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春の歌②そよ風① [noisy life]

そよかぜ並木路子.jpg
♪みどりのそよ風 いい日だね 蝶々もひらひら 豆の花
 なないろばたけに 妹の つまみな摘む手が かわいいな
 …………
 みどりのそよ風 いい日だね ボールがポンポン ストライク
 打たせりゃ二塁の すべり込み セーフだおでこの 汗をふく
(「みどりのそよ風」詞:清水かつら、曲:草川信、昭和21年)

「みどりのそよ風」はNHKによって戦後つくられた童謡。
わたしが習ったのは幼稚園だったのか、小学校低学年だったのか、とにかく好きな歌でした。でも3番?の草野球は知らなかった。

作曲は「夕焼け小焼け」「揺りかごの歌」で知られる草川信。ほかに、
♪どこかで春が うまれてる どこかで水が 流れだす 「どこかで春が」
も彼の作品。

作詞の清水かつらは編集者から童謡詩人になった人で、代表作には「叱られて」「靴が鳴る」がある。

草川は昭和23年に、清水は26年にともに50代で亡くなっています。

緑の風、そよ風いかにも春を思わせる風です。そんな清々しい風が吹く日は「いい日」に決まっている。いや、それだけで「いい日」なんだって刷り込まれてしまいました。

「みどりのそよ風」は終戦間もない時期の童謡ですが、流行歌の戦後初のレコードでありヒット曲といえばご存じのとおり、21年に発売された「リンゴの唄」(並木路子、霧島昇)
これは並木が主演し前年の10月に封切られた映画「そよかぜ」の主題歌。現在でも戦争と軍国主義からの解放を象徴する歌としてしばしば使われています。

映画のなかでは「リンゴの唄」だけでなく「そよかぜ」という同名の歌もうたわれていました。そしてレコードも裏表で発売。
もちろんA面は「リンゴの唄」でB面が「そよかぜ」。ふつう映画と同じタイトルの方がA面になりそうですが、この場合は逆。

映画公開から「リンゴの唄」のリクエストがNHKラジオに殺到。レコードの発売は映画公開の3カ月後だったので、当然人気の「リンゴの唄」をA面にしたということらしい。
♪丘の小径の 白い花 ……そよ風はそよ風は 明るい春を乗せてくる
という「そよかぜ」はやはりサトウハチローの作詞ですが、アコーディオンをきかせたタンゴ調の明るい曲。

戦前戦中にも「そよ風」の歌がなかったわけではないですが、ほとんど稀。
それが、戦争が終わったとたん堰を切ったように「そよ風」が吹きはじめるのですから、人々がいかに戦争中重苦しい思いで過ごしていたのかが想像されてジンときてしまいます。
そんなそよ風の歌は、例外はあるにしろほとんどがハッピーソングか希望を抱いて歩もうという前向きの歌。

終戦間のない昭和20年代、ほんとによく「そよ風」が吹きまくりました。
霧島昇のうたう「そよかぜ」と同じ年に出たのが池真理子「愛のスイング」
♪風はそよ風 緑の風 あなたのお家は 南がわ
戦時中封印されていたジャズをさっそく取り入れるとは。いかに制作者たちがジャズに飢えていたかがわかります。そして、この曲がヒットしたということは流行歌ファンもジャズに飢えていたということに。作曲は服部良一の弟子の平川英夫
「窓を開けましょう」「カーテン開けましょう」「扉をひらいて」と“ニッポンカイホウ”を連呼するモダンボーイ・藤浦洸のフレーズが印象的。

♪南のばら そよ風に ほほえむ 君の姿 「南の薔薇」近江俊郎
昭和20年代前半、もっとも輝いていた男性歌手が岡晴夫とこの近江俊郎。戦前からうたっていましたが、ブレイクしたのは戦後の昭和21年、奈良光枝とのデュエット「悲しき竹笛」が大ヒット。当時28歳という遅咲き。翌年には「山小舎の灯」、23年にはこの「南の薔薇」と「湯の町エレジー」とビッグヒットを連発。前者はフラメンコを思わせるリズミカルな旋律、後者はイントロのギターが印象的な古賀メロディー。

近江俊郎では27年の「別れの磯千鳥」にも、
♪泣いてくれるな そよ風よ
と出てきます。

その前の年、26年には2年前にデビューした天才シンガー・美空ひばり
♪恋のそよ風 ゆらゆらと 「ひばりの花売り娘」
をヒット。
28年になると、
♪そよ風に逃げて行く 夢のあと追いながら 「待ちましょう」津村謙
♪そよ風の甘き調べにも 想いあふれて 「ふるさとの燈台」田端義夫
とちょっとせつない「そよ風」が。これは時代が少し落ち着いてきて、流行歌本来のペーソスが戻ってきたということ。

その代表的な歌が
♪胸にそよ風 抱いていく 「街のサンドイッチマン」鶴田浩二
これもまた時代が生んだ歌。昭和20年代前半は失業時代というより、敗戦により産業そのものが壊滅してしまい、それを再構築するのに必死になっていた時代。食べるためには辛い仕事もしなくてはならなかった。
自ら企業や店の広告塔として街中に身をさらすことだって。

それがサンドイッチマン。昭和24年ごろ、戦犯として巣鴨刑務所に収監された海軍大将の息子がサンドイッチマンになったということが話題になりました。
その世相をヒントに作詞家のタマゴだった宮川哲夫吉田正と組んで書いたのが「街のサンドイッチマン」。
「この世は悲哀の海だもの」「笑ってゆこうよ影法師」というフレーズは、辛い思いで働いている人々にとって「頑張ろうよ」と肩をたたかれている感じ。そのへんがヒットした理由だったのかもしれません。辛いままならそよ風なんか吹きませんからね。

宮川はこの大ヒットで、晴れてビクターレコードの専属作詞家になり「赤と黒のブルース」(鶴田浩二)、「ガード下の靴磨き」(宮城まり子)、「東京ドドンパ娘」(渡辺マリ)、「湖愁」(松島アキラ)、「公園の手品師」(フランク永井)、「美しい十代」三田明、「霧氷」橋幸夫とビッグヒットを連発して佐伯孝夫に次ぐビクターの看板作詞家になっていきます。

時代は戦後から抜け出し復興急の昭和30年代に入っていきます。
もちろん30年代にもそよ風は人々にやさしく吹き続けていきます。
とりわけ、30年代中盤から後半にかけての「青春歌謡の時代」には、過剰気味じゃないの? というほど吹きまくりました。

残念ながら分量超過(自分で決めてる)ということで、そろそろエンディング。
「青春歌謡」についてはまたいつかということで。次回は「青春歌謡」とほぼ同時期にまた別のジャンルとして時代を彩った「そよ風の歌」をピックアップしてみたいと思います。

そういえば「街のサンドイッチマン」のヒットの後、よくある二番煎じ(にしては昭和33年と遅い発売)で「娘サンドイッチマン」という歌が。発売元はやはりビクターで作曲も吉田正。ただ作詞は宮川哲夫ではなくエースの佐伯孝夫。歌うは雪村いづみ
♪花のさかりをサンドイッチマン いろいろ訳もありますが
と、ピエロ姿の若い娘がプラカードを持って街に立つという設定。
そりゃ少し強引だ、と思ったら当時実際に女性のサンドイッチマンもわずかだがいたらしい。肉体的というよりも精神的にタフでないと無理な仕事で、やっぱり男性の方が圧倒的に多かった。

では現代はというと、街でみかけるティッシュやビラを配っている人間は若い女性が多い。そのほとんどが満面の笑顔で。営業用とはいえ、ほとんど無視されるのだから辛いはずだけど、よくやってます。まぁ笑顔でも作らなきゃやってけないものね。がんばりなよ。
♪泣いたら燕が笑うだろ 涙出たときゃ空を見る
って歌詞もあるからね。


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≪カチューシャ≫

歌声喫茶の事、書かせていただいてよろしいでしょうか~?

新宿≪カチューシャ≫では相変わらずみんなで元気に楽しく
唄い続けております~

「山小舎の灯」「憧れのハワイ航路」「リンゴの唄」「風」「白いブランコ」
「悲しき天使」などなど・・全部MOMOさんのブログに載っている曲
ばかりです~♪ もちろん「カチューシャ」は我がサークルのテーマ曲
ですから毎回唄いま~す!

♪春は名のみの風の寒さや~~~~~

≪カチューシャ≫をお心に留めていただけると嬉しく存じます~☆



by ≪カチューシャ≫ (2009-03-22 23:30) 

レモン

「カチューシャ」懐かしいですね。いや歌も歌声喫茶もですけど。
僕はまだ≪カチューシャ≫さんには行った事がありませんが、≪ともしび≫なども有名でしたね。僕は劇団≪カチューシャ≫の方に一時いましたのでロシア民謡には思い出が深いです。
ラスベターリ、ナベレ、カチューシャ・・・と耳で覚えたロシア語の詩もいまだ耳に残っていますよ。

そういえば「湯の町エレジー」のイントロのギターフレーズを皆が弾いていましたよね。
by レモン (2009-03-23 07:47) 

toty

みどりのそ・よ・か~ぜ♪
私も好きでよく歌ったので、

いつだったか、老人ホームで歌ったら
殆どの人が知らず、不発におわったことがありました。

こういうこと、めったにないのですが
がっかりした覚えがあります。

3番が野球の歌になっているのは、私もしりませんでした。
明日の日記につかわせていただきます。
by toty (2009-03-24 00:44) 

MOMO

はじめまして、カチューシャさん。
歌声喫茶未体験ですが、興味あります。

どうぞうどうぞ、宣伝でも告知でもなんでもしてください。
by MOMO (2009-03-24 21:37) 

MOMO

レモンさんいつもどうもです。

普段おとなしかった先輩が酒の席でいきなり「カチューシャ」を原語でうったむかしを思い出しました。
「湯の町エレジー」のイントロわたしもやりました。なんなんですかね、少なくとも禁じられた遊びよりは簡単ですからね。
by MOMO (2009-03-24 21:38) 

MOMO

totyさんこんにちは。
「みどりのそよ風」、終戦直後の歌ですが、その頃の大人はそんな余裕なかったのかもしれませんね。「リンゴの唄」だって知らないって人いますから。でも、いかにも戦後の歌という感じでいい歌ですよね。

どうぞご日記で自由にいじってください。

by MOMO (2009-03-24 21:38) 

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