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湖③湖愁 [a landscape]

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♪ 悲しい恋の なきがらは
  そっと流そう 泣かないで
  かわいあの娘よ さようなら
  たそがれせまる 湖の
  水に浮かべる 木の葉舟
(「湖愁」詞:宮川哲夫、曲:渡久地政信、歌:松島アキラ、昭和36年)

よくいう橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦の“御三家”に代表される“青春歌謡”というジャンル? がつくられたのは昭和38年の「高校三年生」(舟木一夫)以降だと思うが、その予兆は昭和30年代のはじめ頃からあった。

青春歌謡とは、シンガーが明暗こもごも青春の歌をうたうからだけではなく、ファンがその「歌手」やその「歌」にある意味で青春を懸けるから、という見方もできる。

つまり、それまでレコードやラジオでおとなしく聴いていたファンが、劇場で熱烈応援したり、プライベートを追いかけたりと、歌の歌詞のなかだけではなく、自分も登場人物(ときには主役だったり、ときには相手役だったり、脇役だったり)として青春ドラマをつくりあげるということ。
そういうファンたちに支持されたシンガーはアイドルと呼ばれる。

昭和30年代、どんなアイドルたちが「湖」を歌っていたのだろうか。

まずは若原一郎
昭和24年にキングレコードからデビュー。「吹けば飛ぶよな」「ハンドル人生」とヒットをとばし、昭和33年に子どもまで歌っていた「おーい、中村君」のビッグヒット。甘いマスクで熱狂的な女性ファンも多かった。後年、萩本欽一に見出されれバラエティに出ていたが平成2年、50代の若さで亡くなっている。

その31年の歌に、故郷へ帰ってきて昔日の恋人を偲ぶという「山陰の道」がある。
そのなかで♪青い湖 なぜ眼にしみる と歌っている。ここで「湖」はノスタルジーを誘う想い出の場所。

その若原一郎以上に若い女性を熱狂させたのが神戸一郎。まさに彼こそのちに絶頂期を迎える“青春歌謡”の元祖。

昭和32年、当時はメジャー歌手の登竜門だったコロムビア全国歌謡コンクールで優勝。その年、「十代の恋よさようなら」でデビュー。
以後、「別れたっていいじゃないか」「恋人をもつならば」「銀座九丁目は水の上」「ひとみちゃん」などのヒット曲を。

自身のヒット曲「別れたっていいじゃないか」をはじめ、10本近い映画にも出演したり芸能雑誌の表紙やグラビアを飾るなど、まさにビッグアイドルだった。昨年68歳で亡くなる。

そのデビュー曲「十代の恋よさようなら」に♪別れてひとり 湖に とある。
やはり「湖」は定番の旅愁、懐古としてうたわれている。

そして昭和36年、同じように失恋の痛手を歌ってビッグヒットとなったのが「湖愁」(松島アキラ)

松島アキラは“遅れてきたロカビリアン”で、「上海帰りのリル」「お富さん」、あるいは後年の「長崎ブルース」「池袋の夜」などの作曲家、渡久地政信に師事。高校在学中にこの「湖愁」でデビュー。童顔で、当時の流行犬にあやかって愛称はスピッツ。まだ現役。

「湖愁」は当時の某“のど自慢番組”で出てくる若い男性のほとんどがこの歌をうたうという珍事があったほど親しまれた。ちょうど団塊の世代の方々には忘れられない歌かもしれない。

そして昭和30年代も後半、いよいよ本格的な“青春歌謡”時代がやってきた。
世に言う“御三家プラスワン”がそれぞれ「湖」をうたっている。では順番に、

♪恋と涙でいっぱいの 湖なんだぜ ビーチだぜ 「恋と涙の太陽」(橋幸夫)
これは青春讃歌。ハーブ・アルパートとティファナ・ブラスのブラスサウンド“アメリアッチ”の日本版というふれこみ。作曲吉田正。2番は♪湖なんだぜ 水の上 (あたりまえだって……)。
橋幸夫にはほかに♪湖くらく なぜ泣く風か というナースとの悲恋を歌った「白い制服」もある。

♪霧の港に 湖畔の宿に 「修学旅行」(舟木一夫)
汽車はゆく 汽車はゆく と昭和38年のヒット曲。これも青春讃歌。

♪湖さみし 風さみし 「十七歳のこの胸に」(西郷輝彦)
これは定番のセンチメンタル・ジャーニー。この頃シックスティーンもあったけど、セブンティーンの歌もけっこうあった。

♪白樺の… 影を写して湖は 「赤い夕陽」三田明
第四の男にもありました。これもハートブレイクソング。作詞作曲は宮川哲夫、吉田正「美しい十代」のコンビ。

♪恋の湖 虹の国へ 「恋旅行」久保浩、小川知子
「霧の中の少女」でデビューした久保浩のデュエットソング。以前もふれましたが、小田急ロマンスカーの応援歌? やっぱり吉田正のアメリアッチ。

青春歌謡は男ばかりじゃない。こんなのも。
♪青い湖畔の 白樺の 「高原に咲く花」(山中みゆき)
これはひとり旅だけど、傷心かどうかは微妙。「湖畔の宿」の戦後バージョンにも思えるが、高峰三枝子は手紙を焼いたが、ここでは彼氏に手紙を書くという違い。

♪あれはいみじき 湖畔の乙女 「湖畔の乙女」本間千代子 
十和田湖畔にある高村光太郎作の「乙女像」に刻まれた佐藤春夫の詩を歌にしたもの。戦前の菊池章子のものとは同名異曲。

おまけは青春歌謡じゃないけど、この頃のカヴァーポップスのビッグヒット。
♪あの人と踊ろう 湖もよんでいる 「ヴァケーション」弘田三枝子
いろんな人がカヴァーしたけれどこの人がいちばん。訳詞いや作詞、漣健児

まさにこの時代、湖は青春の象徴的なロケーションであった。


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