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●駅(私鉄編) [a landscape]

 

♪ 古い電車の ドアのそば
  二人は黙って 立っていた
  話す言葉を さがしながら
  すきま風に ふるえて
  …………
  池上線が 走る町に
  あなたは二度と来ないのね
  池上線に 揺られながら
  今日も帰る 私なの
(「池上線」詞:佐藤順英、曲、歌:西島三重子、昭和51年)

車窓から見える住宅や電線、樹木といった風景が流れていき、やがて色とりどりの看板が施された町並みが現れる。商店街だ。そして電車はスピードを落としながらプラットホームに滑り込む。

電車中から見える駅前の風景、とりわけ私鉄のそれはどの駅もよく似ている。その駅の付近に住んでみなくても、何度か降りたってみればそれぞれの駅の細かい違いに気づくのだが、車窓から見る対象化された駅前は、図ったようにどこもよく似ている。
たとえば、町並みも成長するのだとしたら、鉄道が敷かれ駅が出来、その周辺に商店や民家が建っていく。駅はその鉄道会社の仕様によりどこも似たかたちに作られている。そしてその駅のかたちに従うように町並みが出来上がっていく。だから、同じ鉄道のいずこの駅前も似た“相貌”を持つようになるのだ。
そんなことを考えてしまうほど、窓外に見える駅前はよく似ている。

そんな私鉄の駅は、道路から改札口を抜け、階段を数段上がるとホーム。地面との高低差は1メートルと少し。隣のホームへ行くには線路を横断していく。こんな駅がまだ東京にも残っている。エスカレーターや高い階段を上り下りして、迷路のような通路を通ってやっとホームにたどり着くようなJRや地下鉄の駅とは違う。電車に乗るという感じがする。交通手段によって運送されるという感じではないのだ。

西島三重子は昭和25年、東京生まれ。昭和50年アルバム『風車』、シングル「のんだくれ」でデビュー。「池上線」は翌年発売の2枚目のシングル。現在もシンガーソングライターとして音楽活動をするとともに、他の歌手へ曲を提供している。また、エッセイやイラストを発表するなど多才。
「池上線」は、沿線に暮らす女性が、かつてたびたびアパートを訪ねてくれた別れた彼を偲ぶという歌。こういう想い出をもつ女性もいるのではないか。
反対に男が去っていった彼女を忘れられないというのが ♪改札口で君のこと いつも待ったものでした の「私鉄沿線」(野口五郎)。この歌もヒットしました。

池上線は大正11年、東京急行鉄道(東急)によってが開通された鉄道で、当初は蒲田-池上間の1.8キロ。以後経路が拡張され、現在は五反田までの15駅。主な駅は雪が谷大塚、洗足池、戸越銀座など。
東急はこの歌でずいぶん宣伝してもらったはずだが、当初は歓迎されなかったそうだ。「古い電車」とか「すきま風」という歌詞が気に入らなかったようだ。
そういえば昭和4年にヒットした「東京行進曲」(佐藤千夜子)でも。♪いっそ 小田急で逃げましょうか という歌詞が「うちの電車は駆け落ち電車か」とばかりクレームがついたそうだが、その後宣伝になったと感謝され、その作詞家・西條八十は小田急の顧問に迎えられたというけど、ホントかな。

その他で、ロケーションが都会の私鉄駅の雰囲気をもつ歌としてはは、駅で一目惚れした彼女に心をときめかせているティーンエイジャーを歌った
「明日があるさ」(坂本九)♪ いつもの駅で いつも逢う セーラー服のお下げ髪 

キスをかわして別れていくという、フランス映画のような
「別れの朝」(ペドロ&カプリシャス)♪駅へつづく 小径を 何も言わず 歩いた

むかしの彼を駅で見かけ、様々な思いが甦ったが、声もかけずに別れていくという日常の小さなドラマを歌った
「駅」(竹内まりや)♪見覚えのある レインコート 黄昏の駅で 胸がふるえた
などがある。

休日、なにもすることのないときは、そんな私鉄に乗ってみるだけでもおもしろい。「ぶらり途中下車の旅」ほど“いい事”はないかもしれないが、無計画にどこかの駅で降りてみるのも新鮮な気分になれる。なによりも各駅ともシンプルで混雑もなく、のんびりしているのがいい。


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deacon_blue

☆ 池上線があれば目蒲線の歌も確かにあったのですが,その曲はもちろんこの歌(および歌い手)とは何の関係もなく,非常にノベルティっぽい雰囲気だったので聴いていません。目蒲線といっても通じない目黒線世代に何を言おう。。。
by deacon_blue (2007-08-02 01:25) 

MOMO

ありましたね、「目蒲線物語」。
まあ、ひと言でいうと高校生同士のバカ話を歌にしてしまったという感じでしょうか。コミックソングにしてはイヤ味が強すぎるといいますか。
まあ、あってもなくてもどうでもいい歌ですね。
by MOMO (2007-08-03 21:31) 

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