冬歌⑤寒い朝 [noisy life]
♪ 北風吹きぬく 寒い朝も
心ひとつで 暖かくなる
清らかに咲いた 可憐な花を
みどりの髪にかざして 今日も ああゝ
北風の中に 聞こうよ春を
北風の中に 聞こうよ春を
(「寒い朝」詞:佐伯孝夫、曲:吉田正、歌:吉永小百合&和田弘とマヒナスターズ、昭和37年)
「寒い朝」は吉永小百合が主演した日活青春映画で、「青い山脈」、「風と樹と空と」、「泥だらけの純情」、「草を刈る娘」などと同じく石坂洋次郎の小説が原作。
原作は、同級生でたがいに大学受験をめざす母子家庭のとみ子と、父子家庭の重夫のひと冬の青春ドラマ。喧嘩をしながらも接近していく若い二人に加えて、その保護者同士の恋もからんで……と、話がややこしくなっていく。もちろん結末は予想どおりのハッピーエンディング。
最近もよくテレビCMに出ている吉永小百合さんだが、最近は新作映画のキャンペーンでメディアへ登場する機会もさらに多くなっている。とうに(でもないか)還暦は過ぎているのにあの若さ。
まあ、芸能人は若さが命ではあるのでしょうが、あんなに若くてきれいな60代っていませんよね。サユリストならずとも、あの美貌には脱魂ものです。若い頃より美しいほどで、まさにバケ……、バケ、バケツ一杯の若返り薬をのんだような……(何を言ってんだか)。
昭和34年、14歳で映画デビューした彼女のレコードデビュー曲がこの「寒い朝」。
マヒナスターズのおじさんたちにも助けられましたが、みごとにヒット。
同じ年に発売された橋幸夫とのデュエット「いつでも夢を」がレコード大賞を受賞という歌手としても、この運の強さ。
当時の日活映画ではアクションスターも青春スターも歌、とりわけ映画の主題歌を歌うケースが多かった。
石原裕次郎、小林旭、赤木圭一郎、渡哲也、和田浩二、浜田光夫……。ところが女優陣が音痴が多かったのか否かはしりませんが、美声が聞こえてこない。
そんななかで奮闘していたのが浅丘ルリ子とこの吉永小百合。
「寒い朝」、「いつでも夢を」のほかにもいい歌がありました。
「勇気ある者」、「泥だらけの純情」。
再び橋幸夫とのデュエットで「そこは青い空だった」や「若い東京の空の下」。
「若い二人の心斎橋」と「明日は咲こう花咲こう」は三田明とのデュエット。
やはり石坂文学の映画主題歌「光る海」。これも傑作でした。
そのほかコミックソング扱いされた「奈良の春日野」なんてのも。フンフン。
そしてこれらの歌のほとんどは、吉田正の作曲。いわゆる“吉田学校”の優等生。ということは、そのほとんどが佐伯孝夫の作品ということでも。
吉田正が表に出すぎてあまり語られませんが、佐伯孝夫にも可愛がられたはず。まあ、誰にでも可愛がられる魅力をもっていたのでしょうが。
昭和56年、佐伯孝夫が亡くなったときには、東京・葛飾の佐伯宅を訪れ、去りがたく半日あまりも、そこで過ごしたという話も。
これからさき新曲を期待するつもりはないが、名曲のカヴァーでもしてもらいたいもの。とりあえず、まだ未聴ですが、彼女の全集に入っている岸洋子が歌った「希望」とシャンソンの「愛の賛歌」はぜひ聴いてみたいな。
吉永小百合の映画はずいぶん見たが、なんといっても昭和30年代というか1960年代の作品、つまり若い頃(あの生硬な演技が魅力でした)がいちばん。「寒い朝」もそう「キューポラのある街」、「愛と死をみつめて」、「愛と死の記録」、「若草物語」、もちろん学園ドラマのバイブル「青い山脈」も。
別の意味で印象的だったのは彼女が30歳にしてはじめて“少女”から“女”へ脱皮したといわれる五木寛之原作、浦山桐郎監督の「青春の門/第1部」。
多分、はじめてヌードシーン、濡れ場を披露したのでは。可哀想に。浦山ならやりかねない。彼女の大ファンというわけでもなかったけれど、気になりました。
何しろその相手役が小沢昭一。彼は同じ早稲田出身のサユリストじゃなかったでしょうか。うまくやったよな。
でも、記憶をたどれば、その濡れ場が、炭坑の落盤事故で余命幾ばくもない小沢の昭ちゃんを、小百合さんがお情けで抱いてあげるというシーン。
そうでもなければ小沢さん、そんな機会には巡り会えないでしょ。と己を納得させたわけでした。
あれから30年以上経つんだもの。いやになっちゃうよね。
この当時でも50歳は過ぎてました。……摂生してるんでしょうね。
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