo (2009-03-20 23:43) 

MOMO

tsukikumoさん、こんにちは。

たしかに「そよ風」のほうが圧倒的に多いですね。
あと2回ほどとりあげるつもりです。

「折鶴」は気づきませんでした。さっそくラインナップに入れさせてもらおました。ありがとうございます。
by MOMO (2009-03-22 21:38) 

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