島⑦江ノ島① [a landscape]
♪……
江の島が見えてきた 俺の家も近い
行きずりの女なんて 夢を見るように忘れてしまう
さっきまで俺ひとり あんた思い出していた時
シャイなハートにルージュの色が ただ浮かぶ
好きにならずにいられない お目にかかれて
今何時? そうねだいたいね
……
(「勝手にシンドバッド」詞、曲:桑田佳佑、歌:サザン・オールスターズ、昭和53年)
江ノ島(正式名称は「江の島」)は神奈川県藤沢市にある周囲4キロほどの小島。
片瀬海岸から弁天橋を渡って数分で行ける。渡りきると土産物屋や海鮮料理店があり、その先には弁財天を祀った江島(えのしま)神社がある。
ほとんど陸続きの島ということから、江戸時代から遊興地として知られた。最寄りは江ノ電の片瀬江の島駅で、沿線には鎌倉もあって東京から近い観光地としていまだ人気がある。
「江ノ島」の音楽といえばなんといっても湘南サウンド。その湘南サウンドのなかでも「江の島」のイメージを強烈にファンに植え付けたのがサザン・オールスターズ。サザンについては詳しいブログがいろいろ書いている(多分)ので多言は無用。
デビュー曲の「勝手にシンドバッド」を聴いた時の印象は、とにかく早口ソングで歌詞が聞き取れないところが多かった。しかし聞き取れた中では当時とても新鮮に思えるフレーズがあった。
たとえば「今何時? そうねだいたいね」という消化不良になりそうなところ。また「胸さわぎの腰つき」という古くて新しいフレーズ。いずれも印象的でメロディーともども思わず口をついて出てくる歌詞だった。
おそらくサザンにはほかにも「江ノ島ソング」があるのだろうが、実はあまりよく知らないので。ただ、これは知っている。
♪江の島が遠くに ぼんやり寝ている 「夏をあきらめて」研ナオコ
サザンに続く湘南サウンドといえば「TUBE」。
♪はよ着け はよ行け 江ノ島ブギウギ 「江ノ島ブギウギ」
夏が待ち切れずに梅雨が開けるとすぐ、ビーチへとクルマを走らせるナンパ野郎のブギウギ。去年の失敗にもめげることなく妄想タップリのポジティヴ野郎の歌。
そういえばエレキの神様・寺内タケシにも「イケイケ江ノ島」があった。
作曲はもちろんテリーで、イケイケガールスという三人娘がうたっている。ふたりの恋人と江の島でサザエの壺焼を食べるという、二股娘のなんとも腹立たしい歌。
寺内タケシとブルー・ジーンズの「NOTTEKE WAVE」というアルバムに入っている。
このアルバムサーフィンあり、稲村ケ崎あり、江の島ありと、コンセプトは湘南サウンド。しかしテリーが湘南かねぇ。彼のあの訛りはどう聞いてもU字工事の天敵方面だと思うけど。
ほかではサニーデイ・サービスの「江ノ島」。
TUBEの「江ノ島ブギウギ」と同じく海へクルマを走らせるストーリーだが、こちらはふたり連れ。ニヒトノイエスといった感じの無風の日常を描いたストーリーは今風?
音楽ともどもパステル画のようでけっこう気に入ってます。
おまけは残念ながら聴いたことがないが、電車の中で見た広告のタイトルでウケたASIAN KUNG-FU GENERATION というバンドがうたっている「江ノ島エスカー」。
江の島に行ったことのある人なら分かると思うが「エスカー」とは、江の島の展望台付近へ続くエスカレーターのこと。
エスカレーターをエスカーっていっちゃうのもスゴイけど、これがなんと有料。たしか300円ほどとられる。徒歩でも10数分、ロープウェイ作るにゃ短すぎるからいっそエスカレーターにしちゃおう、なんて。
当然1機のエレベーターで終点までいくわけではなく、機を乗り継いでいく。
♪そりゃないよエスカーさん 只にしとくれ江ノ電さん
って歌かどうかわからないけど、「江ノ島エスカー」ぜひ聴いてみたい。
最後に久々に「勝手にシンドバッド」を聴いて思い出したむかし話を。
ちょうどこの歌が流行りだした頃、勤めていた会社の事務員の女の子で、サザンのメンバーの誰かと友だち、と自慢げに話す娘がいた。米軍払下げだというブカブカの破れたGジャンが似合う明るい娘だった。
ちなみにこの娘、いつも♪胸騒ぎの 腰ふり とうたう。何度も「腰つき」だよと教えてあげてもかまわずそううたっていた。まぁ似たようなもんだけど。
で、わたしが毎度毎度の“長い昼食”タイムをとって親指運動に励み、“戦利品”として世良公則とツイストのアルバムを抱えて会社に戻ってきた日のこと。
その日の仕事が終わり、皆でいきつけの店で飲んでいたとき、酔った彼女がわたしに「さっき獲ってきたLPちょうだいよ」とからんできた。どうやら世良が好きらしい。
わたしはツイストのファンでも何でもなかったのだが、意地悪で「見返りは?」と言ってやった。
彼女、しばらく考えてから「じゃあ、庄野真代と取っ換えっていうのは?」と。わたしが庄野真代のファンだというのを知っていたのだ。
「いいよ」と即答したかったのだが、酔いも手伝って「え、それだけじゃなぁ……」ともったいつけてやった。
すると彼女いきなり立ち上がり、
「じゃあ、こいつでどうよ!」
と着ていたGジャンを脱ぐやわたしに投げつけた。
あまりの男っぷり、いや女っぷりの良さに圧倒され、わたしは投げつけられたGジャンを受取ったままただ頷くだけだった。
その夜、トックリセーター一枚で帰って行った彼女にはすこし気の毒だったが、以後その袖のちぎれそうなGジャンはわたしのお気に入りとなった。
その後、あのユニークな娘がどうなったのか、あれだけ気に入っていたGジャンの末路がどうだったのかまったく記憶にない。
彼女の顔もおぼろげなのだが、あのとき交換した庄野真代のLPは手元にまだある。
サザンにツイストに庄野真代。そんな時代だった。
いつもながらグイグイ読ませますねぇ。MOMO さんって実はプロの作家さんなんですか?たとえ違っていても本当に素晴らしい。(この間は佐渡情話でフライング申し訳ない。)
江ノ島を舞台にした唄なら1977年の↓が私の場合印象深いです。
http://www.youtube.com/watch?v=cCiGmw52u6A&feature=related
同じく映画なら1975年の↓
http://www.amazon.co.jp/はつ恋-DVD-小谷承靖/dp/B000ENUYX6
実はこの映画、2本立て同時上映の別の方で五十嵐淳子がヌードになるってんで観に行ったんですが(汗)、結果こちらの方が数段出来が良くていまでも記憶に残っています。それにしても仁科明子キレイだった。残念ながらヌードは有りませんでしたが(笑)
by tsukikumo (2009-03-13 20:05)
tsukikumoさん、こんにちは。
実は……ド素人です。パソコンともどもなんとかの手習いではじめ、いまだ飽きずにやっております。過大な評価をしていただき、たいへん励みになります。どうもありがとうございました。
ヒデとロザンナの“江の島ソング”、はじめて聴きました。世間は広くて深いですね。
映画の「はつ恋」も観ていませんが、仁科明子は透明感のある女優でした。牝馬ながらサラブレッドですものね。早い結婚-引退がもったいなかったですね。
by MOMO (2009-03-14 21:05)