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岬④岬めぐり [a landscape]

 岬めぐり.jpg

♪ あなたがいつか 話してくれた
  岬を僕は たずねて来た
  二人で行くと 約束したが
  今ではそれも かなわないこと

  岬めぐりの バスは走るよ
  窓に広がる 青い海よ
  悲しみ深く 胸に沈めたら
  この旅終えて 街に帰ろう
(「岬めぐり」詞:山上路夫、曲:山本厚太郎、歌:山本コウタローとウィークエンド、昭和49年)

四方を海に囲まれた日本列島。有名無名取り混ぜた「岬」の数はそれこそゴマンとある。
流行歌の世界でも、すでにとりあげてきた「襟裳岬」や「宗谷岬」など特定の岬ではない、どこかの「岬」ならいくつもある。
最後にそんな「岬」をめぐってみることに。
まずは固有の岬を。

「竜飛岬」島倉千代子
津軽三味線のイントロから
♪竜飛岬は 泣きたい岬よ いくら信じて待ったとて 人の心の頼りなさ
という泣き節が哀愁の船村メロディーにのって。演歌やなぁ。
竜飛崎(龍飛埼)は津軽半島の先端にあり、“風の岬”としても知られ、風力発電用の大風車11基が立ち並んでいる。ここにも歌碑があるのだが、島倉千代子の「竜飛岬」ではなく、
♪ごらんあれが竜飛岬 北のはずれと……
とうたわれた石川さゆり「津軽海峡・冬景色」が。やっぱりヒット曲には勝てない。

吉田拓郎にも「竜飛崎」がある。

「越前岬」川中美幸
♪あなた恋しい あなた恋しい 越前岬 
泣く泣く恋をあきらめた女の“未練歌”。昭和57年発売。
「越前岬」は前回で書いたように美空ひばり盤もある。
♪あゝ ここは北陸 越前岬よ
四季は移り変わっても、人情など岩に砕いてそ知らぬ顔で佇む岬の厳しさが歌われている。

2人にうたわれた「越前岬」は日本海を望む若狭湾の東、福井県の越前海岸にある。
美空ひばりの歌に♪香る越前 花水仙 とあるように冬になると一帯に水仙が咲き乱れる。なんでも水仙は福井の県花だそうだ。

「港町ブルース」森進一
♪うしろ姿も 他人のそら似 港 三崎 焼津に 御前崎
北は函館から南は鹿児島まで、日本各地の港を歌詞に織り込んだ昭和44年の歌。6番まであって、その最後にいくつかの港がうたわれるのだが、そこに岬が出てくる。
上の歌詞は3番で関東中部の港。三崎は神奈川県の三浦半島にある「三浦三崎」のこと。
三崎というよりもその先端にある古くからの観光地城ヶ島で有名。もちろん、城ヶ島、三崎が観光地となったのは大正期、北原白秋によってつくられた名曲「城ヶ島の雨」によるところが大きい。戦前は、

三浦三崎の 愛しい人へ  「城ヶ島夜曲」 東海林太郎

三浦三崎の いとしい人よ  「夢の城ヶ島」 松平晃 
三浦三崎の潮風は  「月の城ヶ島」 青葉笙子
というように「城ヶ島」をうたった歌にはよく三浦三崎が出てきたが、戦後はあまり聞かない。

「御前崎」は海水浴場としても知られる静岡県の岬。その先端に立つ御前埼燈台は塩屋埼と同じく映画「喜びも悲しみも幾歳月」の舞台となった。

その三崎と御前崎の間にある伊豆半島にも「石廊崎」という“観光岬”があるが、伊豆はなぜか天城ばかりがうたわれて、石廊崎の歌は聞いたことがない。
ただ、そこから海岸線を北上したところに野生の猿がいることで有名な西伊豆・波勝崎がある。灯台こそないが200mを越える断崖は景観で、
♪波勝岬は 純情岬 「愛し合うには早すぎて」本間千代子
とうたわれている。

不特定の岬では
♪船は見えない 岬に春が 来るというのに 「しあわせ岬」都はるみ
がある。船で去っていった恋人を“待つ女”。歌謡曲の典型ソング。
また既述の「立待岬」をうたった新沼謙治にはもうひとつ
♪北の岬は いまもなお 忘れられない 忘れられない おもいで岬
という「おもいで岬」がある。これが彼のデビュー曲。川口―阿久コンビでどこか「襟裳岬」を思わせる。

ほかでは、
♪岬まわって 消えゆく船を 泣いて見送る 「東京の人さようなら」島倉千代子
♪バスも通わぬ 岬の町へ 逃げて来ました 「哀愁の果て」坂芳子
♪岬まわれば 太平洋だ 「若い港」三田明
♪むせび泣くよに 岬のはずれ 「霧笛が俺を呼んでいる」赤木圭一郎
♪岬まわるの 小さな船が 「瀬戸の花嫁」小柳ルミ子
♪岬のはずれに 少年は魚つり 「いい日旅立ち」山口百

などと昭和の世、岬は流行歌にしばしばうたわれるローケーションだった。

上に載せた「岬めぐり」は昭和49年のヒット曲。
これは男のセンチメンタル・ジャーニー。別れた恋人と以前一緒に来ようと行っていた岬をひとりで訪ねる。それもカンペキなひとり旅ではなく、岬めぐりのツアーバスかなにかで。そんな発想だからフラれるんだよ、なんて余計なことだけど、とにかく彼にしてみれば、彼女のことを完全に吹っ切るための旅。
この歌をきっかけに全国の岬をめぐったという人もいるし、観光会社でも「岬めぐり」を売りものにしたツアーを企画したり。

ただ、「岬めぐり」ツアーといっても、いくつかの岬を順々に回っていくというより、ひとつの岬の周辺を観光するという「岬めぐり」の方が多いようだ。
そりゃそうだよなぁ、たとえば北海道の「岬めぐり・襟裳岬から宗谷岬まで」なんてバスで行ったら大変なことになるもの。
作詞の山上路夫はどこの岬めぐりを思い浮かべてつくったのだろう。
わたしのイメージは伊豆半島。湯河原の真鶴岬から伊東の川奈崎、さらに稲取崎と南下して南伊豆は石廊崎、さらに前述の波勝崎へと辿るコース。これなんらなんとか一日でいけるのでは(無理?)。満足できるかどうかは別として。

これで岬もお終い。
そういえば演歌に「さよなら岬」(大城バネサ)があった。……もういいか。


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コメント 2

レモンツリー鈴木です

momoさんのおっしゃっている様に僕も家族で北海道に観光ツアーで行った時は、ただただバスであちこち走り回るだけの記憶が残っています。
もう「北海道欲張りツアー」などという忙しいツアーだけは懲り懲りです。(笑い)

でも作詞家の人達ってそれぞれの思いをその言葉に込めてイメージを膨らましているんですね。

今度は東海道中膝栗毛みたいな企画も面白いかも知れませんね。


by レモンツリー鈴木です (2008-10-05 07:37) 

MOMO

レモンさん、こんにちは。

そうですか、まぁバスの車窓から見る風景もまたいいとはいえ、何日も長時間乗っているのはキツイですよね。
北海道の主要な観光スポットを回るには1週間でも足りないかもしれませんね。わたしなど、どこでも3日も旅をしているともう飽きてしまいますので。

東海道中膝栗毛はおもしろそうですね。
東京の日本橋から大阪まで、ご当地ソングでつなげていくのですね。果たしていくつできるやら。
桑名なんて、ご当地ソングがないから桑名正博にしちゃったり。強引に。考えてみましょうかな。


by MOMO (2008-10-05 20:20) 

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