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『霧笛』 [noisy life]


♪ 店には飾りが ないがいい
  窓から港が 見えりゃいい
  はやりの歌など なくていい
  時々霧笛が 鳴ればいい
  ほろほろ飲めば ほろほろと
  心がすすり泣いている
  …………
(「舟唄」詞:阿久悠、曲:浜圭介、歌:八代亜紀、昭和54年)

「霧笛」が廃止の方向に向かっていると新聞に載っていました。

「霧笛」とは、霧で視界が不良になったとき、航行中の船舶に位置関係を知らせる目的で音を発信する“航路標識”のこと。主に燈台に設置されている。音の発信方法は電磁式と圧縮空気式があり、一定の濃度の霧が感知されると「ボー、ボー」という音が発せられる。

霧笛が初めて設置されたのは青森県の尻屋崎燈台で、明治12年12月20日のこと。現在でも12月20日は“霧笛の日”になっているそうです。
130年あまりの歴史にピリオドが打たれそうになっている理由は、レーダーやGPSと呼ばれる衛星を利用した位置を計測するシステムが整備されたから。深い霧での航海でも霧笛に頼る必要がなくなった。管轄の海上保安庁でも、「随時廃止の方向」という方針だとか。
現在、霧笛(霧信号所)は全国で16カ所、1960年代の三分の一以下になっているという。とくに“霧の街”北海道・釧路では、霧笛は風物詩にもなっていて、市民はその廃止を惜しんでいるそうだ。“昭和の遺物”がまたひとつ消える運命に。

昭和30年代、40年代は流行歌の中にも“霧笛”はしばしば出てきました。
その代表的な歌がタイトルにも出てくる「霧笛が俺を呼んでいる」(赤木圭一郎)。21歳で事故死した伝説の日活アクションスターの同名映画主題歌。演技も歌も決してうまくはないが、存在感と将来性だけは石原裕次郎よりも上だった、と私は思っています。
映画は、航海から帰って来た船乗り(トニー)が友人の死を知り、その真相を探るうちに麻薬組織の陰謀を知り意外な展開に……。というお決まりのストーリー。友人の恋人・芦川いずみとのなさぬ恋もあったりのエンターテインメントでした。残念ながら舞台は釧路ではなく横浜でしたが。
わたしが以前持っていた(現在行方不明)LPレコードは全曲セリフ入り。「霧笛が俺を呼んでいる」は、霧の波止場のラストシーン。これから出航するトニーが「あなたに初めてお目にかかった晩……」と、芦川いずみに恋心を隠して別れを告げる。最後の♀「お元気で」♂「ご機嫌よう」という言葉のあとに霧笛が響き、その余韻に重なるようにイントロが聞こえ、やがて ♪霧の波止場に…… と歌がはじまりました。

とにかく、港や波止場、桟橋、埠頭にドラマがあった昭和30年代の映画であり、歌でありました。ほかでは
「別れの波止場」(春日八郎) ♪やがて霧笛の 鳴る夜だ
「釧路の駅でさようなら」(三浦洸一) ♪霧笛の音も 泣くような
「襟裳岬」(島倉千代子) ♪泣いてみたいの 霧笛のように
「哀愁出船」(美空ひばり) ♪霧笛一声 哀愁出船

そして昭和40年代になると消えてしまった霧笛も50年代に復活。
それが上に載せた「舟唄」
八代亜紀の歌そのものも良いけれど、高倉健主演の「駅(ステーション)」でのシーンとセットで記憶している人もいるのではないでしょうか。映画も良かった。
12月31日、北海道の小さな駅の傍にある居酒屋。ワケありのおかみさん・倍賞千恵子と最近馴染みになった殺人犯を追う刑事・高倉健の二人きり。ポツリポツリと言葉少なの会話。外は雪。店のテレビには紅白歌合戦が流れている。八代亜紀の「舟唄」。テレビを見ながら倍賞千恵子が、背中で健さんにもたれかかる。そして「舟唄」を口ずさむ。日本映画史上に残るラブシーンだな、なんて思いました。不運な因縁で離れていくラストも切なかったね。

八代亜紀、阿久悠、浜圭介、高倉健、倍賞千恵子、降旗康男、倉本聡、みんな名人でした。


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Ma-toshi

紅白歌合戦のシーン・・・この映画だったんでか!
何かでみて、印象に残っていたのですが、そのオリジナルを忘れていました。
やっぱり紅白には、舟歌や津軽海峡冬景色などがいいですね。
ラップやクラシックはもう「飽き」ました。
by Ma-toshi (2007-06-23 13:50) 

MOMO

Mashi☆Toshiさん、どうもです。
想像ですけど、あの映画に八代亜紀の「舟唄」を使ったらどうかと、脚本家に進言したのは高倉健ではないかと思っています。
健さん、いやいやディナーショーをやっていたとき、その前うた歌手だったのがまだ無名の八代亜紀だったそうです。で、そんな想像を。いちど倍賞千恵子で聴いてみたいですね。
by MOMO (2007-06-24 22:41) 

MOMO

deacon_blueさん、
いつも目をとおしていただいてありがとう。
by MOMO (2007-06-26 22:25) 

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