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『バンジョー』 [noisy life]

バンジョー.jpg
 


 

I came from Alabama, with my banjo on my knee,
I'm goin' to Loiusiana, My tru love for to see.
It rain'd all night the day I lett, The weather it was dry,
The sun so hot, I froze to death Susanna, don't you cry.

Oh! Susanna, Oh! don't you cry for me,
I've come from Alabama, with my banjo on my knee.
([OH! SUSANNA!] words & music by STEPHEN COLLINS FOSTER)

 
楽器の音色の好みも様々で、たとえば吹奏楽器ならば、良くも悪しくも“性格”のはっきりしたトランペットが好きな人も入れば、もう少し情緒的なサクソフォオンが好きだという人もいます。さらには“内向的”なクラリネットが、という人も。
撥や擦の弦楽器ならば、ギター、ウクレレ、スチールギターにマンドリン。ヴァイオリン、チェロに胡弓に三味線とその音色にはそれぞれ特徴があります。


その数多あるなかで、いちばん乾いた音ではないかと思うのがバンジョー。その音色はいちど聞いたら忘れられない独特のもの。

バンジョーは動物の皮は張ったボディにギターのようなネックがついた楽器で。弦の数は3~6本で、一般的なのはデキシーランド・ジャズなどで使う4弦と、ブルーグラスミュージックで使う5弦バンジョー。
 
現在のバンジョーが形成されたのは19世紀前半、アメリカで。奴隷として連れてこられた黒人たちが故郷のアフリカにあった楽器を真似て作ったといわれています。
 
当時の作曲家、フォスターSTEPHEN FOSTER「バンジョーをかき鳴らせ」RING DE  BANJYO を作ってます。また「おお、スザンナ」OH, SUSANNAの歌詞の中にも[I came from Alabama, with my banjo on my knee, ]というようにバンジョーが出てきます。
当初はミンストレルショー(白人が黒人に扮した余興)のリズム楽器として使われ、全米に広まっていきます。そして20世紀になるとジャズが発生し、その構成楽器としてしばしば使われるようになります。しかし、ジャズが発展するにしたがってバンジョーはなぜか(音が大きいから?)オミットされていきます。
 
もはや衰退か? と思われたバンジョーですが、突如陽の目を見ることになります。それが1945年といいますから、ちょうど日本が連合軍に降伏した年。
ケンタッキーのマンドリン奏者ビル・モンロー率いる「ブルー・グラス・ボーイズ」BILL MONROE & HIS BLUEGRASS BOYSアール・スクラッグスEARL SCRUGGSというバンジョー奏者が加入します。アールは5弦バンジョーを独特のスリーフィンガーによる早弾きで演奏します。それがその後のブルーグラスバンジョーの基本になったといわれています。
 
ちなみにブルーグラスとはその名の通り牧場を被うの“青草”のことで、ケンタッキー州の別名でも。
というわけで、フィドルと共にブルーグラスミュージックには欠かせないバンジョー。それをモチーフにした曲も少なくありません。

「バンジョー・イン・ザ・ヒルズ」BANJO IN THE HILLS スタンレー・ブラザーズSTANLEY BROTHERS
「トーキング・バンジョー」TALKING BANJO バズ・バズビーBUZZ BUSBY
「バンジョー・ボーイズ」THE BANJO BOYS オズボーン・ブラザーズOSBORNE BROTHERS

 

バンジョーはブルーグラスだけかというとそうではなく、50年代末からはじまり、60年代に入ると俄然勢いづいたアメリカのモダンフォーク・ムーヴメントでも。
多くのフォーク・バンドがメジャーになっていきますが、その多くはギターとウッドベースでの構成。しかしなかにはバンジョーを取り入れるグループも。

 

その代表的なグループがキングストン・トリオTHE KINGSTONE TRIO。太いストライプのシャツにコッパン、スニーカーというアイビースタイルで、リーダーのデイヴ・ガードがバンジョーを担当。
あのヒット曲「トム・ドゥーリー」TOM DOOLEY の緩やかなバンジョーは、ブルーグラスのそれとはまた違った素朴な音でした。

 
ほかにも日本ではキングストン・トリオのライバルだったブラザース・フォアTHE BROTHERS FOURも使っていたし、ソロではピート・シーガーPETE SEEGER がロングネックのバンジョーで弾き語りを聴かせてくれました。
このようにフォークでも多用されていました。どちらかというとプロテストソングよりは、コミカルな歌や、伝承歌でその魅力を発揮した楽器でした。
 
日本でバンジョーといえば、近年亡くなった薗田憲一が率いるデキシーキングスでジャズバンジョーが聴けました。ほかにも素晴らしいバンジョー奏者がいるようですが、なにしろ日本ではブルーグラスやマウンテンミュージックがマイナー音楽なので、あまり表舞台には出てきません。
 
また、バンジョーをタイトルにした歌では、中野忠晴の「バンジョーで唄えば」が。これがなんと昭和は13年の作品。作曲は服部良一。もちろんバンジョーをフィーチャーしてあります。
もうひとつはこれまた古い昭和30年。小坂一也がうたった「ヘイ・ミスター・バンジョー」。これはカントリーソングのカヴァー曲。いずれも半世紀以上前の歌。どちらもまだ日本がブルーグラスを知らない頃の作品なので、あの軽快なスクラッグス奏法ではありませんが。
 

曲名や歌詞にはなくても、バンジョーをフィーチャーした曲もあります。
昭和30年代の終わり頃、アメリカのレッジ・ストンパーズTHE VILLAGE STOMPERSというデキシーランド・バンドのインスト「ワシントン広場の夜は更けて」WASHINGTON SQUAREがヒットしました。どちらかというとスローな独特の旋律は今も耳に残ります。漣健児によって歌詞がつけられ、藤本好一パラダイスキングあるいはダーク・ダックスによってカヴァーされました。近年では憂歌団も。たしか当時はフォークダンスの楽曲にもなったはず。

 
同じインストでいえば、なぜか「モスクワの夜は更けて」MIDNIGHT IN MOSCOWもバンジョーを駆使したデキシー風にアレンジされることが多く、ケニー・ボールKENNY BALLビリー・ボーンVILLY BAUGHNなどの楽団によって演奏されています。
ワシントンからモスクワまで、いずこも夜は更けていく、という話。
 
日本では、「走れコウタロー」(ソルティ・シュガー)のようなカントリー調の曲ではだいたい使われていますし、「四季の歌」(芹洋子ほか)「友を送る歌」(舟木一夫)でも使われていました。ほかにもたくさんあると思いますが、悲しいかな記憶の外。
 
映画の中のバンジョーといえば、なんと言っても60年代のニューシネマアーサー・ペン監督の「俺たちに明日はない」BONNIE & CRYDE。ただこれはBGMでレスター・フラット&アール・スクラッグスLESTER FLATT, EARL SCRUGGS & FOGGY MOUNTAIN BOYS「フォギー・マウンテン・ブレイクダウン」FOGGY MOUNTAIN BREAKDOWN が使われただけ。しかし、フェイ・ダナウェイとともに強烈な印象を残しました。
 

もうひとつは70年代はじめの映画。
都会のビジネスマンたちが休日、アドベンチャーを求めて山奥の川をカヌー遊びに興じるが、悲惨な結果に終わるというジョン・ブアマン監督の「脱出」DERIVERANCE。都会の男のギターと村の少年のバンジョーとの“かけ合い”文字どおりの「デュエリング・バンジョー」DUELING BANJOSが印象的なシーンでした。

 

しかしバンジョー、日本ではまだまだマイナーな楽器。というか、これから先もギターのように誰でも気軽にという状況はむずかしいかもしれません。
いまだ波乱バンジョー……、なんつって。ポキッ。


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コメント 4

Mashi☆Toshi

 昔、テレビで「じゃじゃ馬億万長者」というアメリカのドラマが放送されていましたが、あのテーマ曲もバンジョーが活躍していませんでしたっけ?
 あの番組も面白かったですね。
自分の家の庭に、誤って銃を撃ってしまったら、そこから石油が湧いて億万長者になった・・・「いかにも」という感じのアメリカの「田舎者」が、面白く描かれていました。
 すみませんバンジョーと関係なくなってしまいました。
by Mashi☆Toshi (2008-03-03 19:51) 

MOMO

当時この番組は見ていませんでしたので(10数年前映画版は見ました)、主題歌は知りませんが、話の内容からもバンジョーはありがちですよね。

古い時代設定のアメリカ映画にはよく使われますよね。思い出したのがジョージ・クルーニーの出た「オー・ブラザー」。あれは前編そんな感じでした。
ついでに思い出したのが高石ともやの「受験生ブルース」。
by MOMO (2008-03-03 22:17) 

tan

通りすがりの者です。その映画のテーマ曲は、フラット&スクラッグスのFOGGY MOUNTAIN BREAKDOWNだったと思います。ブルーグラス・バンジョー・インストの古典!
日本ではこれからも永遠にバンジョーはマイナー楽器だと思いますけど、ハリー・レッサーのようなスタイルの若手で面白い演奏家も出てきていますよ!↓↓↓
http://sound.jp/banjo/
by tan (2009-02-24 20:36) 

MOMO

tanさん、古い記事へのコメントありがとうございます。
まだ読んでくれた人がいると思うとうれしいです。

そうですか「じゃじゃ馬億万長者」でも使われていましたか。忘れてしまいました。「俺たちに明日はない」があまりにも印象的すぎたからでしょうか。

バンジョーはメインにはなれないけれど、日本でも時どき思いがけない曲につかわれていることがありますよね。
by MOMO (2009-02-26 20:28) 

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