『オマケ 右から左の歌』 [noisy life]
♪ 疲れ果てて いることは
誰にもかくせは しないだろう
ところが俺らは 何のために
こんなに疲れて しまったのか
…………
心の中に傘をさして 裸足で歩いてる
自分が見える
人の言葉が
右の耳から左の耳へと 通りすぎる
それほど 俺らの頭の中は
からっぽに なっちまってる
…………
(「たどりついたらいつも雨ふり」詞、曲:吉田拓郎、歌:モップス、昭和47年)
なぜ「左から右へ」ではなく、「右から左へ」なのだろう。どっちからでもいいじゃん、という声もあるが、どうも気になります。
そもそも「右」と「左」ではどういう違いがあるのか。
右と左ですぐに思い浮かぶのが、「右翼」、「左翼」という(べースボールではない)思想、考え方。右翼というと国粋主義者、左翼というとマルクス主義者と短絡させてしまいますが、右、左というともう少し幅が。場合によっては「右より」「左より」なんていったり。
極端な思想が歓迎されない現代では、右は保守派、左は革新派ととらえた方が理解しやすいかも知れません。
もともと右翼、左翼という呼び方は、18世紀末のフランス革命期の国民議会でのこと。議場の右側の席に保守派が、左側に革新派が座ったことに由来しています。もちろん真ん中には中間派がいたのですが。
ということは、“例の歌”は「右から左へ」、つまり保守から革新へ、すなわち自民から民主へと、来るべき参院選の結果を予言しているのか? そんなバカな。だって、民主党は革新政党ではないですから。
もうひとつ、右と左で思いつくのが陰陽学。占い、風水には興味はない(信じないということではありません)けど、陰陽の二元論というか、二分法には興味あり。男が陽で女が陰、昼が陽で夜が陰、太陽が陽で月が陰(「元始、女性は太陽であった」高群逸枝なんてのもあるけど)、であるならば右と左はどっち?
「左右」というぐらいだから、左が陰で右が陽?。そもそも動きでいうと動が陽で静が陰なので、右利き主体の社会では右が陽なのだろうか。
しかし、だからといって同じ二分法で、陽が優、陰が劣とはならない。優劣の問題ではない。二つのものが対立し続けるのではなく(時にはすることもあるが)、本来相補うものだということ、そして二つで一つの世界を構成しているということは、男と女を例に取り上げるまでもなく、当然のことでしょう。
ならば、左から来ようが右から来ようが、いずれにしろ反対方向へ行くのだから大差ない、ということになります。
まあ、理屈はこのへんで、やっぱり歌の世界へ。右と左が出てくる歌。
いちばん多いのは手。つまり右手左手。すぐに思い浮かぶのが麻丘めぐみ「わたしの彼は左きき」♪いつでもいつでも彼は左きき ……私の右きき直せない。アイドルなら松田聖子だって、♪右手に缶コーラ 左手には白いサンダル 「渚のバルコニー」。古い歌謡曲や演歌なら♪玄界灘の風受けて バチが激しく右左 「無法松の一生/度胸千両」(村田英雄)、♪右に天蚕(てぐす)を 左で櫨漕ぎ 「おやじの海」(村木賢吉)があります。そうそう石原裕次郎の「嵐を呼ぶ男」でも♪最初はジャブだ ホラ右パンチ おっと左アッパー っていうのがありました。ニューミュージックなら「秋止符」のアリス♪左ききのあなたの手紙 右手でなぞって……。ロックならTHE BLUE HEARTSの「街」♪右手と左手で 何ができるだろう。
「右翼」「左翼」関連なら、代表作が「傷だらけの人生」(鶴田浩二)で♪いまの世の中 右も左も真っ暗闇じゃござんせんか。これは流行語にもなりました。裕次郎にも♪右だろうと 左だろうと わが人生に悔いはない 「わが人生に悔いなし」が。またまたBLUE HEARTS登場で♪大人も子供も関係ないよ 右も左も関係ないだろ?「爆弾が落っこちる時」がありました。やっぱりこれが歌の限界ってやつなのか、一様に右でもなく左でもなく中庸で……と。
それと、「左きき」2曲以外はすべて「右」から始まっています。やっぱりこちらが主流ってことなんでしょうか。
いちばん過激なのはアン・ルイスの「グッド・バイ・マイ・ラブ」。♪あなたは右に 私は左に ふり向いたら負けよ って決別、対決の心意気。やっぱり女のほうが潔いのかな。
とはいえ、かの「右から左」ソングに最もふさわしいのは、モップスの「たどりついたらいつも雨ふり」。そういみじくもこの歌が申しているとおり、ムーディ勝山の頭の中は「からっぽになっちまってる」のでしょうか。
それにしても鈴木ヒロミツ……本当に残念!
deacon_blueさん、
いつも見ていただいて、ありがとうございます。
by MOMO (2007-06-22 21:56)