その名は●デヴィッド [the name]
♪Woh!
I feel so sad, baby, I need you
I feel so sad, baby, I want you
Baby, please don't go, I love you
Oh, No No No
Oh, No No No, Baby
こぼれたワインは 涙のしずくさ
銀色のグラスに うつる貴方の姿
沈む夕陽のような 恋が僕の命さ
こぼれた ワインは 涙のしずくさ
たった一夜だけの 愛に夜明けはないさ
(「銀色のグラス」詞:なかにし礼、曲:鈴木邦彦、歌:ザ・ゴールデン・カップス、昭和42年)
カップスのヴォーカルが亡くなりました。63歳というのはいかにも早い。先日のフランク永井、筑紫哲也とここのところ愛すべき人たちの訃報が相次いでいます。
夏を乗りきることで精魂尽き果ててしまったのでしょうか。不謹慎かもしれませんが、個人的な想いとしては秋に死ぬのはいちばん理想的な気がするのですが。
なんでも残されたメンバーによる追悼公演があるそうですが、デイブ平尾のいないゴールデン・カップスは、井上忠夫のいないブルー・コメッツ同様味気ないような気がします。
昭和42年のデビュー曲「いとしのジザベル」から「銀色のグラス」、「長い髪の少女」、「本牧ブルース」と続けたGSナンバーは彼らにとったら不本意な楽曲だったかもしれません。しかし、こうしたヒット曲(一般受け)があったからこそ、TVのナツメロ番組に出たり、再結成することができたという一面も。
齢を重ねて彼らも吹っ切れたのか、ここ数年しばしばテレビにも懐かしい姿を見せていただけに残念ですね・
ところでデイブ平尾の本名は、新聞・テレビの訃報でごぞんじのとおり、平尾時宗(ときむね)、まったくの日本人です。はじめカップスの売りは“全員ハーフ”ということでしたが、これはウソ。デイブなどどうみてもモンゴリアンだもの。
なんでも若い頃、アメリカへ遊学しているとき現地の人間から「お前はデヴィッド・ジャンセンに似ている」と言われ、デヴィッド→デイブと名乗るようになったとか。でも、似てるかなぁ……。
デヴィッド・ジャンセンといっても、若い人というか40歳以下の人にはピンと来ないかも。日本では昭和38年に放送された連続テレビドラマ「逃亡者」の主人公・リチャード・キンブルを演じたアメリカ俳優のこと。のちにハリソン・フォード主演で映画版が作られました。
そうなんです。デイブはデヴィッドの略称なのです。
デヴィッドの源は旧約聖書に出てくる勇敢なる戦士・ダビデからきていて、その意味は「親愛なる人」。ちなみにイタリア人のdavideはダビデとカナ表記されます。
イギリスではデヴィッドの名を持つ聖人や国王もあらわれ、人気の名前でしたが、その国王のひとりが家臣の妻を妊娠させたことから人々の不評を買い、人気も凋落したとか。
そのデヴィッド人気を復活させたのは、多分デヴィッド・ボーイDAVID BOWIEではなかったでしょうか。
70年代にイギリス女性がもっとも好む男性の名前ナンバーワンがなんとデヴィッドだったそうで、彼の影響以外には考えにくい。
アルバム「ジギー・スターダスト」THE RISE AND FALL OF ZIGGY STARDUST AND THE SPIDER FROM MARS をはじめグラムロックのカリスマとして、あるいはロックをファンタジックにドラマチックに表現したことでも異彩を放ったロック・ヴォーカリストであり、アクターでした。
アメリカにもデヴィッドはたくさんいます。とくにカントリーの世界には多い(それしか知らないってこともありますが)。
なかでもいちばんよく聴いたのがフラットマンドリンの名手、デヴィッド・グリスマンDAVID GRISMAN。
トラディショナルからブルーグラス、さらにはスイング・ジャズを取り入れたドーグミュージックと多彩でした。グレイトフル・デッ ドTHE GRATFUL DEAD のジェリー・ガルシアJERRY GARCIAとのコラボ「バグズ・グルーヴ」BAG'S GROOVE、あるいは、ステファン・グラッペリSTEPHANE GRAPPELLYと競演したジャンゴDJANGO REINHARDT の「マイナー・スイング」MINOR SWING など名曲は数限りなく。
デイブDAVE ではまずビートルズBEATLES の影に隠れてしまったイギリスのバンド、デイブ・クラーク・ファイブTHE DAVE CLARK FIVE。リーダーがドラムスのデイブ・クラーク。
全米1位になった「オーバー・アンド・オーバー」OVER AND OVER など多くのヒット曲がありますが、日本では「ビコーズ」BECAUSE や「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」DO YOU LOVE ME がヒット。
やはりイギリス発で、DC5の少しあとに出たのがデイブ・ディー・グループDAVE DEE, BREAKY, MICK & TICH 。メンバーの名前を連ねためずらしいバンド。
日本では「オーケイ!」OKAY! や「キサナドゥの伝説」THE LEGEND OF XINADU がヒットした。これはまさにGS時代の洋楽で、前者はカーナビーツが、後者はジャガーズがカヴァーしていましたね。
最後はアメリカのソウルブラザー、サム&デイヴSAM & DAVE 。サミュエル・デヴィッド・ムーアSAMUEL DAVID MOOREとデヴィッド・プラッターDAVID PLATTER(デイヴ&デイヴでもよかった?)。
70年の全米R&Bチャート1位になった「ホールド・オン」HOLD ON, I'M COMIN' は日本でも大ヒットし、R&Bをひろめることに。
ゴールデン・カップスもこの「ホールド・オン」をレコーディングしていましたっけ。
デイブ平尾は初めてテレビで見たときから親近感を覚えました。
それは幼なじみによく似たヤツがいたから。あの人の良さそうなたれ目。笑うと顔がシワだらけになってさらに目尻がさがる。悪戯小僧でしたが、気のいい男でした。きっとデイブ平尾もそんな感じの人間じゃなかったかなぁと勝手に思っています。
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